ちょっと変になってしまったデザイナーのちょっと変わったファッションのはなし

信國太志さんからのメッセージ「連載スタートにあたって」

信國太志さんからのメッセージ「連載スタートにあたって」

連載スタートにあたって信國太志さんからのメッセージパリで2009春夏コレクションの展示会を終えたばかりのデザイナー信國太志さんと、東京のオフィスで会った。OPENERSでの連載のテーマは、ずばり「SPIRITUAL FASHION」。「fashion is not just for wrapping body but spirit~ちょっと変になってしまったデザイナーのちょっと変わったファッションのはなし~」というサブタイトルが興味をそそる。彼の新ブランド『BOTANIKA/taishi nobukuni』がスタートして増えたであろうエコの取材から話が始まった。Photo by Jamandfixまとめ=梶井 誠(本誌)本当のスピリチュアリティとは、良いとか悪いとかを超えること──信國さんが『BOTANIKA/taishi nobukuni』を今春からスタートされて、エコロジーの取材でよくお見かけしますねエコテーマでの引き合いが多いのは感じますね。その反面で、時代があまりにエコを声...
第1回 僕はチベット仏教の修業をしています

第1回 僕はチベット仏教の修業をしています

第1回 僕はチベット仏教の修業をしていますあえて誤解をされるよう「spiritual」という、いまもっとも使ってほしくない呼称をタイトルにしました。それは僕のマゾヒズムではなく、ひとつは僕のファッションの視点がいわゆるビッチーなモノイズムでなくなってしまい、たぶんにメンタルなものになってしまったこと。そしてちまたでスピリチュアルと呼ばれることとはちがう、僕が想う本当のスピリチュアリティを伝えることで、世の精神世界ブームも斬りたかったからです。しかし斬ることが目的ではなく、本当のことに気づく人が増えればという、生意気な想いからです。もっとまとめますと、僕にとって衣服とは体でなく魂を包むものへと視点がかわり、そのような魂とかかわるスピリチュアリティの本当のこととは? というと、それは巷にあふれる霊魂がどうとかオーラがどうとかあの神この神のおはなしではなく、僕やあなたのハートの奥深くにある、1でも多でもない根源的意識のことです。それはどのような言葉でも形容されず、あるともないとも、ありか...
第2回 山形県のシューズ工場にて

第2回 山形県のシューズ工場にて

第2回 山形県のシューズ工場にてボタニカでは来秋冬用にレザーのサンダルを作っていますが、それ以外は皮革を使用していません。今回もシューズに限っては食用副産物としてのレザーなら使用しようと思っていました。工場の人にお聞きしても元来食用なのか確認がとれなかったので、牛などの年齢を聞きました。デザイナーなのに無知だったのは、僕はキッドレザーがそんなに若い牛だとは知りませんでした。またハラコがどのように作られるかにいたっては、話を聞くうちに涙がでてきました。やはり止めました。レザーはすべて。そもそも食用の副産物などといっていること自体、命を工業製品のようにとらえているということです。しかし靴の製作は型にはめてソールにつく部分を延ばしたりなど、元来皮を前提に作られているので、レザーを使わないのは本当にハンディーがあります。でもそこを工夫することで皮を使用しないことが新しいデザインにつながればとも思っています。 あらゆる生き物や土壌を害さないもの作りとは難しいものです。逆にいえば人が生きるとは...
第2回 パリのショールームから

第2回 パリのショールームから

BOTANIKA 09SPRING&SUMMER COLLECTION第2回 パリのショールームから展示会の最初のお客さまBOTANIKAの主旨に共感して、うちの服を販売したいと言ってくれた、MC2というパリのショールームにて、メンズコレクションシーズンに展示会を開催してきました。いやあ、しかし実は僕は苦手なのです、この街が。理由はないのですが。バスティーユのガリアーノのアトリエに通い奴隷のように働いていたときから、なんとも苦手なのです。そんな街での少ない僕の楽しみは、シテ島にアイスクリームを食べにいくことです。ここは日本人のように人が並ぶお店ですが、果物そのものの味があふれんばかりで美味しいです。シテ島は古くからあるお店などが残っていて雰囲気が好きです。 そんなこんなで始まった展示会の最初のお客さまは、タケ先生こと菊池武夫氏です。先生は何かあるといつも真っ先に駆けつけてくださいます。今は僕はブランドには関わっていませんが、むしろ最近のほうが気兼ねなく語らう機会が多い...
第3回  「ECO×FASHION」トークショーに出演

