第2回 パリのショールームから
Fashion
2015年5月20日

第2回 パリのショールームから

BOTANIKA 09SPRING&SUMMER COLLECTION

第2回 パリのショールームから

展示会の最初のお客さま

BOTANIKAの主旨に共感して、うちの服を販売したいと言ってくれた、MC2というパリのショールームにて、メンズコレクションシーズンに展示会を開催してきました。

いやあ、しかし実は僕は苦手なのです、この街が。理由はないのですが。バスティーユのガリアーノのアトリエに通い奴隷のように働いていたときから、なんとも苦手なのです。

そんな街での少ない僕の楽しみは、シテ島にアイスクリームを食べにいくことです。ここは日本人のように人が並ぶお店ですが、果物そのものの味があふれんばかりで美味しいです。シテ島は古くからあるお店などが残っていて雰囲気が好きです。

そんなこんなで始まった展示会の最初のお客さまは、タケ先生こと菊池武夫氏です。
先生は何かあるといつも真っ先に駆けつけてくださいます。今は僕はブランドには関わっていませんが、むしろ最近のほうが気兼ねなく語らう機会が多いです。ショールームにお越しいただいた後、マレー地区でばったり。その後気になったレストランに行くと、いらっしゃっていたので、延々ランチをご一緒しました。なんだかそのような嗅覚や好みは恐れ多くも似ていることが多いのが不思議です。
先生とお食事するときにはよく僕のベジタリアニズムが話題になります。そのつど僕はイズムではなく自然な傾向なのでお気になされないようお話します。ベジタリアンであることは周囲に気を使わせるのが厄介ですね。

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エコロジカルとはなにか?

菜食になったのはそもそも別に宗教的理由でもなんでもなく、なんとなくもたれるというか、食べなくてもいいかなと自然に思うようになっただけです。お酒も同じような理由であまり飲まなくなりましたが、本来僕は日に焼酎を750ml一本飲むうえに“肉タリアン”でした。そんな人間の変化に一番不思議を感じるのは自分自身です。

後づけの理由としては、この世に肉食がなくなればその飼料となる、とうもろこしなどであと1億人くらいの人は皆生きていくことができるということや、そのような状況を作っているのはバイオ燃料政策を裏で操る、食料メジャーといわれる、アメリカの巨大農業会社であることへの憤りなどがありますが、そもそも日本で肉食を戦略的に広めたのが彼らであり、穀物の消費を増やすためにどうようのことを中国で展開していて、それもまた世界の食糧難の原因であると知ったのは最近のことです。

相場の値上がりを待ち、穀物を抱え込み、スポーツカーを転がし高笑いするアメリカの農家の影で、アフリカには土に塩を混ぜて食べている人がいる。そのような不平等が現代の問題であり、そのように、嵐がくると桶屋が儲かるというような、あらゆる生き物の繋がりを意識することがエコロジカルということであり、エコバッグをもつことがエコロジーではないと思います。

アティーシャというインド僧侶のはなし

前回仏教のおはなしをしましたが、意外にチベットなどの僧は肉食が一般的です。僕の先生は自分は仏教徒として失格だとケラケラ笑われます。仏教においては何事も意図がすべてなので、市場のお肉を食すことは殺生ではありません。まあ僕は食べませんが。
ヨガ友達や世界中のヨギは菜食者がほとんどですが、皆、自身の肉体と波長の純化のための人が多いようです。デトックスのためにたまに軽い断食をする人がよくいます。
しかし僕には自分を清めるという発想はありません。人間は何千もの細菌やバクテリアの集まりであり、そもそも綺麗も汚いもあったもんじゃないと思います。スポーツクラブのヨガクラスの広告などに“本当の自分をみつける”とか、今の自分を磨くと本当の自分が見つかるようなことがよく書いてありますが、“ピュアな私”というスノビズムを煽った言葉で、そもそもアメリカなどで爆発的にヨガなどが流行っているのはそのような自尊心に火を付けたからで、その裏には4人に1人が肥満という反面教師の存在があると感じます。『私のなかの本当の私』みたいな言葉は分裂性のつぶやきのように意味をなさない言葉です。

じゃあもし本当にピュアである人がいたとして、それがどのような人かと考えて思い浮かぶ話に、アティーシャという1000年程前のインドの僧のエピソードがあります。

アティーシャはあるとき固い決意をして12年間洞窟にお篭(こも)りして修業に専念しました。さて12年のひたすらの精進の挙句どうなったでしょう?
なにも変化も成果もなかったといいます。悲嘆にくれた彼は自分には資質が欠けることを思い、“もうすべてあきらめよう”と山をおりました。

その途上、彼は一匹の老犬を見かけます。その犬は皮膚病を患い皮膚はただれ、悪臭を放ち、傷口は膿み、ウジがわいて、それはそれは痛々しかったそうです。そのとき“なんて可哀想なんだろう”という気持ちがアティーシャにふつふつと芽生えます。
彼はなんとかその老犬を楽にしてあげたいという気持ちに涙し、まずはウジをなんとかしようと手を伸ばすと老犬は患部に触れられる痛みに声をあげたそうです。ますます可哀想に感じたアティーシャは、柔らかいものでウジをつままない限り老犬が痛みを感じることを不憫に思い、涙ながらに悪臭をはなつ腐った患部に顔面を近づけ、自らの口でウジを吸い込み、舌でなめて患部を綺麗にしてあげたそうです。

そのときです。突然に老犬は姿を変えそこにはなんと弥勒菩薩が立っていたといいます。その瞬間ある種の悟りを得たアティーシャに弥勒菩薩がおっしゃったそうです。“あなたには慈悲の心が欠けていたのです”。
そのような心を培ったアティーシャのような人を本当にピュアというのだと思います。

イタリア人、パリジャン、北欧の人々

閑話休題、日本ではそうでもないのに街でよく見かけたのがフィアットのチンクチェントです。ルパン3世でご存知のかたも多いでしょうが、こんなアーモンドグリーンなんかはカワイイですね。

しかしこんなご時勢にフランス車の新車が多いのに驚きました。よく僕のオーガニックな服への欧米での反応の日本との違いを訊かれますが、別に環境などへの理解が深いとかそういうことはまったくないです。

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イタリア人はやっぱり皮革製品(環境とは関係ありませんが、地球も動物も生き物なのです。僕にとっては。それらが繋がっているというのがエコロジカルであるという真意なのです。)が好きだし、排ガスまみれのパリジャンはステーキが好き。僕の日課であるアシュタンガヴィンヤサヨガのスタジオは全世界にありますが、マイソールスタイルという早朝の自主練スタイルが夕方にしかないのは大都市ではパリくらいのものです。
ダブダブな食文化に溺れた美しきパリジャンヌは体が硬く(ヨガは体を柔らかくするためのものではありませんが)『アン、ドゥー、トゥアー』という声にあわせてヒーヒー唸っています。

ただ“欧米”と芸人のように10羽ヒトカラゲにするものの、異質なのはやはり北欧で、エネルギー政策が進んでいるのもヨガ人口がもっとも多いのもフィンランドやデンマークです。北欧はあらゆる意味でこれから僕らが進むべき方向のヒントがたくさんありそうです。

つづく

           
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