錯誤の経済学
「錯誤の経済学」に関する記事
第12章 目に見えない国民性の決定的な強味
第12章 目に見えない国民性の決定的な強味文=今 静行──経済の生産性を押し上げる心の生産性──日本人の思考、生活感覚にとまどいを覚える外国人が実に多い。知識人ほどその傾向が目立ちます。誰でも次のような話を何回か聞いたことがあるはずです。私の友人の一人であるアメリカ人ジャーナリストで東京在住の特派員が、思いを込めるようにして語ってくれた内容を紹介してみましょう。「赤ちゃんの時はお宮参り、結婚式は教会で、葬儀はお寺で。このようなことに何の抵抗もなく少しの違和感もない日本人──われわれ欧米人にとって本当に不思議な国だと思う」さらに言葉を続け、「しかし冷静になって考えてみると、日本経済の底を流れている力強さは、案外このへんにあるのかもしれない。我々外国人の物差しでははかれないような“合理性”を、日本人は風土そのものの中に持っているのかもしれない」と、自分に言い聞かせるように話してくれました。彼の言う“合理性”を経済の場に移して生産性と置き換えてもいいでしょう。目に見えない国民性のようなも...
第13章 株価はどうして決まる?
第13章 株価はどうして決まる?文=今 静行元本保証なしのさいたる金融商品「株式」株式に対する関心は企業、家計を問わず大変な高まりをみせております。たとえば家計の貯蓄商品のなかで株価のウェイトが高い投資信託が目覚しい伸びを示しております。株に対する関心の高まりそのものです。「株価」はどうして決められるのでしょうか? たいへん素朴な質問です。この素朴な疑問をしっかり理解することが株式投資の出発点なのです。筆者はかつて民間ラジオ局のレギュラー解説者として金融、株式を含む経済全体の問題についてお話し、さまざまな質問に答えてきましたが、多くの質問のなかでつぎにあげるような内容のものが目立ちました。「上下の幅が200円、300円もするのがたくさんあります。昨日と今日で会社の業績や経済状況が200円も300円も違うものなのでしょうか。こんなに上下すると株式が心配になってきました。なぜ株価は毎日大きく変動するのでしょうか」夢中で株を売り買いしているうちに、フッと株価の決め方、つまり株の本質を知ら...
第14章 株式は大量生産できない金融商品
第14章 株式は大量生産できない金融商品文=今 静行いつも暴騰、暴落のふたつの顔をもつ何事も教科書どおりに決まるなら少しも問題ないのですが、実態はその逆のケースが多いのです。とりわけ株式について当てはまります。一般に株価形成の主要因は企業業績、金融情勢、外国人投資をはじめ為替相場、物価、金利など交錯してその日その日の相場ができます。しかし、このような基本どおりに株価が決まるものなら、株式投資は少しの心配も苦労もなく楽しいものになるでしょう。実態は決してそのような安易なものでなく、不安の固まりのようなものが株式相場なのです。一喜一憂というなまやさしいものでなく、家族を巻き込んでの大きな悲劇が株式投資には待ち受けていることもあるのです。本当に損する余裕もないひとが株式投資に走ったらどんな結果になるか。寒気を覚えるのは私だけではないでしょう。株式相場の宿命くどいようですが株価の決まり方についての原則的な事項にかなりの紙数をさきましたが、本当のところそれ以上に重要な別の要因があるのです。そ...
第15章 経済予測や株価予想が当たらないわけ
第15章 経済予測や株価予想が当たらないわけ文=今 静行「経済は生き物だ」を知る景気の動きを予測したり、株式市場の流れを見定める場合、なにはともあれ私たちのまわりにたくさん出まわっている経済指標や株式指標を参考にするというのがごく一般的な手法となっています。なかでも投資家といわれる層は、過去や現在のさまざまなデータを引っ張り出し、前から見たり、横からのぞいたり、裏側をひっくりかえしたりして自分なりの予想、あるいは結論を引き出します。しかし全部といっていいほどその見通しは当たりません。投資家だけでなく研鑽を積み重ねた有能な学者や経済専門家、豊富な経験をもつ調査マンが膨大な資料をととのえ、最高の性能を備えたコンピューターを駆使しても、経済の諸現象をなにひとつ正確に見通せないのです。いつの間にか「当たらずといえども遠からず」ならば百点満点、という考え方が大手を振ってまかり通るようになっています。ドーナツをながめて「強気予想」と「弱気予想」自分なりに予測したり結論を出した人たちを、大きく色...
