Excuse My Trash!
「Excuse My Trash!」に関する記事
〈1〉テネシー州ナッシュビルへ
田中凜太郎 〈1〉テネシー州ナッシュビルへ“クリエーター=ゴミの収集家”たまに思い出したかのように気になるモノがあります。それは未来に向かって欲しいモノではなく既に購入済みで、しかし使わずじまいで記憶から消えかかっていたモノです。価値を知らない妻はそれを「また汚いゴミが増えた!」と呆れ顔で言いますが、一つ一つじっくり見直すとなかなかのヴィンテージ品も多く、そう簡単には捨てられません。アメリカに移住して8年。その間に10冊の本を出し、それに比例するように仕事部屋、ガレージ、車の中、さらに日本の実家までずいぶんとゴミが溜まりました。まぁ故アンディー・ウォーホール先生も全く同じことやっていたので、“クリエーター=ゴミの収集家”と僕は解釈しています。8月の上旬、テネシー州ナッシュビルに飛びました。レンタカーを借り、2週間の“ゴミ集めの旅”です。僕は月に1度飛行機に乗ってはどこかで撮影していますが、このナッシュビルへの旅にスペシャルな意味はありませんでした。たまたま仕事部屋で本を探していたら...
〈2〉15年ぶりのケンタッキー州
田中凜太郎 〈2〉15年ぶりのケンタッキー州ケンタッキーといえばケンタッキー州を走るのはもう15年ぶりで、久しぶりに広大な麦畑を見ました。ケンタッキーといえばバーボン・ウイスキーが有名ですが、小説『ライ麦畑でつかまえて』の舞台として知っている人も多いでしょう。小説の舞台となったこの界隈の広大な麦畑の景色は、15年の月日を経てさすがにちょっとモダンになった気がします。しかしやっぱり田舎は田舎ですね~。フリーウェイから外れると騒音がぴったりとなくなり、セミの鳴き声だけが大地を埋め尽くしています。僕は排気ガスで潰れそうなロサンジェルスが最近ちょっと嫌いになり、気分を落ち着かせるため、アメリカの田舎をドライブするんです。そこで出会う人々はちょっと保守的ですが、しかし大変に親切な人ばかりで僕にはぴったりなのです。カメラを2台肩にぶら下げながら朝9時にモーテルをチェックアウトし、夕暮れ時の7時まで国道127号線上を走らせると、田舎とは思えない数のクルマを目にします。盛り上がっているエリアでは駐...
〈3〉Route127
田中凜太郎 〈3〉Route127アメリカを16年間も走り続けている理由「写真を撮って!」女性からの逆指名は有り難き光栄!と思いきや、小学生ぐらいの女の子……。どうやら彼女は弟と一緒の写真を送って欲しかったようです。年の離れた弟を大変に可愛がっている様子でしたから。ファインダーを覗いた瞬間に驚きました。カリフォルニアのお洒落な子供達と全然雰囲気が違います。ケンタッキーの子供たちはとっても田舎の子供! しかしとてもキラキラと輝いているんです。良い空気を吸いながら育っているからでしょうか。子供らしい、素晴らしい笑顔で僕を見つめています。国道127号線をバックに立ってもらい、車が一台横を通り過ぎた瞬間にシャッターを切りました。「Thank You!」1/500秒という瞬間の中、僕がアメリカを16年間も走り続けている理由が見つかった気がします。この国だけは飽きることがありません。ギターピックとロイ・ブキャナンの顔別れ際に住所を貰い、名刺替わりに自分の名前とウェブサイト、電話番号が印刷された...
『My Freedamn! Vol.5』 (1)
田中凛太郎氏インタビュー『My Freedamn! Vol.5』 完成記念スペシャルトーク 第1回『My Freedamn! Vol.5』P234-235より2006年12月に発売されたばかりの田中凛太郎氏の最新作『My Freedamn! Vol.5』。その発売事前準備のために帰国していた田中氏にオウプナーズ編集室が緊急インタビューを敢行。気になる本の中身を含め、今回から3回に渡って彼の最新の声をお伝えします。『My Freedamn! Vol.5』Introductionよりテーマはエルヴィス以前のフィフティーズ──まずは『My Freedamn!』最新号のお話をお伺いしたいんですが、今回はどんな内容なんでしょうか?田中 テーマは「フィフティーズ」です。でもひとくちにフィフティーズといっても実はけっこう長いんですよ。エルヴィスが出てきたのが1954年でブレイクするのが56年。そして一般的に知られているフィフティーズはエルヴィスのブレイク以降、つまり56年以降のカルチャーのことを...
