How to see design
「How to see design」に関する記事
第4回 Jaime Hayónの新地中海バロック(2)
第4回 Jaime Hayónの新地中海バロック(2)マーク・ゴンザレスはプロスケーターから転向し現在はアーティストとして高い評価をされている。ハイメ・アジョンもまた、スケーターから転向しデザイナーとしてスターに昇りつめた異色の経歴を持っている。今年1月のリアドロ発表会。そして、4月のミラノサローネで発表されたイタリアのタイルメーカー『Bisazza』の展示によって名実ともに彼の名前は世界に知れわたった。写真=Jamandfixスケーターからトップデザイナーへ僕が彼を知ったのは2、3年ほど前。香港の玩具メーカーから彼のデザインしたフィギュアが出たころだ。僕自身そのころは彼に大した興味はなかったのだが、昨年オランダのロッテルダムで行われた個展で彼にたいしての興味は一気に加速した。既存のプロダクトデザインから逸脱していたからだ。もはや彼の作品もアートの領域に入りつつあることを確信した。ここ数年オランダのデザイナーが世界的に注目されていたのだけれど、とうぜん彼の存在はノーマークだった。ス...
第5回 伝統を革新させるDomeau & Peresの家具(1)
第5回 伝統を革新させるDomeau & Peresの家具(1)欧米ではすでにメーカーとプロダクトデザイナーが組んでアート性の高い家具を製作するという取り組みは、めずらしいことではなくなっている。フランスのDomeau & Peres(ドモー・エ・ペレス)社もまた、そういったメーカーのひとつである。1997年、馬具職人のBruno Domeau(ブルーノ・ドモー)と織物職人のPhilippe Peres(フィリップ・ペレス)によって設立されたこのメーカーは自動車、航空機そして住宅用の家具を中心に製作している。彼ら自身が職人であるゆえに、伝統的で高度な職人技術によって作品が製作されているが、そのアプローチはつねに際立った新しさを感じさせてくれる。写真=Jamandfix伝統と創造伝統的な技術をもつ職人にとって、新しい表現をしていくことは容易ではない。そういった意味でもDomeau & Peresの仕事は異端であり、革新であり、将来に技術を継承するうえでとても意...
第6回 伝統を革新させるDomeau & Peresの家具(2)
第6回 伝統を革新させるDomeau & Peresの家具(2)フランスで10年前に創業したDomeau & Peres(ドモー・エ・ペレス)社が伝統的で高度な技術を駆使し、インテリアデザイナーとのコラボレーションを行なっていることは前回紹介した。今回ももう少し別な側面を紹介していこうと思う。写真=Jamandfixユニークな創作フランスを代表する喜劇俳優であり、映画監督であるジャック・タチの作品『Mon Oncle(ぼくの伯父さん)』をご存知だろうか?モダンデザイン全盛期における人々の暮らしが文明の皮肉たっぷりに展開される喜劇映画だ。この映画のなかで、美術監督マーシャ・マケイエフとジェローム・デュシャンの一風変わった家具や造作が登場するが、そのなかの象徴的な3点の家具をこのふたりのデザイナーと製作するプロジェクトが行なわれた。日本でもタチ映画は人気が高く、フランスかぶれの人たちを中心にこの出来事は話題になった。 Domeau & Peresは権威のあるブラ...
第7回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(1)
第7回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(1)ベルリンはいわゆるベルリンの壁の崩壊後、多くのクリエイターが集まり先鋭の街へと変えていった。そのベルリンの旧東側に位置するファッション・ストリートの路地を入ったところに『Bless』は店を構えている。『Bless』はイネス・カーグ(1970年生)とデジレー・ハイス(1971年生)の2人によって、1997年このベルリンで活動を開始した。ファッション・デザインをベースにしながらも、プロダクト・デザインから空間デザイン、インスタレーションなど多岐にわたりその表現はデザインというより、むしろアート的であるといえる。魅せる配線『Bless』のコレクションは、97年の登場からコンセプト別に通し番号で分類されている。2005年夏、僕がベルリンを訪れた際に、お店ではNo.26が発表されたばかりだった。このNo.26は今回紹介するケーブル・ジュエリーだ。延長コードやLANケーブル、携帯電話の充電機、USBケーブルなどなど、様々なコード類にレー...
