谷川じゅんじ|連載 第6回「鎚起和器『月』」

谷川じゅんじ|連載 第6回「鎚起和器『月』」

第6回「鎚起和器『月』」(1)シャンパンメゾン「KRUG(クリュッグ)」のボトルクーラーを作ったのがきっかけで、新潟燕三条に工場を構える「鎚起銅器」の老舗、玉川堂と知り合った。クリュッグとの仕事を無事に終えたあと、「世界に燕三条の金属加工技術の粋を伝えられる作品を創ってみたい」。そんな相談を玉川堂7代目当主玉川さんからいただいたことが、「鎚起和器『月』」誕生の出発点になった。このプロジェクトに込めた思いや、アートピースとして取り扱うに至ったアプローチの方法について、いまここで改めて振り返ってみたいと思う。Text by TANIGAWA JunjiPhotographs by TSUTSUI Yoshiaki鎚起和器「月」誕生のきっかけから完成までの2年間の道のり「鎚起和器『月』は、絶えることのない月の満ち欠けをモチーフに、満月から半月、新月へと変わる月の姿をひとつの形に織り込んだ。夜空に浮かぶ月の満ち欠けは、太古の昔より世界各国の人びとの想像をかき立て、多くの物語を紡いできた。国...
谷川じゅんじ|連載 第4回「IMA CONCEPT STORE」

谷川じゅんじ|連載 第4回「IMA CONCEPT STORE」

第4回「IMA CONCEPT STORE」(1)今年3月に誕生した「IMA CONCEPT STORE」。六本木のAXISビルに位置するこの場所は、写真雑誌『IMA』やウェブサイト『IMA ONLINE』を展開するamanaのIMAメディアプロジェクトが、アートフォトを楽しむリアルな場として手がけたもの。もともとAXIS好きなぼくにとって、このビルは東京の定点ポイント。だから「AXISの3階に写真のためのあたらしい施設を作りたい」という依頼を聞いたとき、素直にとてもワクワクした。あそこになにがあったらいいだろう。自分の居場所に飾りたくなる写真、毎日飲める珈琲、こだわりセレクトの書籍、気の利いた小物……。そんな“あったらいいな”をあれこれ妄想。AXISビルファンの自分視点も取り入れながら、みんなで話し合って生まれた「IMA CONCEPT STORE」。この空間に込めた自分の考えや思いを、改めて振り返ってみたいと思う。Text by TANIGAWA JunjiPhotograph...
谷川じゅんじ|連載 第5回「デルヴォー ギャラリー」

谷川じゅんじ|連載 第5回「デルヴォー ギャラリー」

第5回「デルヴォー ギャラリー」(1)今年8月、表参道の「GYRE(ジャイル)」1階に世界最古のラグジュアリーレザーブランド「Delvaux(デルヴォー)」旗艦店がオープンした。今回はオープンに先駆けて開催した期間限定プロジェクト「Delvaux Gallery(デルヴォー ギャラリー)」を紹介したいと思う。ファンタジーとウィットに溢れた空間は、ブリュッセルにあるデルヴォーのアトリエ(工房)がモチーフ。歴史と伝統に裏付けられた確かな品質と、ときに型破りなデザインで世間をアッといわせる遊び心。そんな唯一無二の世界観を東京に表現してみせた。185年という気の遠くなるような時間を旅する場所。それが「デルヴォー ギャラリー」だ。Text by TANIGAWA JunjiPhotographs by KOZO TAKAYAMA言葉を超えたブランド世界を空間に表現8月末、ジャイルの1階に「デルヴォー」の旗艦店ができた。白亜の美しいブティックは、1829年にベルギー・ブリュッセルで誕生した世界...
谷川じゅんじ|連載 第2回「薬師寺ひかり絵巻」

谷川じゅんじ|連載 第2回「薬師寺ひかり絵巻」

第2回「薬師寺ひかり絵巻」(1)2010年6月奈良県西の京。あれから2年になる。いまも、記憶の中でいきいきと瞬く1500万を超える星たち。静寂と古(いにしえ)の響きが奏でる荘厳な時空絵巻。平城遷都1300年祭記念「薬師寺ひかり絵巻」は、1300年を超え、いまも私達になにかを伝え続ける奈良薬師寺でおこなわれた特別な出来事。決して忘れることのできないあの空間を、いまだからこそ、もう一度振り返ってみようとおもう。Text by TANIGAWA JunjiPhotographs by SHIGEMOTO Takashi~薬師寺ひかり絵巻企画縁起~幼いころ、こんな言葉を聞きました。  かたよらないこころ  こだわらないこころ  とらわれないこころ  ひろく ひろく もっとひろく  これが般若心経 空(くう)のこころなり薬師寺元管主、高田好胤さんのことばです。時は流れ2010年。奈良は遷都1300年を迎えました。気の遠くなるような時を経て今日も生き続ける「薬師寺」という場所が何を人々に伝え続...
谷川じゅんじ|新連載 第1回「Power People by Leslie Kee」

谷川じゅんじ|新連載 第1回「Power People by Leslie Kee」

第1回「Power People by Leslie Kee」急ぎ足の雑踏。イエローキャブの重なるクラクション。吹き上げる蒸気。ファッション、カルチャー、エンタテインメント。時代の発信地としていまなお多くの人びとを魅了して止まない街、ニューヨーク。そんな街のポテンシャルを生み出し時代をつくりつづけている人がいる。“Power People”――フォトグラファー、レスリー・キーは彼らをこう呼び、彼らを被写体として作品に刻み込んだ。その作品を一同に集めはじめて展示する写真展が、去る2月16日から27日まで西武渋谷店で開催された。その空間構成を通じて感じたいまの気分をここに記そうとおもう。Text by TANIGAWA JunjiPhotographs by JAMANDFIXレスリーとの初仕事は2006年。表参道ヒルズで開催された『Super Stars』という写真展だった。“ASIA IS ONE(アジアはひとつ)”というサブテーマを掲げたこの写真展はスマトラ沖地震のチャリティーと...
ART
谷川じゅんじ|連載 第3回「感性 kansei -Japan Design Exhibition- 」

谷川じゅんじ|連載 第3回「感性 kansei -Japan Design Exhibition- 」

第3回「感性 kansei –Japan Design Exhibition– 」(1)もう一度見たい空間がありますか? そう問われると、決まってあの空間のことが頭に浮かぶ。2008年にパリで開催された展覧会「感性 kansei –Japan Design Exhibition– 」だ。いまのタイミングだからこそもう一度再編してみたい。もっと言うなら、あの空間体験を日本の人たちにこそ体感してもらいたい。そう思える稀有なプログラムで、日本のものづくりの面白さや奥深さを、じつにシンプルかつスタイリッシュに空間化できたすばらしい展覧会であった。Text by TANIGAWA JunjiPhotographs by MATSUI Koichiroこの展覧会は「未来感性」「歴史感性」「現在感性」という3つのゾーンで構成。シンメトリカルに3室が並ぶ展示会場を使い展覧会を組み立てていった。ルネサンス様式の壮麗な中央展示ホール“nef”には、「歴史感性」を展示。インスタレーション型の空間表現で日...
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