『My Freedamn! Vol.5』 (2)
田中凛太郎氏インタビュー『My Freedamn! Vol.5』 完成記念スペシャルトーク 第2回『My Freedamn! Vol.5』P200-201より本のテーマ談議から、いよいよ話は本の中身ヘと……。『My Freedamn! Vol.5』の目玉はスカル!──具体的な中身ですが、今回の見どころはどのあたりでしょう?田中 今回の目玉は、ずばりスカルです。古着マニアの間でもスカルは3本指に入るほど価値あるモチーフです。特にスカルのスカジャンというのは非常に希少で、値段もすごく高い。今回の本にはそれを数多く紹介しています。ここに10何着のスカルのスカジャンの写真がありますが、世界で現存している数自体50はないと思います。実はこの写真というのもまとめて撮ったわけではなく、これまで持ってる人に出会うたびに必ず撮らせてもらってたんです。滅多に出会えるものじゃありませんからね。──撮影はどういうふうなやり方で?『My Freedamn! Vol.5』P202-203より田中 僕は情報が入...
『My Freedamn! Vol.5』 (3)
田中凛太郎氏インタビュー『My Freedamn! Vol.5』 完成記念スペシャルトーク 最終回『My Freedamn! Vol.5』P254-255より凛太郎氏の本はその膨大な物量もさることながら、常に圧倒的なクオリティの高さで見る者を唸らせる。最終回を迎えた田中凛太郎スペシャルトーク。話はいよいよそんなクオリティをキープするための本作りの秘密へと。最後の詰めこそが本当の勝負──このクオリティの本になると編集作業というのもなかなか大変そうですね田中 いつもギリギリまで撮影してそれから編集作業に入りますが、実はひととおり並べてみてからが勝負なんですよ。そこからどこまで引き上げるか、ということですね。いま世の中に出ている本は、だいたいそこで止めちゃってるものの方が多い。それはつまり時間とコストの問題です。でも僕はその最後の詰めにこそこだわってしまいますね。──それは具体的にはどういう作業をするんですか?田中 そこからさらに足していきます。デザイナーさんはすごく嫌がりますよ。どんど...
『My Freedamn! Vol.6』完成!(1)
『My Freedamn! Vol.6』完成!そして制作過程で思ったこと……(第1回)前作『My Freedamn! Vol.5』の発表からおよそ3ヵ月。早くも去る3月23日には最新作『My Freedamn! Vol.6』が発売された。そこで今回は、そのVol.6の見どころと、制作過程で田中氏が見たアメリカの過去と現在、そしてアメリカ人にとってのフィフティーズなど、彼が感じたアメリカを思いのままに語ってもらった。interview&text by TAKEUCHI Toranosuke(Citywrites)『My Freedamn! Vol.6』 P8よりアメリカのフィフティーズとは、シャツの時代──最初に『My Freedamn! Vol.6』の概要を簡単にご紹介いただけませんでしょうか田中凜太郎 前回までのこのコーナーでもお伝えした通り、Vol.5とこのVol.6は「フィフティーズ」というひとつのテーマで作った本の前編、後編の関係に当たります。で、Vol.6に収めたのは、主...
『My Freedamn! Vol.6』完成!(2)
『My Freedamn! Vol.6』完成!そして制作過程で思ったこと……(第2回)前回に引き続きお送りする 『My Freedamn! Vol.6』 完成記念スペシャルインタビュー。話は、ボウリングシャツからフィフティーズを巡るアメリカの社会論、文化論へと広がって……。interview&text by TAKEUCHI Toranosuke(Citywrites)アメリカの50年代がアメリカから消えていく今回この『My Freedamn! Vol.6』を作っている過程で強烈に感じたのは、アメリカからアメリカの50年代の風景が急速に失われているな、ということでした。つい何年か前までは片田舎に行けば簡単に見ることのできた風景が、本当になくなっているんですよ。幸い服の中にはまだ当時のアメリカを見ることができますが、これだってもう少しすると触れなくなってしまうでしょうね。ギターなんかは、早くからヴィンテージという概念のあったジャンルですが、これからは服もギター同様文化財になっていくは...