柳本浩市|第15回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(前編)
第15回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(前編)80年代前後に生まれたデザイナーとの対談のふたりめは海山俊亮さん(MicroWorks)です。海山さんことを知らなくても、iidaから発表された葉っぱの充電器といえばピンとくる人も多いはず。ユーモアがいつもどこかに潜んでいるプロダクトを生み出す秘密はどこにあるのでしょうか? そんなところを探れるといいですね。Text by 柳本浩市メーカーとディーラーとしての機能を両方もちあわせている珍しいデザイナー柳本 海山さんとの出会いは、昨年7月「iida」another worksの発表のときでした。それ以来、いろんなところで遭遇していますね。海山さんはモノをつくって自ら販売するという、いわばメーカーとディーラーとしての機能を両方もちあわせている珍しいデザイナーです。同じ形態でやっているデザイナーをあまり聞かないのですが……そもそもどういう経緯でこのスタイルをはじめたのですか?海山 すごく単純な動機なん...
柳本浩市|第16回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(中編)
第16回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(中編)デザイナー海山俊亮さん(MicroWorks)を迎えての対談2回目。海山さんがつくるプロダクトは、デザインとコミュニケーションがバランスよく揃ったもの。“自分たちがつくりたいものをつくる”という意欲をもった80年代前後生まれのデザイナーの考え方に迫ります。Text by 柳本浩市自分でできてしまうものは自分でやればいい柳本 「メーカーに自分のデザインを買い上げてほしい」と思っているデザイナーは多いはず。海山さんも仲間から相談されて「自分でやってみれば?」と思うことはないですか?海山 ありますね。最近ではセルフでメーカー機能をもつデザイナーが増えていると思います。寺山紀彦さんをはじめ彼らのまわりのデザイナーは買い上げるメーカーの有無に関わらず、つくりたいものを自分でつくっています。自分ともスタンスが近いなと感じて仲良くなった経緯があります。ずっとメーカーと共同でデザインをしてきたデザイナーたちが「...
柳本浩市|第17回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(後編)
第17回 海山俊亮氏(MicroWorks)に「コミュニケーションツール」を聞く(後編)デザイナー海山俊亮さん(MicroWorks)を迎えての対談3回目。海山さんがつくるプロダクトは、デザインとコミュニケーションがバランスよく揃ったもの。“自分たちがつくりたいものをつくる”という意欲をもった80年代前後生まれのデザイナーの考え方に迫ります。Text by 柳本浩市CLASKAで発表した新ブランド「mass item」柳本 専門学校を卒業後に就職するという選択肢はなかったんですか?海山 親からのすすめもあって卒業後は留学を考えていたのですが、いろいろ事情があって断念することになりました。そのときは就職も考えましたが、自分自身の作品製作はずっとやりたいと思っていましたし、すでにそのころから「Jump Out Mirror」(2004)のデザインを進めていたので、とりあえずこれを形にしようと思いました。それから卒業した年に「東京デザイナーズブロック」(当時、秋に開催していたデザインイベ...
柳本浩市|第18回 熊谷彰博氏(ALEKOLE)に「プロダクト発想」をきく(前編)
第18回 熊谷彰博氏(ALEKOLE)に 「プロダクト発想」 をきく(前編) 1プロダクトデザイナーを迎えての対談企画、3人目のゲストは熊谷彰博さんです。オウプナーズでも商品発表などでたびたび登場し、若手でもとくにがんばっているデザイナーです。この世代のデザイナーのなかでもとくに会う機会が多い熊谷さんですが、実際彼のプライベートな部分はあまり聞いたことがないので、そのあたりを掘り下げてみたいと思います。Text by 柳本浩市ひとにきちんと伝えるために、グラフィックデザインに力を入れた柳本 僕のオウプナーズでの連載「How to see design」でお話をうかがった寺山紀彦さんと海山俊亮さんは、2000年以降の「droog design」に影響を受けているんですね。「droog design」(1993年に設立された、オランダ発のデザイン集団。リチャード・ハッテン、マルセル・ワンダース、ヘラ・ヨンゲリウスらオランダを代表するプロダクトデザイナーを輩出し、その後、ダッチデザインシ...
