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イラストレーターとパリの五月(8・最終回)=作品を見る

イラストレーターとパリの五月(8・最終回)=作品を見る

「イラストレーターとパリの五月」(8)九重加奈子さんと作品を見るさて、ここで話を一段落させて、加奈子さんの作品を見せていただいた。重厚な黒の革の表紙をもったフォルダに可愛らしいイラストが収まっている。かっこいいフォルダだと思って、聞いてみたら、本人は「これ重くて不便なんですよね。」とのこと。interview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(7)=フランスの食の話「サーカス」まっすぐなものを描くのが苦手なんです「これはハワイから帰ってから日本で描いたんですけれど、ハワイ後ですね。これはフィンランド。これはパリですね。」― これはサーカスを見て描いたんですか。「この近所に、シルク・ディヴェールっていうサーカスがあって、それを見に行ったあとに描いたんです。すごいいいですよ、クラシックで。いかにもサーカスらしい。丸い赤い舞台で。」― 本当にこういう舞台なんですね。動物もこういうのがいるんですか。「いました。ほかにも虎とか熊もいたかな。」― この...
イラストレーターとパリの五月 番外編「新しいことはいいこと、なのか。」(1)

イラストレーターとパリの五月 番外編「新しいことはいいこと、なのか。」(1)

イラストレーターとパリの五月(番外編)新しいことはいいこと、なのか。(1)新旧論争というのがありまして、現代人と古代人とか、文明人と野蛮人とかを比較してみて、やれどちらの方が進歩しているの、どちらの方が賢いの、どちらの方が歌がうまいのとやる論争なわけですが、17世紀あたりからヨーロッパでは非常に流行しました。聞くところによると、江戸時代の日本人は物をとっても大事にしていたのだそうで、茶碗が割れたり、服が破れたりすると、それで捨ててしまったりはしないで、ちゃんと修繕して、もしも修繕できないときは別の形でもって再利用してとやっていたそうですが、そういう話を茶碗を割ってしまったり、服が傷んで、そのうえ、流行おくれになってしまったと思ったりした時に、ふと思い出したりもするわけです。江戸時代ならよかったのになぁ、などと思うと、それは自分ひとりで論争というのも大げさですが、江戸時代に生きたこともないのに、昔はよかったなぁ、程度には思うものですが、しかし、じゃあ本当に、今から江戸時代に暮らせれば...
イラストレーターとパリの五月 番外編「新しいことはいいこと、なのか。」(2)

イラストレーターとパリの五月 番外編「新しいことはいいこと、なのか。」(2)

イラストレーターとパリの五月(番外編)新しいことはいいこと、なのか。(2)interview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月 番外編「新しいことはいいこと、なのか。」(1)1900年パリ万国博覧会のメイン会場として建設されたグラン・パレ。当時「フランスが世界に誇れるフランス芸術の栄光に向けたパレスが誕生した」といわれた。コスモポリタンなコンスタンタン・ギースボードレールは芸術家についてこんなことを言っています。「芸術家というのはつまり、専門家だ。農奴が耕地に縛りつけられているなら、芸術家は自分のパレットに縛りつけられている」「ブレダ界隈に住んでいながら、川向こうのフォーブール・サン=ジェルマンで起きていることを知らないのだ。名前を挙げるまでもない2、3人を除けば、いまやもう、芸術家というのは手先が器用なろくでなし、日雇い労働者、村の知恵者、集落の頭脳といったところで、そんなのだから話題も限られて当然……」とまあ、えらいいいようです。それと...
イラストレーターとパリの五月(1)=フィンランドの話

イラストレーターとパリの五月(1)=フィンランドの話

「イラストレーターとパリの五月」(1)九重加奈子さんにフィンランドの話を聞く九重加奈子さんは、以前登場してもらった白川順子さんのお友達で、レピュブリック界隈に住み、イラストレーターとして活躍している。今回はそのレピュブリックそばのカフェでお話を伺った。パリは最近ずいぶんと暑く、春を飛ばして夏が来てしまったかのようだが、新緑と陽光を楽しもうということなのか、フランスの人たちはカフェの軒先の席で、飛び交うアカシア花粉にもまけず、のんびりとした昼食を楽しんでいる。僕たちは、すっかり空いている店内の、ちょっと奥まった席に座った。彼女のホームページで知ったのだが、東京出身の加奈子さんはフランスに来る前にも、いくつかの国に住んだ経験があるようだ。まずはそのあたりから。interview&text by SUZUKI Fumihikoフィンランド、ハワイ、日本、パリ― ホームページ、見させていただきました。あれ、アメリカのページなんですか?※九重加奈子さんのホームページhttp://www.ge...
イラストレーターとパリの五月(7)=フランスの食の話

イラストレーターとパリの五月(7)=フランスの食の話

「イラストレーターとパリの五月」(7)九重加奈子さんにフランスの食の話を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(6)=パリの話色々な意味で刺激的な場所― フランスで好きな食べ物ってありますか「鴨が好きです。お菓子もそんなに食べるほうじゃなかったんですけれど、おいしいから。」― ご飯は普段は作っているんですか。「ほとんど外で食べていて、家では本当に簡単なものしかつくらないですね。カフェにいったり、フォー屋さんにいったり、タイ料理とか。」― このあたりで、ですか。「このあたりで、です。そういうお店が多いし。」― オススメのお店は?「サンマルタン運河ぞいにおいしいカンボジア料理屋さんがあって。」― Cambodge(カンボッジュ)ですね。僕もこの週末、行くつもりなんです。「早めに行ったほうがいいですよ。いつも並んでるから。あと、フォーは嬉しいですよね、身体にやさしいし。私はよくベルヴィルに食べにいくんですけれど。このあたりもすご...
イラストレーターとパリの五月(6)=パリの話