『My Freedamn! Vol.6』完成!(3)
『My Freedamn! Vol.6』完成!そして制作過程で思ったこと……(第3回)『My Freedamn! Vol.6』 完成記念スペシャルインタビューの最終回。原点ともいうべきフィフティーズの風景が失われつつあるアメリカは、これからいったいどんな方向に進んでいくのか。そして、田中氏の本作りは、どんな理想へと向かっているのか。 話はそんな未来へと展開していきます。interview&text by TAKEUCHI Toranosuke(Citywrites)『My Freedamn! Vol.6』 P17よりアメリカには過去をルールにしないでほしい──前回までのお話では、いまのアメリカ人のベースだった50年代の風景がアメリカから失われているということでしたが……田中凜太郎 風景だけでなく、すでにフィフティーズな人もいなくなってしまいました。いまはちょうど、フィフティーズに象徴される20世紀のアメリカが終わったところなんじゃないでしょうか。ですが、僕は逆にこれからのアメリカが...
(1)「クリエイションと新作、そして古着への憂い」
Interview with Rin Tanakaクリエイションと新作、そして古着への憂い(全3回・1)現在『My Freedamn!』の新作と、もうひとつ別のプロジェクトを同時進行中という田中凛太郎氏。今回はそうした近況と、知られざるプロジェクトの内容を中心にお話をうかがった。自身のクリエイションから制作秘話、そして田中氏が愛してやまないアメリカの古着に対する思いまでを語る最新インタビューを全3回にわたって――。まとめ=竹石安宏(シティライツ)語り=田中凛太郎新作はハーレー・ダビッドソン105周年記念本!──今回は最新の活動についておきかせいただきたいと思います。まず現在はどんな本を製作中なのですか?田中凜太郎 現在は『My Freedamn! Vol.7』とハーレー・ダビッドソンから依頼された記念本を製作中で、2008年春ごろにはほぼ同時に完成する予定です。『My Freedamn! Vol.7』はハワイアンシャツ特集なので、時季的に春まで出せないんですよ。冬に出しても、誰もハ...
(2)「クリエイションと新作、そして古着への憂い」
Interview with Rin Tanakaクリエイションと新作、そして古着への憂い(全3回・2)ロサンジェルスにポートレイトとブツ撮り用の設備を備えた小さなフォトスタジオを設け、自身独自のライティングに取り組んでいる田中凛太郎氏。彼が愛して止まないアメリカの古着に対する思いまでを語る最新インタビューの2回目。まとめ=竹石安宏(シティライツ)語り=田中凛太郎ハーレーの歴史的アーカイヴを初公開──ところで田中さんはどのような写真がお好きなんですか?たとえばマグナムのような報道写真は大好きですね。“記録”として時が経てば意味をもつ写真です。そういう意味では、今回制作しているハーレー・ダビッドソンの本などもおなじですね。ハーレーは1913年から現在まで『エンスージアスト』というオーナー向けの会報誌をつくっていて、当時からプロのカメラマンを雇って写真を撮っていたんです。その膨大なオリジナル写真がハーレー本社に保管されており、スキャニングされてアーカイブされているのですが、社外秘である...
(3)「クリエイションと新作、そして古着への憂い」
Interview with Rin Tanakaクリエイションと新作、そして古着への憂い(全3回・最終回)今年ハーレー本社のあるミルウォーキーに創立105周年を記念したハーレーのミュージアムが完成し、その記念本の編集を任された田中凛太郎氏。100年近くのアーカイヴを紐解くうちに、アメリカのカジュアルウェアの歴史が見えてきたと語る。まとめ=竹石安宏(シティライツ)語り=田中凛太郎触れられないものになってしまった古着──当時のウェアの実物も、その記念本に掲載されるのですか?ハーレーサイドがなかなかいい実物をもっていって、それらも撮影しました。ミュージアムに納められるものなんですが、撮影のときにちょっとイヤだなと思ったのは、ミュージアムのスタッフがみんな手袋をはめて扱っていたんですよ。ぼくはこれまで、手袋をはめて革ジャンを撮影したことはないですからね。それでは触れないし、感覚をたしかめることもできない。それでよくどんなものかがわかるなと思ったんですけどね。これにはぼくらの大好きな古着と...