柳本浩市|第19回 熊谷彰博氏(ALEKOLE)に「プロダクト発想」をきく(後編)
第19回 熊谷彰博氏(ALEKOLE)に 「プロダクト発想」 をきく(後編)プロダクトデザイナーを迎えての対談企画、3人目のゲストは熊谷彰博さんです。後編は、彼のコミュニケーションのしかたや、フリーランスとしての考え方などを掘り下げます。Text by 柳本浩市iPodを見ながらのフランクな会話から生まれるコミュニケーション柳本 イベントに出かけては、やがてそこでの縁が仕事に繋がったというエピソードがありましたが、そこでなにを話しているのか……同業のデザイナーはすごく気になるところだと思いますが(笑)、熊谷さんはどのようにひととコミュニケーションをして、人脈を築いていったんですか?熊谷 特別人脈をつくろうとは思っていませんが(笑)。コミュニケーションのなかで、「どのようなものをつくっているか」という話題になったときは、iPodに残してある作品画像を見ていただく程度です。レセプションパーティーの会場では、照明が落としてあることも多いので、iPodの光にひとが寄ってくることもありますね...
連載・柳本浩市|第25回 植木明日子さんに「アイデアとプロダクトデザイン」をきく(前編)
第25回 植木明日子さんに 「アイデアとプロダクトデザイン」 をきく (前編)今回のゲストはプロダクトデザイナーの植木明日子さんです。大学院まで建築を学びながら、卒業後は文具ブランド「水縞」を立ち上げました。ある意味まったくちがう畑のようでいて、彼女のなかでどこが繋がっているのでしょうか? 建築的な思考がほかの分野へ展開が可能なのでしょうか? そんなことを考えながら、彼女との対話のなかで答えを探ってみたいと思います。Text by 柳本浩市「建築をやっていたらなんでもできるよ」というアドバイス柳本 もともと建築を学んでいらっしゃった植木さんが、ステーショナリーの世界へと足を踏み入れた経緯と、さらにさかのぼって幼少のころのエピソードもふくめてお話いただけますか?植木 父が建築を生業にしていまして、それにまつわる道具がかたわらにあるという環境で育ちました。当時の私にとっては父の道具は玩具同然で、物心ついたころには「ゆくゆくはなにかモノづくりの仕事に就きたい」と漠然と考えていました。しか...
連載・柳本浩市|第26回 植木明日子さんに「アイデアとプロダクトデザイン」をきく(後編)
第26回 植木明日子さんに 「アイデアとプロダクトデザイン」 をきく (後編)-1ゲストにプロダクトデザイナーの植木明日子さんを迎えた後編は、建築的な考え方をもってプロダクトをデザインしている彼女のモノづくりへのアプローチや、実際の生産背景、さらに今後の展望まで語っていただいた。Text by 柳本浩市いまは自分が手に触れることができる、1分の1のモノをつくっている柳本 大学時代に「すべてを包括するのが建築」という考え方を周囲の方々から聞かされてきたという植木さんですが、現在、ご自身でモノづくりをしていて、建築の考え方が応用できたところと、できなかったところ、そのふたつについて教えていただけますか?植木 いまでもモノづくりにおける「考え方の行程」は建築的だと思います。全体像をつくってから順を追ってつくっていく……自分のやり方になっていますね。いまの仕事に応用できなかったというか、あきらかにちがうなと感じるのは「スケール感」です。私が建築学生のとき、もっとも苦手だったのが縮尺の考え方...
