第5回 「ピープル・ツリー」サフィア・ミニーとの出会い
第5回 「ピープル・ツリー」サフィア・ミニーとの出会い
「ピープル・ツリー」というフェアトレードブランドのお手伝いをすることになりました。
写真・文=信國太志
ビジネスにより貧困や飢餓をなくす合理的な動き
フェアトレードとは貧困にあえぐ貧しい国の生産者に充当な賃金で仕事を提供し、そのように生産された産物を販売したりする流通の運動です。
グローバリズムがもたらした社会では生産者を買いたたく大企業により、低賃金のうえ、教育を受けるべき幼児すらが過酷な環境のもと働かされています。
近年ソーシアルアントレプレナー(社会的企業家)という言葉とともに、寄付などではなくビジネスにより貧困や飢餓をなくす合理的な動きが盛んになりつつあります。
とくにコーヒー豆などで見かける人も多いでしょうが、今のエコロジカルな消費者の関心のひとつに「トレーサビリティ」があります。すなわちその商品がいつ誰によってつくられ、どのように流通してきたかというルートの透明性です。
逆につくる人が、その作物なりがなにになって、どこに行くのかも知らないまま重労働を強いられる人たちもいるそうで、カカオを育てる人のなかにはチョコレートを食したことも見たこともない人もいるそうです。
彼らの素晴らしい手仕事を守るということ
具体的には何点かの商品をコラボレーションとしてデザインさせていただいていますが、そのような気持ちになったのは、自分の仕事がそのような貧しい人に対して、糧やプライド(それが一番大事なので、慈善活動より意義があるのだと思います)を提供する一端になればうれしいと思ったからです。
そのような生産者の仕事が持続するのは彼らの素晴らしい手仕事を守ることでもあります。第三諸国に限らずこの国でもテーラリングひとつとっても、やがてジャケットを縫える人などいなくなるかもしれません。そうならないよう僕らデザイナーが頑張ってメイドインジャパンをつくりつづけ、若い人でも工場などで働いてみたいと思わせるような魅力あるものづくりを継続しなければなりませんね。
ところでそんなピープル・ツリーで頭が下がるのが代表のサフィア・ミニーの労苦で、彼女たちは生産者の生活を守るために工賃の半額を、納品の8ヵ月も前に支払っているのです。
デザイナーといえど経営者である自分には本当に頭が下がります。そのようにつくったものを納品された後に販売するのですから、貧しい人びとのために自分のリスクでギャンブルしているようなものです。
それにしてもこのような仕事で得るものとは、彼女のような人との出会いで多くのエネルギーをもらえることです。
ご興味ある方はサフィアの本も読んでみてください。
「おしゃれなエコが世界を救う 女社長のフェアトレード奮闘記」
サフィア・ミニー (著)
日経BP社
1575円
日経BP書店
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P46700.html