第16章 止まらない「官から民へ」のうねり
第16章 止まらない「官から民へ」のうねりこのままでいいのか文=今 静行“民営化推進”のひとり歩きと疑問点すったもんだの末、今秋10月に郵政民営化が実施されましたが、その後も「なんでも民営化ありき」の風潮が続いております。民営化の推進とは、ヒト、モノ、おカネを効率的に動かす経営を目指すことに尽きます。親方日の丸的な官僚依存体質から脱却し、より行きとどいたサービスを提供しようということです。このため徹底した効率主義、成果主義の経営が求められます。当然ですが、採算の合わないところは切り捨てることになります。郵政民営化をめぐって百家争鳴の状態が続き、なかなか結論を出せなかったのは、それなりの背景、根拠があったからです。アメリカでは、空港はもちろんのこと、刑務所さえも民営化花盛りです。日本でも最近、初の民営刑務所が誕生し大きな話題になりました。アメリカ、日本を問わず、「民営化がベスト」というかんがえに疑問をもつひとたちも多いと思います。政府の役割と私企業活動の役割を、あらためてしっかり議論...
第17章 日本経済を左右する家計部門
第17章 日本経済を左右する家計部門文=今 静行家計を整えることが経済の出発点内閣府の調査によると、国全体の純資産(国富)に占める家計力の純資産(保有する総資産から負債を差し引いた純粋な資産)は、2005年末時点で82%となり、調査開始以来の最高を記録しました。金額にして2166兆円です。日本という国全体の国富の8割以上ということですから、ほかの企業部門や政府部門などカスんでしまいます。家計は圧倒的存在感です。私たちがモノやサービスにおカネをつかうか、つかわないかによって、日本の景気がまちがいなく左右されるのです。家計の強さをしっかり知ってください。もともと経済は、生産と消費を繰り返しながら、より豊かな生活を目指す行為です。モノをつくり収入を得、衣食住(消費)を整えるといった毎日の生活にかんするものであり、非常に身近なものです。噛みしめてほしい福沢諭吉のことば興味深いのは、経済(エコノミー)の語源が、ギリシャ語の「家の世話」「家の規則」ということばから出ていること。経済の概念という...
第18章 アメリカの有色人種(少数派)、1億人を突破
第18章 アメリカの有色人種(少数派)、1億人を突破文=今 静行黒人を上まわったヒスパニック系アメリカ国勢調査局は、2007年5月、白人でない少数派(黒人、ヒスパニック系、アラブ系など)が、はじめて1億人を突破したと正式発表しました。たいへん、関心のもたれる数字です。アメリカの総人口3億人の3分の1が、いわゆる白人以外の少数派で占められたのです。その内容をみると、スペイン語を母国語とするヒスパニック系移民が4430万人に達しました。しかも年間増加率も3.4%とぐんを抜く高さ。さらに急速に増え続けていくことでしょう。興味深いのは、総人口に占めるヒスパニック系の比率は14.8%で、それに次ぐのが黒人の13.4%(4020万人)だということ。第3位はグンと低くアジア系(1490万人)の5.0%です。参考までにあげておきますと、白人人口は1億9800万人、総人口の66.4%でした。アメリカ最大の内政課題好むと好まざるとにかかわらず、少数派(マイノリティ)がアメリカの主流になることははっきり...
