東京、南青山某所に集う ファッションの手練たち
FASHION / NEWS
2015年3月11日

東京、南青山某所に集う ファッションの手練たち

Liquor,woman&tears 小木基史×大久保篤志
ファッションの手練、東京南青山に集う

スタイリスト界の重鎮、大久保篤志さんと、Liquor,woman&tears(リカー、ウーマン&ティアーズ)の小木基史さんが、東京南青山にある同ブランドのショップで語り合った、スーツスタイルの最も旬なカタチとは?

写真=山下亮一

デイリースーツのススメ

ユナイテッドアローズのグループであるということが、ある意味で意外な気もする異色の存在、「Liquor, woman & tears」。かなりくせのあるブランド構成ながら、熱狂的な支持者を多くもつこのショップは、そのセレクションの妙に業界内部からも注目を集めている。

そしてその一翼を担っているのが、スタイリスト大久保篤志さんが手がける気鋭のブランド、「The Stylist Japan®」。世代を超えて通じあう大久保さんとLiquor, woman & tearsのディレクター小木基史さんが語り合う「スーツ」にまつわる話あれこれ。まずはThe Stylist Japan発足のいきさつから。

大久保 とにかく、クソ分厚いボタンダウンのシャツが欲しかった。ブルックス・ブラザースだとでっかいし生地も薄い。だったらとにかく分厚いオックスフォードのボタンダウンをつくりたい、そう思ったのがいちばん最初です。

小木 先日も某誌の編集者がThe Stylist Japanの白のボタンダウンシャツを買ってくれたんですけど、コレクションで出かけた先のパリで、いろいろな人から聞かれたらしいんです。たとえばマイケル・タピアからは「何だ、そのボタンダウンシャツは!?」って。

大久保 ボタンダウンのシャツをつくったあとに、「今度はスーツを」、となったんだけど、デイリーウェア――毎日着れるものがいいと。でもスーツでは考えられないような生地にしてみたり、パンツはベン・デイヴィスかディッキーズしか穿かないから、そういうのがいいなぁ、と思ってみたり。そんなのあるわけないな(笑)。
あるわけないと思って、生地を探してもらったら、いちばん最初にカツラギ(葛城織、木綿の綾織物)のものすごく厚いヤツで、「鬼カツラギ」っていう、鬼がアタマにつくくらいの生地を用意してもらえて(笑)。だったら、コレはあり得ないくらいにキチッとつくらないと面白くないと思って、日本有数の縫製工場にお願いしました。でも鬼のように厚いカツラギは、ミシンの針が折れて折れて(笑)。工場はもう二度とやりたくない、って(笑)。
でも「鬼カツラギ」のスーツはすごく評判がよかったんだよね。

――人気アイテムはそのごも次々に生みだされた

大久保 次にどうしてもやりたかったのが、ラングラーのスタプレ(注)の生地を使ったスーツ。これぞ夏場のデイリーウェア。しわにならないし。
そのときは夏だったからシアサッカーのスーツが流行っていた。でもシアサッカーよりはヒッコリーストライプだと思って、ヒッコリーのスーツで使えるギリギリの、ホントに薄い生地でスーツをつくりました。ちなみに僕はピンクを持ってますけど派手ですよ(笑)。

――大久保さんはこの日も絶妙な味わいのシャツを身につけていた

大久保 シャンブレーのシャツは絶対はずせない。これだとプッチのタイを締めてもいやらしくならない。シャンブレーのシャツでボタンダウンっていうところがいい。

――さまざまなブランドと客とのあいだをつなぐショップという立場にとってThe Stylist Japanは、そして、小木さんにとって大久保さんはどういう存在なのか

小木 ユナイテッドアローズのプレスルームで大久保さんを見かけていたころから、「カッコいいなあ」って思ってました。イヤらしさがあるのがすごくポイントだと思うんですよ(笑)。

大久保 イヤらしさがにじみ出るんだよね(笑)。

小木 大久保さんはこれまでにいろいろな洋服を着てきて、それを若い人にわかりやすく伝えてあげようとしている……、そういう目線なのかな、と。それはThe Stylist Japanもおなじで、いままでは若い人たちが「踏み込める」ようなスーツがなかった。そういうものを取り上げてくれる、兄貴的な存在というふうに感じましたね。

大久保 いかに混ぜていくかだよね。カッコよく。でもそれが難しいんだよ(笑)。

小木 R&Bやヒップホップといった「ブラックミュージック」を根底に、クラシックなものやデザイナーズをストリートなテイストとミックスする――Liquor,woman&tearsのテーマです。

――じっさい若い人たちにとってのスーツは、社会人が仕事着として着るスーツとはもうはっきりと意味合いが違う。

大久保 デイリースーツ。毎日スーツでいたい!っていうね。肘も出ちゃって袖にもしわが寄って膝も出ちゃってる。ポケットにもモノがいっぱい入ってて膨らんでる、みたいな。なんか若干の生活感が出ているような。そういう感じのスーツが何となく自分なりにはベストなんです。

――でもそのスーツは日本有数の縫製工場で仕立てられている。元はちゃんとしていなければイヤなのだ。

大久保 キレイにできてるんだよ、これが(笑)。

(注)スタプレ/スタップレス
60年代後半~70年代前半につくられたコットンとポリエステル混紡素材の、通称スタプレシリーズ。当時アイロン要らずのパンツとして多くの人々に親しまれた。

小木基史さん
ユナイテッドアローズのメンズプレスを経て、2006年9月1日に南青山にLiquor,woman&tearsをオープン。現在ディレクターを務める。
同ブランドの2008年春夏のテーマは『クラバーチルドレン』。
70年代のフラワーチルドレンの精神を尊重しながら洋服にこだわり、
クラブなどで音楽を楽しむようなスタイルを提案していく。

大久保篤志さん
1955年、北海道生まれ。文化服装学院を中退アパレルメーカー勤務ののち、平凡出版(現マガジンハウス)の『POPEYE』、『an an』のスタイリストとして活動をスタート。1981年以降は、フリーとしてCF、ポスターなど広告のスタイリングを中心に活躍。現在はミュージシャンや俳優のスタイリングをはじめ、PVやステージ衣装に至るまで幅広く活動している。


Liquor,woman&tearsはウェブショッピングマガジン「ルモアズ」
でお買い求めいただけます。

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