晩年の教授が愛したワークキャップがいよいよ販売開始 | KIJIMA TAKAYUKI for Ryuichi Sakamoto
FASHION / MEN
2024年3月28日

晩年の教授が愛したワークキャップがいよいよ販売開始 | KIJIMA TAKAYUKI for Ryuichi Sakamoto

KIJIMA TAKAYUKI|キジマ タカユキ

教授のプライベートに欠かせなかった特注品が一般販売される

長きにわたる闘病の末、昨年逝去した坂本龍一氏。本サイトでは氏が携わってきたさまざまなプロジェクトやインタビューを多数紹介してきたが、愛用の私物について語ることは少なかった。一周忌を迎えた本年3月28日から、教授本人からのリクエストによって製作された特別なワークキャップが一般販売されることになった。

Text by KAWASE takuro

我々が教授をイメージするときにまず思い浮かべるのが、センター分けした白髪とベッコウ柄のメガネだろう。それから、ニューバランスのスニーカーの愛好家であったこともファンの間では知られているが、2012年ごろから「キジマ タカユキ」の帽子も愛用していたことはあまり知られていない。
昨年、ブランド名を改めてから10周年を迎えた「キジマ タカユキ」。創設者である木島隆幸氏は、アンダーカバーやソロイストなど多くの人気ブランドの帽子を手がけるデザイナーであり、30年以上のキャリアを誇る職人でもある。2019年8月12日、代官山のショップに併設されたアトリエに、オーダーのために足を運んできたのが坂本龍一その人だった。
こちらは教授本人が実際に愛用していたもの。その風合いから、何度も洗濯をしたことが見て取れる。タグなどは今回一般販売されるものとは異なる。
以前から「キジマ タカユキ」の愛用者だった教授が木島氏に依頼したのは、「NYのレストランにも被っていけるようなシックなワークキャップ」だったという。オーダー時は何気ない会話をしてから、オーダーのベースとなるワークキャップを残していった。そのワークキャップというのは、安易に入手できるようなものだったそうだ。
世界的な音楽家からのオーダーを受けた木島氏は、教授との数少ない言葉のやり取りと本人の雰囲気をインスピレーションとして、週末の誰もいないアトリエで1人黙々と制作に当たった。あまり上等とは言えなかった素材を滑らかで上質なコットン生地に変更し、よりエレガントに見えるように幅や被りの深さを何度も微調整を加えた。
そうして出来上がったオーダー品を手渡す際に、教授は茶目っ気を交えてこう語ったそうだ。「この髪色と眼鏡で坂本龍一だとバレちゃうけど、帽子を被って眼鏡を外せば山手線にだって乗れるんだよ」と。そう、このワークキャップには教授のトレードマークでもある白髪を隠す機能もあり、プライベートな時間に欠かせない相棒でもあったのだ。
この後、「冬のNYは寒さが厳しいから耳当て付きのワークキャップも欲しい」という連絡が入ったが、その最中に新型コロナが蔓延してしまい、教授の病状も次第に悪化。とうとうその帽子は完成しないまま、永遠の別れを迎えてしまうことになってしまった。そんな心残りがあった木島氏は、24AWコレクションのテーマを教授の2017年度作品『Async』から取った。
その許諾を得るために遺族に相談を申し出たところ、快諾を得たのみならず、「坂本図書」とのWネームでワークキャップを販売したいというリクエストを受け、今回の一般販売が実現したのだ。命日となる3月28日(木)から同月31日(日)までの4日間、代官山の「キジマ タカユキ」本店で限定販売。同時に坂本図書でも販売され、どちらも数量限定で完売次第終了となる。
教授がこの世を去ってからも、国内外で大きな災害が続き、地球温暖化もさらに厳しいものへとなった。そんな今、このワークキャップを通じて故人を偲ぶことには大きな意味があるだろう。我々に残してくれた数々の音楽とともに。
WORK CAP for Ryuichi Sakamoto
¥19,800
Material: Cotton100%
Size: 1 / 2 / 3
* 4月1日(月) 〜 7日(日) の期間中、キジマ タカユキのオフィシャルウェブサイト(http://www.kijimatakayuki.com)より受注販売も行う。
問い合わせ先

KIJIMA TAKAYUKI 代官山
東京都渋谷区恵比寿西2-17-4 イースト代官山 1F
TEL: 03-3770-2174
営業時間:12:00-19:00 水曜定休 (祝日は営業)
http://www.kijimatakayuki.com

坂本図書

坂本龍一本人が2017年から構想していた、本という文化資本を共有するための図書空間であり、2023年から一般社団法人として運営。場所は非公開で、完全予約制。予約の詳細はInstagramまたはX(Twitter)にて。
                      
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