フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性
CAR / IMPRESSION
2024年12月27日

フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性

Ferrari 12Cilindri|フェラーリ ドーディチ チリンドリ

フロントミッドシップに伝統のV12エンジンを搭載する「12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)」。イタリア語で12気筒を意味するその名を冠した最新グランツーリスモの国際試乗会が、ルクセンブルクで開催された。環境規制の強化や電動化の波が押し寄せる中、フェラーリのアイデンティティそのものであるV12の血統を未来へ継ぐ同モデルの真価とは?

Text by YAMAGUCHI Koichi|Photographs by Ferrari S.p.A

エンツォの遺志を継ぐ最新作

1947年、エンツォ・フェラーリが自らの名を冠した最初のモデルとして送り出したのは、1.5リッターV12エンジンを搭載した「125S」だった。以来、フロントにV12エンジンを擁する名車たちの系譜は脈々と受け継がれてきた。「エンジンはフェラーリの心臓であり、魂である」という創業者の言葉通り、V12エンジンはフェラーリのアイデンティティそのものとして君臨してきた。
とりわけ1960年代は、フェラーリV12グランツーリスモの黄金期といえる。レースでの圧倒的な速さとストリートでの優美さを兼ね備えた「250GTO」、美術品のような造形美を纏った「275GTB」、そして先進的なスタイリングで時代を切り拓いた「365GTB4 デイトナ」まで、それぞれの時代を象徴する名車たちが、V12の魅力を余すところなく体現していった。
2023年5月、北米マイアミでワールドプレミアされた「12Cilindri」は、その血統を受け継ぐ最新モデルだ。近年、環境規制の強化や電動化の波の中で自然吸気V12エンジンの存続が危ぶまれる。フェラーリ自身、V8ターボやV6ターボのハイブリッドモデルをラインアップに加えるなど、電動化への対応を加速させている。そんな時代に、あえて「12気筒」を意味する名を冠したことには、V12エンジンこそがフェラーリのDNAであり、これを未来へ継承していくという強い決意が感じられる。
マイアミでワールドプレミアされた際の12Cilindri
ルクセンブルクの空の玄関口、フィンデル国際空港から北へ1時間ほどに位置する自然公園に、古城をリノベーションしたホテルが佇む。ここが12Cilindriの国際試乗会の拠点だ。深まりゆく秋の朝、その裏庭で「モンテカルロイエロー」にペイントされた12Cilindriと対面する。夜来の雨に濡れた地面と木々、そして厚い雲が空を覆う静寂の中、深みのある黄色のボディが映える。
2017年にデビューした812スーパーファストの後継となる本モデルは、全長4733mm、全幅2176mm、全高1292mmというボディサイズを誇る。注目すべきは、優れた回頭性を引き出すため、先代から20mm短縮された2700mmのホイールベースだ。この最適化により、よりシャープなハンドリング特性の実現を目指している。
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