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IMPRESSION
2024年12月27日
フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性
最新のコックピットと進化したV12ユニット
ドライバーズシートに身を沈めると、フェラーリの最新デザインコンセプト「デュアル・コックピット・アーキテクチャー」に基づくインテリアが広がる。インストルメントパネル上面は左右へと流麗に広がり、ドアパネルへと美しく溶け込んでいく。左右対称の構造により、ドライバーとパッセンジャーそれぞれの空間が明確に区切られ、色調と素材の絶妙な組み合わせによってスポーティさとエレガンスの見事な調和を実現している。
インターフェイスもまた、大きな進化を遂げた。センターの10.25インチタッチスクリーン、15.6インチのドライバー用ディスプレイに加え、助手席側にも8.8インチのディスプレイを配置。助手席のパッセンジャーもドライビング・エクスペリエンスに参加できる、フェラーリならではの演出だ。素材面でも、リサイクルポリエステルを65%含むアルカンターラをはじめ、サステナブルな素材を幅広く採用している。
ステアリングホイールのスタートボタンを押すと、V12ユニットが静かに目を覚ます。走り出して最初に印象的なのは、その洗練された走行フィールだ。前身となる812スーパーファストでは、始動時からドライバーの直前に鎮座するV12が低い唸りを響かせ、その存在を主張していたのに対し、12Cilindriは街中でのストップ&ゴーではV12の存在を忘れてしまうほどの静けさを見せる。新開発の8速DCTも、低速域での変速をしなやかにこなし、この印象を一層際立たせている。
この洗練されたマナーは、12Cilindriに秘められた圧倒的なポテンシャルの一面に過ぎない。心臓部のV12ユニットは、2002年の「エンツォ」から進化を重ねてきたF140系の最新バージョン「F140HD」だ。6496ccの排気量は812スーパーファストと共通だが、チタン製コンロッド、アルミニウム合金製ピストン、軽量クランクシャフトの採用により、最高出力は830cv、最高回転数は9500rpmへと引き上げられている。この進化は、0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速7.9秒、最高速度340km/h超という圧倒的なパフォーマンスをもたらした。