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IMPRESSION
2024年12月27日
フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性
伝統と革新の融合──美しさと機能性の両立
その印象的なフォルムには、伝統と革新という二つの異なる要素が融合されている。1950-60年代、ピニンファリーナをはじめとするイタリアデザイン黄金期を代表するカロッツェリアは、フェラーリV12グランツーリスモを通じて、時代の最先端の技術と美意識を結実させ、自動車を芸術の領域へと高めた。
チーフ・デザイン・オフィサーのフラビオ・マンゾーニ氏は、そんな美の遺産を受け継ぎながらも、「これまでのV12フロントミッドシップエンジンのスタイルコードを根本的に変えたかった」と語る。
12チリンドリのデザインは、まさにその意図を体現している。なめらかな曲面で構成されたロングノーズ・ショートデッキの流れるようなフォルムは極めて端正で、クラシカルな美しさに満ちている。一方で、リアウィンドウからリアデッキにかけては、超高速旅客機「コンコルド」のデルタウィングをモチーフとした形状を採用。イタリアンデザインの伝統と革新の融合により、次世代のフェラーリV12を表現している。それは、かつてのマエストロたちが追求した「速度の造形化」という理想を、現代の技術で再解釈する試みといえるだろう。
エアロダイナミクスの追求も特筆に値する。従来の固定式リアスポイラーに代わり、リアスクリーンと一体化した左右2つの可動フラップを採用。60km/hから300km/hの間で水平面に対して10度の角度を形成し、250km/hで約50kgのダウンフォースを発生させる。さらに注目すべきは、このシステムによるドラッグの増加がわずか5%に抑えられている点だ。美しいデザインを損なうことなく、高速域での空力的な安定性を確保している。