第19章 白人国家でなくなるアメリカの複雑な事情
第19章 白人国家でなくなるアメリカの複雑な事情文=今 静行先進国中ぐんを抜く、アメリカの人口増加とその背景アメリカの総人口は、2006年にはじめて3億人を突破しました。先進国をみると、人口減少傾向が当たりまえで、増えている国でも微増程度です。先進国のなかで唯一、高いペースで人口増加しているアメリカですが、そこにはヒスパニック系やアジア系移民が大きく寄与しているのです。中南米のスペイン語圏出身のヒスパニック系アメリカ人の出産率の高さには目を見張るものがあります。1000万人以上といわれるアメリカの不法移民の約8割がヒスパニック系ということが、総人口増加の大きな一因となっております。ここにひとつの数字をあげておきましょう。ひとりの女性が一生に産む子どもの数(合計特殊出生率)は「2.0人」と高い水準なのですが、人種別にみると、白人が「1.8人」、アフリカ系アメリカ人(黒人)が「2.2人」に対し、ヒスパニック系は「3.0人」と突出しています。出生率の高い移民、とりわけヒスパニック系の流入...
第20章 高齢化社会の正しい生き方、「人生の本番は50歳から」
第20章 高齢化社会の正しい生き方、「人生の本番は50歳から」文=今 静行医学的には90歳が「天寿」日本人の平均寿命が伸びて世界一の長寿国になりました。疑いもなく人生90年の時代になってきています。いま50歳前後で普通の健康体なら、医学的には90歳が「天寿」ということです。天寿とは、前夜家族と楽しく談笑し、翌朝少しの苦しみもなく眠るように息を引きとるというような大往生。つまり誰もが願う理想的な死です。私の友人で老人病を専門に研究している、ある医科大学の教授から直接聞きましたが、90歳まで生きることは無理としても、80歳から85歳まで生きることは難しくなくなるということです。そこで、現実化が進む高齢化社会を踏まえた、生涯設計のワク組みと心構えをしっかり知る必要があります。一番大切なことをひとことでいえば、「人生の本番は50歳から」ということです。50歳までは“人生の準備期間”私たちはゼロ歳から乳児期、少年期、青年期と成長していきますが、24~25歳までは、いってみれば、親の支えなしに...
第21章 供給過剰が続く住宅事情、熟慮が求められるマイホーム取得
第21章 供給過剰が続く住宅事情、熟慮が求められるマイホーム取得文=今 静行住宅総数のうち13%が「空き家」世帯数4700万、住宅総数5400万戸、最初にこの数字をしっかり頭に入れてください。総務省「住宅・土地統計調査報告」(2003年)にある数字です。この統計は5年ごとに作成されるもので、2003年がいまのところ最新となっていますが、実態は世帯数、住宅数ともかなり増加しております。気になるのは、全国の住宅総数のうちざっと700万戸、13%がひとの住まない「空き家」になっているということ。100戸のうち13軒は空き家ということです。住宅数と世帯数の推移を総務省の統計でみていくと、1978年(昭和53年)にすでに262万戸も住宅が世帯数を上まわっていました。30年前から供給過剰になっているのです。そういえば、新聞に折り込まれてくるぶ厚いチラシの9割以上はマンション、一戸建てなどの物件情報ですし、家庭には毎日のように住宅購入を勧める電話がガンガンかかってきます。業者の激しい売り込みに、...
第22章 経済学の身近かさを知る
第22章 経済学の身近かさを知る文=今 静行あらためて“経済学って何だろう”このへんで「経済学って何だろう」と原点に立って考えてみることは決して無駄ではないでしょう。経済学は「現実の経済を解明する学問」として定義づけることができます。経済学が学問としてかたちづくられて、まだ240年たらずですが、どの経済学者たちも、いま起きている経済現象や近い将来にスポットを当てながら、いま以上に住みやすい社会をめざしてきました。より率直に言いますと、経済学は経済政策、つまり国民生活を豊かにする具体的な政策に奉仕する学問と私自身は受けとめております。政策や家計に役立たない経済学なら、学ぶ必要がないと言い切って差しつかえないのです。経済は不変の最優先事項経済に無関心な人はいないでしょう。政治、教育、文化、社会福祉、外交など、すべてのことに最優先するのは経済(経済力)であることは否定しようもない事実です。人々は洋の東西を問わず、衣食住を整え、より豊かな社会、生活を求めて一生懸命働いています。生産と消費を...
