田中凜太郎|『My Freedamn!』の発展系イベント「INSPIRATION」開催!(その2)
しっかりとしたコンテンツをもった濃い人たちによる、21世紀の正しいアウトプット
『My Freedamn!』 の発展系イベント 「INSPIRATION」 開催!(その2)
たんなる古い服ではなく、かといって、そぉ~っと鑑賞するだけの骨董品でもない、ヴィンテージウェアという20世紀の申し子たち。2010年、田中凛太郎氏によって始動するイベントは、そのヴィンテージウェアがもつ潜在的な力を最大限に引き出そうとする試み。前回に引きつづきお届けするインタビューでは『インスピレーション』というタイトルに込められた真意から、イベント成功の鍵を握るキーワードまで、さらに突っ込んだイベントの核心に迫る。
インタビュー=竹内虎之介(シティライツ)写真=田中凛太郎
気分は、ビル・グラハムに挑戦!
──『インスピレーション』というイベントのタイトルは、どういうところから出てきたんですか?
文字どおり、この場でインスピレーションを売ったり買ったりするという意味なんですが、これはファッション業界でよく使われてきたセリフを逆手に取ったものでもあります。というのも、昔からファッションの世界では、古いものをヒントに新しいものをつくるとき「○○○にインスピレーションを得て……」という言い方をしてきました。だったら、それをもっと積極的にビジネスにしてもいいんじゃないかと思ったわけです。いま、僕たちにとって大切なことは、好きなこととビジネスをどう結びつけるか。60年代くらいにおこなわれていたようなアートとコマーシャリズムの接点をどう探すか。それが大きな命題だと考えています。そういう意味でこのイベントには、たんに古着のバイヤーやショップの人たちだけでなく、さまざまなアーティストやクラフト作家の人などにも参加してもらう予定です。そこで、モノや情報を含め、みんなでインスピレーションを交換し合えればいいと思っています。僕自身は、60年代に伝説のライブハウス『フィルモア』をつくったビル・グラハムに挑戦! という気分です。
イベント成功の鍵を握るのは、集客数ではなく参加者の“濃さ”
──イベントには一般の人も参加できるんですか?
チケットを買えば誰でも参加できます。ただし、チケットは2日間通しのものが85ドル、2日目のみのものが35ドルと、通常のアメリカのイベントに比べると少々高め。このあたりの価格設定も、あえて少し高くして、変な人が来ないようにと配慮しました。日本と違ってアメリカの場合、情報さえ入れば平気でいかがわしい人が来ちゃうんですよ。いまの時代、イベント成功の鍵を握っているのは集客の多さではなく、来ている人の“濃さ”。『My Freedamn!』のファンや関係者はみんな濃いですから、その濃度こそを大切にしたいと考えています。
──『インスピレーション』という大テーマとは別に、毎回個別のコンセプトなどはあるんですか?
ええ、今回はサブテーマに“リセット”という言葉を掲げています。着ないものは売ってリセットしよう! という意味もあるんですが、もっと深い意味で、いまリセットが必要なんじゃないかと。古着業界においても、なにか新しいことを始めないと、モノもシステムも時代に合わなくなっていることはみんな薄々気づいているんです。その着地点をどこに見出していくのか、というのもこのイベントの課題だと思っています。考えてみれば、冷戦が終わってはや20年。21世紀に入ってもうすぐ10年です。アメリカもオバマが大統領になったりとか良かった部分も多いとは思いますが、なにかかつてのようなパンチがなくなりました。そんななかで、古着の世界も方向性を失いつつあるように感じます。
──僕らの世代が、国とかそういう単位を超えてなにかやらなきゃいけない時代ですよね。
もう一度、一から考えなきゃいけない時期に来ていると思います。これまでなら、あり得なかった組み合せとか。
──そこで“好き”という気持ちの“濃さ”が重要になってくるわけですね。
まさにそのとおりだと思います。でも、ようやくいろんな垣根を越えてコミュニケーションができる時代がやってきたと思っていますし、僕はそこに希望を感じています。
──インターネットの存在も大きいですよね。
そうですね。かつてだったら2000人集めるのは大変ですよ。でも、いまは本当に興味があれば、どうにかして伝わって来るんです。その代わり、たとえばイベントなら1万人の集客とかは、はなから目指さないことですね。
──濃度が薄まると壊れるのも早いということでしょうか。
まさにそのとおりです。