第3回 「ECO×FASHION」トークショーに出演

第3回 エコ活動の先駆者とのトークショーに出演メッセージTに込められた彼女と僕の思いJapan Fashion Week in TOKYO 2008のスペシャルイベントとして、東京ミッドタウンで開催された「ECO×FASHION」と題されたトークショーに出演させていただきました。出演者は司会進行のいとうせいこうさん、パネラーの冨永 愛さんと僕、そしてスペシャルゲストのキャサリン・ハムネットさん。ファッションにおいてエコロジーを語る先駆者であるキャサリン。そんな彼女との出会いは、僕にとってとても感慨深いものでした。文=信國太志Photo by Jamandfixデザイナーの創造性とスタンダードの普遍の価値観を天秤にかけて会場ではスタッフの人たちがキャサリンの代表作ともいえるメッセージTを着ていました。それを見た瞬間、僕のなかでさまざまな心象が浮かびました。 ときは85年、僕は中学3年生でした。思い出しても変わった中坊でした。当時はDCブランドブームで、カタログ的なファッション誌で勉強...
第4回  前世は英国人だったという話

第4回 前世は英国人だったという話

BOTANIKA 2008-09 AUTUMN&WINTER COLLECTION第4回 前世は英国人だったという話前回キャサリン・ハムネットの呪縛について語りましたが、それはイギリスという国の呪縛かもしれません。眉唾な話と思っていただき差し支えないのですが、僕は何人もの人から前世が英国人であったことを告げられました。文=信國太志Photo by Jamandfixロンドンに住んでいたころの話前回お話した中学生のころも、両親に中学を辞めてロンドンに行きたいと言っていましたし、自分でも不思議に思うのは、初めて行ったロンドンでは、レンタカーをいきなりピカデリーサーカスに乗りつけて路駐(渋谷の交差点の真ん中にクルマを駐めるようなもんですね)。なにを思ったか吸い込まれるようにフォートナムメイソンの前に行くと人の群れで、なにごとかと眺めているとプリンスチャールズが現れたことです。初めてロンドンに着いて2時間も経たないあいだのことでした。ではそんなイギリス的なこととはなにかというと、...
第5回  「ピープル・ツリー」サフィア・ミニーとの出会い

第5回 「ピープル・ツリー」サフィア・ミニーとの出会い

第5回 「ピープル・ツリー」サフィア・ミニーとの出会い「ピープル・ツリー」というフェアトレードブランドのお手伝いをすることになりました。写真・文=信國太志ビジネスにより貧困や飢餓をなくす合理的な動きフェアトレードとは貧困にあえぐ貧しい国の生産者に充当な賃金で仕事を提供し、そのように生産された産物を販売したりする流通の運動です。グローバリズムがもたらした社会では生産者を買いたたく大企業により、低賃金のうえ、教育を受けるべき幼児すらが過酷な環境のもと働かされています。近年ソーシアルアントレプレナー(社会的企業家)という言葉とともに、寄付などではなくビジネスにより貧困や飢餓をなくす合理的な動きが盛んになりつつあります。とくにコーヒー豆などで見かける人も多いでしょうが、今のエコロジカルな消費者の関心のひとつに「トレーサビリティ」があります。すなわちその商品がいつ誰によってつくられ、どのように流通してきたかというルートの透明性です。逆につくる人が、その作物なりがなにになって、どこに行くのか...
第6回  今回はサーフィンとヨガについて

第6回 今回はサーフィンとヨガについて

第6回 今回はサーフィンとヨガについて僕にとっては、サーフィンとヨガの2つに深くハマるきっかけは、伝説のサーファーであるジェリー・ロペスとの出会いでした。彼はサーファーでありながらヨガを取り入れ紹介したオリジナルな存在なので、僕にとってこの2つはセットなのです。写真・文=信國太志今まであったどんな人ともスケールが違ったジェリー・ロペス人は人生において重要な出会いを幾度か経験するものです。ぼくは彼以前にもそのような出会いはたびたびあったのですが、それはどちらかというと自己投影でした。こんなカッコイイ自分らしさをもった個性的な人に憧れる。そんな感じです。ジョン・ガリアーノに憧れて、バスティーユのアトリエの門をたたいたりしたのはそんな理由です。でもジェリーさんはちょっと違いました。その個性に憧れるというより個性を超えた大きな存在に心が溶けてしまったのです。その空気に大海原を感じました。その瞳に地球を見ました。今まであったどんな人ともスケールが違いました。その日から「どうしたらそんな存在に...
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