田中凛太郎 『My Freedamn! Vol.8』とシックスティーズ(その1)
Fashion
2015年3月13日

田中凛太郎 『My Freedamn! Vol.8』とシックスティーズ(その1)

田中凜太郎、待望の最新作をリリース&独占インタビュー!

『My Freedamn! Vol.8』と、シックスティーズ(その1)

ハワイアンシャツをフィーチャーした『Vol.7』と、ハーレー・ダビッドソン記念本の同時発売から約1年、待望の最新作『My Freedamn! Vol.8』が6月15日に完成した。
オウプナーズでは、新作発売を目前に控え6月初旬に来日していた田中凛太郎氏に単独インタビューを敢行。
今回から全3回にわたり、新作の見どころや制作中のエピソード、今後への思いなどを語る田中氏の生の声をお届けする。

写真・語り=田中凛太郎インタビュー・文=竹内虎之介(シティライツ)

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『Vol.8』のテーマは、ポップカルチャーの時代“シックスティーズ”

──まずは完成したての『My Freedamn! Vol.8』の概要からお聞きしたいと思います。今回のテーマはどのあたりなんですか?

田中 『Vol.5』が1940年代、『Vol.6』と全編ハワイアンシャツでお届けした前作『Vol.7』が50年代。で、今回は60年代がテーマです。モノとしては50年代後半から60年代いっぱいぐらいのものがラインナップされています。

──60年代の最大の特徴というと、どういうものですか?

この時代の大きな特徴としては、カラー写真とカラーテレビの普及があります。その影響で服もモノも色味のあるものがドッと増えた時代です。同時にアートの世界ではアンディ・ウォーホルが出てきて、音楽ではベンチャーズやビーチボーイズといったカリフォルニアドリーミングブームが起こる。そしてビートルズが一気に時代を変えてしまいます。

ひとことでいえば、ポップカルチャーのはじまりといえる年代ですね。

──カラー写真、ポップアート、ポップミュージック。時代全体が軽やかになっていくんですね。

そうです。同時にこの時代は、戦後生まれのいわゆるベビーブーマーたちがティーンエイジャーになった。膨大な人口が膨大な消費をおこなうという、本格的な大量生産時代に突入した時期でもあります。ですから、古着市場においてもモノの量が増え、逆にクォリティは下がっていくという時代です。

田中凛太郎 Photo02

田中凛太郎 Photo03

魅力は、新世代アメリカ人の“センス・オブ・ユーモア”

──では、この時代の古着の面白さとは、どこにあるんでしょう?

50年代以前に比べてクォリティは下がりますが、今度は新世代のアメリカ人の“センス・オブ・ユーモア”が出てくるんです。そこがこの時代のもっとも面白いところですね。

色も内容も、グラフィック自体が明るいですね。服が機能というより、よりファッション的になっていった時代といえます。しかも、この新しい感覚のユーモアをファッションに落とし込むという手法は、当時アメリカにしかなかったもの。そういう意味では、今日までつづくアメリカ的カジュアルファッションの原型がここにあると思います。

──いわゆる、アメリカがもっとも輝いていた時代なんですね

そうですね。朝鮮戦争が終わってベトナム戦争がはじまるまでは、文字どおり平和な時代ですし、ベトナム戦争がはじまってからも、しばらくは景気もすごくよかった。だから、この時代の古着には、クリーンなイメージのなかに平和な笑いがあるといったものが非常に多いんです。

──アイテムとして今号の目玉といえるようなものはありますか?

カテゴリー的にはあまり変わっていません。サーフィン、モーターサイクル、ホットロッド、そしてミリタリー。いわゆるアメリカの王道です。

そのなかで強いていうなら、「ベトナムジャケット」でしょうね。これまで朝鮮戦争時代のスカジャンは紹介したことがありましたが、このベトジャンは初出しです。

──モチーフは別として、アイテムとしてベトジャンとスカジャンの最大のちがいはどんな点ですか?

圧倒的にちがうのは素材です。スカジャンがサテンやベッチンを使っていたのに対し、こっちはナイロンやコットン製が多い。これはさっきもお話したとおり、大量生産に向いた、コストダウンしやすい素材になったということです。単純におなじコストでサテンやベッチンのものができなくなったんでしょう。それでもベトジャンがアイテムとして面白いのは表現の部分。ここにもセンス・オブ・ユーモアがあって、全体としてチープでポップな“ギリギリのカッコよさ”があるんですよ。

──たしかにこういうチープ&ポップって、アメリカモノのいい部分でもありますよね。

モノとして本当によかったのはやっぱり30年代から40年代のモノ。あの時代のモノって、ヨーロッパから入ってきた服とアメリカの工業化がもっともいいバランスで融合していたと思うんです。そういう意味では、シックスティーズのアメリカは、完全に『アメリカングラフィティ』の世界。すべてがポップで明るい新しい世代の価値観なんですよ。

『My Freedamn! Vol.8』
価格│8925円
テキスト|英語/日本語
Cycleman Books 2009


           
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