連載・柳本浩市|第27回 中村裕介氏に「高橋理子」のマネージメントをきく(前編)
第27回 中村裕介氏に「高橋理子」のマネージメントをきく(前編)今回のインタビューは、株式会社ヒロコレッジの中村裕介さんです。「HIROCOLEDGE」といえば、OPENERSなどメディアでは高橋理子さんがおなじみですが、今回は彼女のサポートをしている中村さんをとおして、ブランドとデザインのマネージメント、そしてモノづくりの考え方を聞いてみたいと思います。Text by 柳本浩市中村氏の「紙」への思いとは?柳本 まず、中村さんというと「紙が好きな」イメージがあります。その理由と現在の仕事との繋がりを教えていただけますか?中村 とくに紙マニアというほどではないのですが……、私の実家は東京 墨田区にある製本工場で、特殊製本を得意としています。工場ではその当時、CDのライナーノーツやアパレルブランドのカタログなどを製作していて、それらが束になった光景を鮮明に覚えています。物心ついたころからたくさんの印刷物に囲まれた環境にいたので、紙は身近な存在だったかもしれません。当時、私はジョージ・ル...
連載・柳本浩市|第28回 中村裕介氏に「高橋理子」のマネージメントをきく(後編)
第28回 中村裕介氏に「高橋理子」のマネージメントをきく(後編)今回お招きしているのは、株式会社ヒロコレッジの中村裕介さん。今年も年初からインドでの「クール・ジャパン」に参加するなど、相変わらず精力的に活動されています。前編につづいて後編では、中村氏と高橋理子さんの潔いほどの“決意”に感銘を受けました。Text by YANAGIMOTO Koichiそれ以上でも、それ以下でもない、私の役目(中村裕介)柳本 対談の前編では、株式会社ヒロコレッジを設立してから2年間のお話を聞きました。当初は「事業をおこなう根本的な目的意識すら曖昧」だったとのことでしたが、その後、中村さん自身にとって「株式会社ヒロコレッジをやっていく意義」は見い出せましたか?中村 端的にいえば、高橋理子が掲げている「目的」に沿って、あらゆる可能性を探り、それを達成に導くことが私の役目ということになります。それ以上でも、それ以下でもないというか――私自身は取り立てて特殊な才能があるわけではないので、あくまでも高橋の可能...
連載・柳本浩市|第29回 角田陽太氏とデザイナーの役割についてもう一度考える
第29回 角田陽太氏とデザイナーの役割についてもう一度考える今回は、昨年秋独立したばかりの角田陽太さんです。バリバリのプロダクトデザイナーでありながら、彼の作品をみると、どこかアノニマスな雰囲気がただよっています。いわゆるデザインが売れにくく、民藝やクラフト的な道具に注目の集まるなか、デザインとはそもそも何なのかが知りたくて、そんなとき、対談相手として角田さんを頭に思い浮かべました。デザイナーの役割についてもう一度考えてみる。そんな話ができたと思います。Text by YANAGIMOTO Koichiなぜ、ロス・ラブグローブのところに行ったのか柳本 まずは角田さんがデザイナーになるまでの経緯を教えていただけますか?角田 東京の大学を卒業後にロンドンに渡り、「AZUMI」(2004年までロンドンを拠点に活動していたデザインオフィス)でアルバイトをしていました。そこで仕事のやり方を覚え、その後はロス・ラブグローブ(国際的な賞を受賞するなど世界的なデザイナーとして知られている)のもとで...
連載・柳本浩市|第32回 西澤明洋氏とブランディングデザインについて語る(前編)
柳本浩市×西澤明洋対談なぜ私がブランディングデザインの仕事をするようになったのか第32回 西澤明洋氏とブランディングデザインについて語る(前編)前回の田子さんのデザインマネジメントにつづき、今回は「ブランディングデザイン」というちょっと聞き慣れないお仕事をされている西澤明洋さんです。デザインを語る上で、ブランディングなど見えない部分も総合的に考えた計画が必要不可欠になっています。そんなブランディングデザインについて、西澤さんに詳しくお聞きし、デザイナーや組織がどう考えるべきかのヒントを探ってみたいと思います。Text by YANAGIMOTO Koichi「本当にこれからの分野なんです」(西澤)柳本 学生時代に建築を学んでいた西澤さんが、なぜブランディングデザインの道に進んだのか。その経緯をお聞かせ願えますか。西澤 わかりました。では今日は、なぜ私がブランディングデザインの仕事をするようになったのかと、ブランディングデザインの将来の話をしていこうと思います。普段はそういった話はあ...