田中凜太郎|Excuse My Trash ! 「My Freedamn!」ついに完結(後編)
連載|田中凜太郎
Excuse My Trash !
「My Freedamn!」ついに完結(後編)
前回に引き続きお届けする田中凛太郎氏へのインタビュー第2弾。「マイフリーダム! Vol.10」を彩る80年代という時代の意味からフリーダムそのものの意味へと展開していった話は、さらにポスト「マイフリーダム!」へと続く。「マイフリーダム!」全巻の制作を通して、進むべき方向がはっきり見えてきたと話す田中氏。“ヴィンテージ”“ロックンロール”“僕たちのジェネレーション”といったキーワードとともに語られるストレートな言葉の数々から、田中氏のクリエイティブの核心に迫る。
Photographs by TANAKA RintaroText by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)
“ヴィンテージ”は僕たちのジェネレーションの共通言語
──「マイフリーダム!」は今回のVol.10をもって、一応ひと区切りついたわけですが、田中さん自身、ロックンロールなマインドをもってクリエイティブ活動を続けていくという姿勢に変わりはないんですね。
田中 それこそが変わらない部分です。僕は僕のやり方で、単純に好きだと思えることをやるだけです。
──本というスタイルは変わらないんでしょうか?
田中 もちろんこれからもイベント「インスピレーション」は続けていく予定ですが、あれはいわば「マイフリーダム!」の発展形。新しいチャレンジは、やっぱり本からのスタートになると思います。
──今後のテーマはもう決まっているんですか?
田中 具体的にアイデアが固まっているわけではありませんが“ヴィンテージ”が好きであることは永遠に変わりません。ですから、大好きなヴィンテージの世界をこれまでとは違うカタチで表現していくつもりです。
──ヴィンテージって、もはやひとつのジャンルですもんね。
田中 僕だけでなく、僕たちのジェネレーションにとっては、すごく大切なものだと思います。だから、それを簡単に放り投げることはできません。古着に限らずギターでも家具でも雑貨でも、やっぱりヴィンテージに惹かれます。考えてみれば、大好きなロックンロールだってすでにヴィンテージ。全部一緒なんです。ヴィンテージイコール僕たちであり、イコールロックンロール。「マイフリーダム!」を完結させた今、すべて同義語なんだということが、はっきりわかります。ひと言「ラモーンズ」とか「ワンスター」というだけで伝わるスピード感を僕たちのジェネレーションはもっているんです。
人生いい時ばかりじゃないけど、毎日がロックンロール!
──80年代に青春時代を過ごした今の40代にとって、ヴィンテージとロックンロールは同義語で、しかも世代の共通言語ですよね。
田中 馬鹿馬鹿しくても好きだから100%エネルギーを注ぐ。僕たちのヴィンテージの愛し方にも通じる、そういうロックンロールの精神は、今や僕自身の生き方のベースにもなっています。そして僕がずっとアメリカにいる理由も、常にロックンロールが聞こえてくる国だからです。
──以前凛太郎さんが、日本の“やんきー”とロックな不良の違いは、弱い者いじめをするかしないかだ、とおっしゃったことを印象的に覚えているんですが、ロックンロールやロックンロールを生んだアメリカの魅力の神髄はそういうところにあるんでしょうね。
田中 まさしくそうです。僕がちょっと上の尊敬すべき先輩たちに教わったのは「人生いい時ばかりじゃないけど、ロックンロールだよね」ということでした。つまり、社会への不満とか時代の閉塞感をどうするかとか、ひとりで深刻に考え込んでいてもどうにもならない。だったら、とりあえず一杯やろうぜ! そこでいいたいこといったら握手して帰ろうよ、みたいな。それがロックンロールだと思うんです。もちろん、それですぐに何かが解決するわけじゃない。でも“どうせみんなひとりぼっちなんだから楽しくやろうよ”という考え方って案外大切だと思うんです。僕はアメリカでひとり旅をするのが好きなんですが、ひとりで旅をしていると必ず誰かが話しかけてきます。
誰もがみんな孤独だとわかっているから声をかけてくれるんです。それがアメリカであり、ロックンロールなんですよ。
──いい時ばかりじゃないけどロンクロール! 名言ですね。
田中 実際の音楽の世界では、一度落ちた人がカムバックすることなんか滅多にない。挽回できるチャンスなんてほとんどないんです。それでも好きだからみんな続ける。僕自身に関しても、結果はともあれ好きなことに誠実でありたいですね。大人になると、いろいろと余計なことも覚えちゃうから、自分に誠実であることはなかなか難しい。でも、結局誠実でないものは残らないと思います。だからこれからも、音楽の聞こえてこないような本は作りたくないですね。
──「マイフリーダム! Vol.10」が出たばかりだというのに、早くも今後の展開に期待が膨らみますね。ロックンロールの精神で作られたヴィンテージへの次なる挑戦、大いに楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。そして「マイフリーダム!」に関しては、ひとまずお疲れ様でした!
田中 こちらこそ、ありがとうございました!
(了)