フットボール星人の話

ニックを捕まえてみろ(1)ニックを知っているかい?

ニックを捕まえてみろ(1)ニックを知っているかい?

ニックを捕まえてみろ(Catch Nick if you can)その1 ニックを知っているかい?タイトルニック・リーソンって知ってるかい? そんな名前をいわれたって誰かと思うだろう? だけど知っているはずさ。すぐに思い出すんじゃないかな。ブレット・イーストン・エリスの小説から出てきたみたいなヤツだよ。いまやニック・リーソンはアイルランドD2クラブ、ゴルウェイ・ユナイテッドFCのマネージャー。イギリスでも最高に有名な銀行のひとつを倒産させておいてこれだ。text by Brieux Férottranslation by SUZUKI Fumihikoユアン・マクレガーが演じたアイツ『ニックはいないよ。香港へ出張に行ったんだ』ゴルウェイ・ユナイテッドFCの電話担当は眉ひとつ動かさないでそういった。「しかしなんだって、アイルランドD2クラブのジェネラル・マネージャーなんていう偉い人物が、わざわざアジアにまで仕事にいかなきゃならないんだ」って?じつは、ニック・リーソンはアジアに詳しいん...
ニックを捕まえてみろ(2)成功の奥の仮面

ニックを捕まえてみろ(2)成功の奥の仮面

ニックを捕まえてみろ(Catch Nick if you can)その2 成功の奥の仮面ニックは業績を上げながら、つくってしまった架空口座。そして膨れあがる損失総額。さらに隠し通し続ける不正。そうして世界でも有数のトレーダーとして名を馳せる。text by Brieux Férottranslation by SUZUKI Fumihiko架空口座:88888Back-officeとFront-officeのResponsable(責任者)ニック・リーソン。彼は自らの取引に自分で許可を出しはじめ、徐々に余裕を失っていった。ニックはコンピュータをいじって特殊な架空口座を作る。この口座には、中国の縁起のよい数字にあやかって、88888という番号が与えられた。幻の口座を使って、ニックはあらゆるものを即座に隠蔽するようになる。まずは部下の作った4万ドルの負債を、次はそれよりもさらに大きな損失を……誰にもバレないように……。プラスに転じないまでも、せめてなんとか始末をつけようとニックが日々、...
ニックを捕まえてみろ(3)木っ端微塵になったニック

ニックを捕まえてみろ(3)木っ端微塵になったニック

ニックを捕まえてみろ(Catch Nick if you can)その3 木っ端微塵になったニック成功のための賭け、3日後の悪夢。そして目にしたベアリングズ銀行破産……。隠蔽されていた損失の総額は13億ドル。ニックは追われる身となった。text by Brieux Férottranslation by SUZUKI Fumihikoウォールストリート・ジャーナルの一面を飾る運命の一号が出る1ヶ月前、妻、リサの流産の直後のこと、ニックは阪神淡路大震災にすべてを賭ける決意を固めた。『まさにマーケットが動くタイミングだったんだ』。あらゆる金融商品が買い取り手を探していた。そしてニックはそれらを最安値で買い取った。他のトレイダーたちが被災した同僚や親類縁者を心配している間に……ニックは半ば祈るような思いで、マーケットが再び上向き、ポンドが山となって舞い込むのを夢見た。しかし、3日後に彼を襲ったのは悪夢だった。ニックには「売り」の暇もなかった。日経(平均株価)は1000ポイント以上の急落。...
ニックを捕まえてみろ(4)新しい挑戦

ニックを捕まえてみろ(4)新しい挑戦

ニックを捕まえてみろ(Catch Nick if you can)その4 新しい挑戦出所して舞い込むさまざまなオファー。たとえば、講演のタイトルは『ストレス管理法』。そうして出会ったのが“求む! コマーシャル・マネージャー”。ニックは自分がサッカーを好きだったことを思い出した。text by Brieux Férottranslation by SUZUKI Fumihiko出所からゴルウェイ・フットボールクラブまでの道のり2000年。刑務所から出所するとニックはロンドンに戻った。そして、大学の心理学科一年目に登録して、それまでのことを忘れようとしていた……とはいうものの、彼は幾つかの地元ラジオ局の取材を受けている。ニックへの質問の中には中々シュールなものも混じっていた。『すごい奴もいた。コイツはワットフォードの私の両親の家を買ったというんだ。庭を掘り返したら埋蔵金が出てくるはずだと思っていたらしい。ピクショナリ(カードゲーム)のCMに出ないかっていう話もあった。私が銀行をだまし取...
ニックを捕まえてみろ(5)かくれんぼは、続く

ニックを捕まえてみろ(5)かくれんぼは、続く

ニックを捕まえてみろ(Catch Nick if you can)その5 かくれんぼは、続くいまはまだマイナーな、ゴルウェイ・ユナイテッドだが、ニックのアイデアはサポーターにも魅力的だ。text by Brieux Férottranslation by SUZUKI Fumihikoゴルウェイ会員になってマンチェスター・ユナイテッドを見に行こう!会員(一年間フリーパスを持っている会員)数600名、テリーランド・パークを本拠地とするこのチームをアイルランドサッカー界の主役に押し上げるべく、ニックは基金を立ち上げ、スポンサーを集めた。さらに、数週間のうちに、彼はスタジアムを巨大なイベント会場へと変える。コンサート、地元セレブのショー、ロト、試合後の馬術競技会、ダンスパーティ……あらゆることをスタジアムでやった。勢いにのるニックは、会員特典も多様化させる。ゴルウェイキャッププレゼント、フィールドへのアクセス許可、スポンサー提供のビュッフェにご招待、果てはレプリカユニフォームセットをプレ...
5 件