田中凜太郎|古着イベント「インスピレーション 2011」開催(その2)
Fashion
2015年3月13日

田中凜太郎|古着イベント「インスピレーション 2011」開催(その2)

連載|田中凜太郎

ヴィンテージファッションイベント

「インスピレーション 2011」開催(その2)

会場を“空”から“海”へと移し、さらにライブ感をプラスして開催されるという「インスピレーション2011」。今回も前回に引きつづき、イベント開催を目前に控えた田中凛太郎氏へのインタビューをお届け。「イベントが成功するにせよ失敗するにせよ、まちがった方向にだけは行きたくない」──話はイベントのテーマから、イベント主宰者としての、あるいはヴィンテージ業界に身を置く者としての彼の哲学へと迫っていく。

写真=田中凛太郎インタビュー=竹内虎之介(シティライツ)

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いまは“深さ”と“広がり”の折り合いをつけるのがむずかしい時代

──たんに“ヴィンテージウェアのイベント”というだけでなく、“ヴィンテージ”というキーワードに反応するひとたちが集い、楽しむイベントにしたいと?

田中 もちろん古着をいま以上に盛り上げたいという気持ちはありますが、最盛期であった1990年代の再来を望んでもうまくいかないでしょう。あくまでいまを生きているという認識は必要です。僕自身、いまではヴィンテージがベースにあるあたらしいもの、それもヴィンテージレプリカとはちがうアプローチをしているようなものも素直に見ることができるようになりました。

──ヴィンテージ業界にとって“いま”とはどんな時代?

田中 “深い”ところと“広い”ところの折り合いをつけるのが難しい時代だと思います。というのも、この高度情報化社会のなかでものごとをマニアックに掘り下げようと思ったらいくらでも深いところにいける。一方で、ある深いことと別の深いことがまったく個別に成立できてしまうのがいまの特徴だと思います。ちゃんと地上とつながっていて、ときどき空気を吸わないと危険。下手をすると気づいたときには誰も引っ張り上げられない、なんてことになっちゃいますからね(笑)。ただ心のどこかには深さのさらに奥まで突き抜けたいという気持ちもあります。突き抜けた先に、もしかしたら湖が広がっているかもしれない、と。

田中凜太郎|古着イベント「インスピレーション 2011」開催(その2) 01

ひとつのことを追求しているひとと目を合わせられる人間でいたい

──深い者同士がつながれるキーワードとはなんでしょう?

田中 それが“哲学”なんだと思います。たんに情報や技術の深さだけでは横のつながりは生まれません。哲学があれば会話ができると思うんです。たとえばヴィンテージオーディオマニアと古着マニアはおなじレベルで会話ができるはず。なぜなら両者ともおなじ時代にアメリカで生まれたものを追求しているから。それができていないところがいまの問題なんです。だから僕はこのイベントを哲学をもってやると肝に銘じています。そういう意味では、いいミスはOKだとさえ思う。逆にまちがった方向にだけは行きたくないですね。

──まちがっていない方向というのが「インスピレーション」の哲学ということ?

田中 クリエイターと呼ばれるひとたちに共通する、金を儲ける一歩手前の“高いレベルを目指す気持ち”のようなものを大切にしたい。いくら成功しているように見えるひとでも、それをクリアできていないとモヤモヤするもの。そういう“プロセス”を大事にしていきたいですね。そしてなにより僕自身がひとつのことを追求しているひとたちとしっかり目を合わせられる人間でいたいと思います。結果ももちろん重要ですが、僕にとってはそのひとがどういうプロセスで、どういう“ワザ”を仕掛けたかということが大事。ワザが決まってるヤツはカッコいいんですよ。そういうひとたちが気持ちよく参加できるイベントでありたいし、僕自身も彼らに「なかなかカッコいいぞ」と思ってもらえるワザを仕掛けていきたいですね。

──そういったところがイベントの正否を決めるということでしょうか。

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田中 なにをもってイベントが成功だったかを見極めるのは難しいことですが、たんにたくさんひとが集まればいいというものではありません。「インスピレーション」の場合、少なくとも『マイフリーダム!』のヘッズのひとたちがよろこばないことはやりたくない。そして僕自身がニコニコしていられるイベントでありたいと思っています。もちろん能天気なだけではだめですが、自分のキャパを超えることをしたいとは思いません。最初に協力してくれたひとたちの想いを潰してまでなにかをしたいとは思わないし、それは僕のキャラクターではないから。

Queen of Vintage Vol.2: [Meow]

Queen of Vintage Vol.2: [Meow]
価格|5250円
サイズ|H307×W232 mm
重さ|約1kg
言語|英語表示のみ

『My Freedamn!』主催の古着イベント「インスピレーション 2011」特別展示に合わせて製作されたスペシャルブック『Queen of Vintage Vol.2: [Meow]』。発売後、またたく間にソールドアウトとなった前作『King of Vintage No.1: Heller’s Cafe』(絶版)につづき、今回はハリウッドコスチューム業界からも注目を集める女性古着ディーラー キャサリーン・シャーフさん(『Meow』オーナー)の膨大なデッドストックコレクションを大特集! 第二次世界大戦以前に労働者に向けて販売されたオーバーオールユニフォームを筆頭に、1930年代~50年代に全盛を迎えたカウボーイファッション、アメリカ黄金時代を象徴するフィフティーズファッション、さらに黎明期の貴重なビーチファッションまで、ヴィンテージデザインそのもののおもしろさにフォーカスした“ヴィンテージバイブル”である。

           
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