フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性
CAR / IMPRESSION
2024年12月27日

フェラーリ12Cilindriにルクセンブルクで試乗──伝統のV12が魅せる洗練と官能の二面性

V12の血統を紡ぐ最新グランツーリスモの真髄

試乗ルートは、古城ホテルを起点とする約130kmのコース。広大な草原を縫うように走る起伏に富んだカントリーロードからは、フロントスクリーン越しに遠方の丘陵が幾重にも重なるパノラミックな景観が広がる。
その牧歌的な風景の中、路面がウェットからドライに変わり、マネッティーノを「WET」から「SPORT」モードへ切り替えると、12Cilindriは一変する。アクセルを踏み込むと、V12エンジンはフェラーリの血統を想起させる官能的なサウンドを轟かせ、9500rpmのレブリミットに向けてレーシングエンジン譲りの鋭い吹け上がりを見せる。
印象的なのは、自然吸気V12ユニットならではの特質だ。エンジン回転の上昇とともに高まる排気音は、加速度と完璧にシンクロし、ドライバーを限りない高みへと導いていく。
この圧倒的なパワーを意のままにコントロールできるのも、12Cilindriの特筆すべき魅力だ。ねじり剛性を15%向上させた総アルミニウム製の新設計シャシーを基盤に、296GTBで登場したブレーキ・バイ・ワイヤや812コンペティツィオーネから改良された四輪独立操舵(4WS)などを統合的に制御する最先端の電子制御システムにより、卓越したダイナミクス性能を実現している。
その効果は、ワインディングセクションで如実に感じられる。コーナーではドライバーがイメージしたラインを寸分違わずトレースするかのような正確な軌道を描き、2700mmへと最適化されたホイールベースも相まって、全長4733mmと決してコンパクトではないボディのサイズを感じさせない俊敏なハンドリングを実現。各要素の緻密な作り込みと統合的な制御により、パワーと軽快さ、安定性と機敏性という、相反する要素の高次元での両立を果たしている。
広大な草原からワインディングロードまで、変化に富んだ約130kmのルートを走り込み、12Cilindriの本質が見えてきた。それは、市街地では紳士的に、ワインディングでは官能的に、そしてハイウェイでは優雅に──さまざまな表情を自在に使い分けながら、ドライバーの意志に完璧に応える懐の深さだ。
これは単なるノスタルジーではない。250GTOや275GTBといった1950~60年代のV12グランツーリスモが持っていた多面的な魅力を、現代に再解釈した姿なのだ。812スーパーファストから受け継いだV12エンジンの血統は、さらなる進化を遂げながらも、フェラーリV12グランツーリスモの伝統を守り、同時に現代に求められる快適性と利便性を高次元で実現している。
環境規制の強化や電動化の波が押し寄せる中でも、真のグランツーリスモの理想を追求し続けるという、フェラーリの揺るぎない意志を体現する一台として、12Cilindriは新たな時代を切り拓いていく。その姿には、跳ね馬の新たな伝説の予感がするのだ。
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