イラストレーターとパリの五月(6)=パリの話

「イラストレーターとパリの五月」(6)九重加奈子さんにパリの話を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(5)=美術の話加奈子さんの部屋南向きの、日当たりのいい部屋― これから、どれくらいの時間をパリにいるつもりなんですか。「ワーホリで来た人はフランスにまた戻ってくるっていうのが定説だとか……」― 今、5月じゃないですか。この季節がパリは一番いいっていいますよね。「この季節をもう一度見たくて、パリに戻ってきちゃったみたいなところがあります。」― 今年は季節がちょっと前倒しっぽいですけれど。「前倒しっぽい。どうなっちゃうんだろう、これから。このまま暑くなるとちょっときつい。」九重加奈子さん― 花粉症みたいな人も今年は多いなと思うんです。「私も今年おかしいんですよ。日本にいたときほどひどくはないんですけれど。」― アカシアにやられたりする人、結構いるみたいですよ。「でもクーラーがなくて窓を開けないわけにはいかない生活だから大変で...
イラストレーターとパリの五月(5)=美術の話

イラストレーターとパリの五月(5)=美術の話

「イラストレーターとパリの五月」(5)九重加奈子さんに美術の話を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(4)=フランスでの仕事と生活重厚な絵より、イラストレーションに近いようなものが好き― 日本って東京ですよね。「ええ、自由が丘っていう町で、可愛いお店が沢山あって、そういうところはフランスを出来るだけコピーするっていうスタイルのところが多くて。私もハガキをもっていって売り込んでみたりしたんですけれど、……フランスに行ったことがない人もたくさんいると思うのに、みんなフランスの空気をもっている。すごいインパクトだなと思いました。」― 絵葉書の話は上手くいったんですか?「うーん。単価が小さいので商売にするのは色々と難しいらしいです。みんな、ハガキを書かないようになりましたよね。フランスに来て、やっぱり美術館にちょっといくと、すぐにすごい絵がいつでも見られるように掛かっているのも、こういうことなんだなぁって思いました。あ、ルーブル...
イラストレーターとパリの五月(4)=フランスでの仕事と生活

イラストレーターとパリの五月(4)=フランスでの仕事と生活

「イラストレーターとパリの五月」(4)九重加奈子さんにフランスでの仕事と生活の話を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(3)=フランスに来た理由フランスは最初の想像通り、重い国でしたか?― お仕事は、ホームページを見ると、本の挿絵が多いみたいですね。「最初にやった仕事が語学参考書の挿絵だったので、芋づる式にそういう仕事が入ってきて、今も多いですね。子供向けの実用書とか、参考書とか、広告も時々やったり。」― 広告というのは?「新聞の折り込みのアパートの広告とか、食品の広告とか漢方薬のパッケージとか。」― それは依頼してきた側から細かく指示があるんですか。「向こうからかなり細かい指示が来る場合もあって。でも、ずっとクリエイティブなものをやっていくのもしんどいとおもって。時々、大まかなテーマがあっても自由にできるのがあって。例えば表紙の絵とか。」― フランスで仕事を貰うっていうことはあるんですか。「今、フランスの作家の人が書い...
イラストレーターとパリの五月(3)=フランスに来た理由

イラストレーターとパリの五月(3)=フランスに来た理由

「イラストレーターとパリの五月」(3)九重加奈子さんにフランスに来た理由を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(2)=フィンランドとハワイの話ご飯が美味しくて、歴史と文化がある重い国へ― それからフランスへきたわけですね。「ええ。フランスっていうのは消去法でワーキング・ホリデー・ビザが使える国を探したんです。」― ニュージーランドとかオーストラリアとか、そういうところはすごくビザが取りやすいっていいますけれど、それは選択肢にはいらなかったんですか。「フィンランド、ハワイといて、どっちものぺっとしたところで、今度はご飯が美味しくて、歴史と文化がある重い国がいいなとおもったんです。だからオーストラリアとかニュージーランドは選択肢に入らなかったですね。」― ほかに候補に挙がった国はありましたか。「そうするとヨーロッパって思ったんですけれど、イギリスはもう年齢制限を越えていて、ドイツは……ご飯の点でちょっと。フランスの方が楽しそ...
イラストレーターとパリの五月(2)=フィンランドとハワイの話

イラストレーターとパリの五月(2)=フィンランドとハワイの話

「イラストレーターとパリの五月」(2)九重加奈子さんにフィンランドとハワイの話を聞くinterview&text by SUZUKI Fumihikoイラストレーターとパリの五月(1)=フィンランドの話ハワイの絵は、ハワイ的フィンランドで有名な画家っていますか?ロッタちゃんがその辺だったような……「ロッタちゃんは隣のスウェーデンですね。ムーミンがフィンランドです。ムーミンの原画の美術館があって。あの人はムーミンを描く前に政治新聞の風刺漫画なんかをやっていたらしいんです。それがすごくよかったです。」― 冬の間はみんな何をしているんですか。「クロスカントリースキーとか、あとは……映画いったり、友達のうちにいったり。」― スキー、やりましたか。「やりました。海も全部凍っちゃうので、海の上でも出来るんです。毎週いってましたね。」― そんなにいつも雪が降っているんですか。「はい。でも寒すぎてあんまり積もらないんです。飛ばされちゃって。少し暖かくなると積もるんです。」― 夏はどうなんですか。「...
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