第23章 値上げラッシュの表顔と裏の顔
第23章 値上げラッシュの表顔と裏の顔文=今 静行家計を直撃おそろしい勢いで、日本中に値上げの波が押し寄せています。2007年はじめの原油相場は1バレル=50ドル前後でしたが、年末にはざっと倍に跳ね上がっています。誰がこれほどの値上がりを予想できたでしょうか。レギュラーガソリンは1リットル=150円台が当たり前となり、軽油も灯油も想像以上の値上りで、家計部門は不安心理のかたまりになっています。タクシー料金、食料品やビールなど私たちの身のまわりに値上げが続いております。異様な今回の値上げの動き現在の値上げはこれまでに見られない異様な動きなことに気づいてほしいと思います。一般的にというか理論的には、個人消費が高まって、つまり需要の活発化が引きがねになって物価上昇をまねくというのが普通の動きです。ところが今回は原油の大幅値上げ、小麦、大豆など穀物価格の上昇など、これまでの一般的な物価上昇とまったく異なっています。言ってみれば“悪質な価格上昇”なのです。困ったことに原油高、小麦など穀物上昇...
第24章 企業の業績好調と賃上げストップの矛盾
第24章 企業の業績好調と賃上げストップの矛盾文=今 静行経団連がいまさら賃上げ容認のおかしさ政府、大企業サイドから業績好調の大合唱が聞こえてきます。ゆるやかな景気回復はたしかだと国民にことあるごとにアピールしています。おかしなことに大企業から中小零細企業にいたるまで、賃金引き上げはほとんどなしです。景気が良かろうが悪かろうが、賃金やボーナスをアップしないという体質が経営者に浸みこんでいるのです。要するに人件費は増やすなという経営方針が浸透しているのです。これでは国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費支出が盛り上がるわけがないのです。私たちが一斉に買い物をし、レジャーなどにおカネを使うようにすれば、アッという間に景気は間違いなく上昇します。私たち一人ひとりの消費が景気を左右することは、理論的にも実践的にもまったく正しいのです。こんな事情に気づいたのか、最近になって経営者の代表的な集まりである日本経団連が、業績好調な企業の賃上げを容認する方針を打ち出しました。やはり家計に消費支...
第25章 他人事ではない、サブ・プライムの大きな落とし穴
第25章 他人事ではない、サブ・プライムの大きな落とし穴文=今 静行愚かさだけが残る金融機関アメリカのサブ・プライム住宅ローン問題が重くのしかかってきています。住宅ローンの不良債権問題にすぎないのですか、これほど日本経済の足を引っ張るとは考えてもいなかったのです。それは、ワケのわからない高度金融技術なるテクニックを用いて、ローンという債権を証券化し、世界中の金融機関に売りさばいたからです。日本の銀行、信金や証券会社も目先の利回りに飛びついたのです。その損失額は6000億円以上ということです。大きな損失を被っております。いってみれば私達の預金(資金)が大損害を受けているのです。他人事ではないのです。住宅価格は無限に上がり続けると信じたことのツケこの機会に、あらためてサブ・プライムローンについて学習してみる必要があります。まず言葉の意味ですが、サブ(sub)はサブマネージャー(副支配人)とかサブ・キャップテン(副監督)の「サブ」のこと。補欠とか“次位の”という意味です。プライム(PRI...
第26章 日本記者クラブ恒例の興味あるアンケート
第26章 チャレンジしてみたらいかがですか日本記者クラブ恒例の興味深いアンケート文=今 静行凝集したアンケートと遊び心全国各都市にいろいろな記者クラブがあり、地域社会に大きな影響力と役割をもっていますが、その頂点に立つのが日本記者クラブ(ジャパンナショナルプレスクラブ)です。諸外国の元首、大統領や政財界、学者などにとって、日本記者クラブでスピーチすることは、日本国民に対するメッセージとなっております。その日本記者クラブは、新春の会員互礼会に、その年のもっとも深い関心事についてマトを絞って出来事を予想するアンケートを作成します。正解したひとは翌春の互礼会で表彰されます。このアンケート内容は、日本のマスコミの代表が知恵を出し合ったものです。マスコミの関心を凝集したものだけに、知る人は知るという存在になっております。考えてみてもいい、10問の内容座興といいながら、政治、経済、外交、スポーツ、娯楽面まで多岐にわたっております。紹介しておきますから、遊心な気持ちでチャレンジしてみてください。...