イラストレーターとパリの五月(4)=フランスでの仕事と生活
「イラストレーターとパリの五月」(4)
九重加奈子さんにフランスでの仕事と生活の話を聞く
interview&text by SUZUKI Fumihiko
フランスは最初の想像通り、重い国でしたか?
― お仕事は、ホームページを見ると、本の挿絵が多いみたいですね。
「最初にやった仕事が語学参考書の挿絵だったので、芋づる式にそういう仕事が入ってきて、今も多いですね。子供向けの実用書とか、参考書とか、広告も時々やったり。」
― 広告というのは?
「新聞の折り込みのアパートの広告とか、食品の広告とか漢方薬のパッケージとか。」
― それは依頼してきた側から細かく指示があるんですか。
「向こうからかなり細かい指示が来る場合もあって。でも、ずっとクリエイティブなものをやっていくのもしんどいとおもって。時々、大まかなテーマがあっても自由にできるのがあって。例えば表紙の絵とか。」
― フランスで仕事を貰うっていうことはあるんですか。
「今、フランスの作家の人が書いた、子供向けの話にイラストをつけて絵本を作るっていう仕事があって、それを、10社くらい出版社に送って返事を待っているところなんですけれど、それが形になるといいなと思ってます。」
― その人とはどうやって知り合ったんですか。
「友達のイラストレーターのそのまた友達で。普段は官能小説を書いている人らしいですよ。私の絵を見て、子供向けの本の話を持ち出してくれて、それから、書いてくれたんです。」
― 官能小説って巷では見かけないですが……
「それ専門の出版社があって、専門の書店もあるらしいですよ。」
― そうだったんですか。フランスってそうやって人づてに仕事が来るっていう話が多いように思います。
「逆にいうとそうじゃないと難しいんじゃないですかね。」
― お話を聞く限り順調そうですが、パリの生活は面倒だったりしませんか。
「めんどくさいですね、でも私があんまり時間に追われた生活をしていないので色々なことに時間がかかってもそんなに迷惑をこうむったりはしないので、それが面白いなと思える暇がある。みんなゆったり暮らしている感じがするし。ひとつのものを探して4軒くらいお店を回ったりすることはあるけれど。不便なことも楽しんでいる感じです。それほどの大事件もまだ起きてないし。一回、仕事で描いたイラストを速達で郵便局から送って行方不明になったことがあって、その時は胃が痛くなりましたけれど。その時は、時間があって描き直すことが出来たからよかったんですけれど、本当に一回一回緊張していますね。」
― どこかに不安が付きまとう、フランス郵便事情ですね。それで、フランスは最初の想像通り、重い国でしたか。
「ええ。やっぱりファインランドとかハワイみたいなところは自分たちが弱小国だって思っているというか、そうはいってもハワイは特殊ですけれど、謙虚さみたいな、そそとしたものがあって、それと比べてフランスはフランスだぞっていう自信を感じるし、日本にこの前一時帰国したときに、日本人のフランスに対する憧れが町中にあふれている感じがして、やっぱりフランスは特殊な国だなって思いました。」
※九重加奈子さんのホームページ
http://www.geocities.com/kanakoinhawaii/