Salvatore Ferragamo|靴づくりに息づくトップメゾンの矜持
FASHION / MEN
2015年3月6日

Salvatore Ferragamo|靴づくりに息づくトップメゾンの矜持

サルヴァトーレ フェラガモ|Salvatore Ferragamo

創業者の意思が息づくシューズコレクション

靴づくりに息づくトップメゾンの矜持

先頃、まったくあたらしいコンセプトのシューズコレクション「フェラガモ・ワールド」を発表したばかりのラグジュアリーメゾン、サルヴァトーレ フェラガモ。そのさいに来日したメンズレザーグッズプロダクトディレクター、ハビエ・スアレス氏と、日本を代表するバレエダンサーが、サルヴァトーレ フェラガモの靴やバレエについて対談した。まずは 第一部でサルヴァトーレ フェラガモのメンズシューズの概要をハビエ・スアレス氏から学び、そしてそれをふまえつつ第二部で対談を楽しんでいただこう。

写真=池田佳史(BOIL)文(インタビュー)=池田保行(04)文=OPENERS

第一部 サルヴァトーレ フェラガモのメンズシューズの現在進行形

サルヴァトーレ フェラガモのメンズシューズには、基本5種類のカテゴリーが存在する。それがTRAMEZZA(トラメッザ)、ORIGINALE(オリジナーレ)、 STUDIO(ステューディオ)、TUBOLARE(トゥボラーレ)そして、FREEDOM(フリーダム)の5つである。すべてにおいて上質な素材を用い、徹底した品質管理のもと靴づくりがおこなわれている。なかでもトラメッザは最高級に位置付けられ、堅牢なつくりでソールに耐久性がありかつ抜群のはき心地をもつ。

まず最高級に位置するトラメッザから説明しよう。特徴的なのがソールとアッパーを、ウェルトで縫い合わせるステッチド・ウェルティング構造である。ウェルトとはアッパーと底革を縫い合わせる工程でつかわれる、細長いテープ状の革のことをさす。このステッチド・ウェルティング構造は、三層構造になっているため、柔軟性に富み自然に足になじむ。靴の基本的なつくりといってよく、サルヴァトーレ フェラガモの伝統的な技法である。

「この技法は、昔からイタリアでは一般的な技法で、じつは婦人靴にもこの技法が用いられていました。それを原点回帰的に復活させ、メンズのトラメッザに取り入れたのです」(ハビエ氏)。

シャンク(土踏まずを支え、歩くときの衝撃を吸収する縦長のパーツ)には、通常のはがねにくわえ木製のものを併用することで、返りのしなやかさを生んでいるのも緻密なところ。そしてトラメッザの特徴として特筆しておきたいのが、ミッドソールのつくりである。

「トラメッザという名前は、in between(中間)にあたるイタリア語に由来します」とハビエ氏。英国靴などにおいて、通常、中底にあたる部分は粉砕コルクで固める。だがサルヴァトーレフェラガモでは、アッパーとアウトソールの“中間”に厚めのソフトな一枚革を挟みこみ、いわゆるミッドソールをくわえることで高い保型性能と通気性、そして快適なはき心地を確保している。

「コルクより革のほうが、自然にはく者の足の形状にフレキシブルになじみやすいのです。トラメッザでなければ体験できないはき心地です。トラメッザにおいてこの革は、一番大切なピースといっていいでしょう」(ハビエ氏)。これらが一体となり、サルヴァトーレ フェラガモの真髄を堪能できる最高級ライン、トラメッザはつくりあげられるのである。「靴づくりではもっとも優れた技法だと考えています。はき心地の決め手は、名前のとおり中間に厚い革を用いていることなのです」(ハビエ氏)。メイド・トゥ・オーダーでぜひその真価を体感してほしい。

もちろんほかのラインも高い品質を誇る。オリジナーレは軽い履き心地を体現するため、マッケイ製法をとり入れている。素材の品質と、サルヴァトーレ フェラガモが擁するアルチザンの手業が堪能できるシリーズである。「いわゆるマッケイ製法ですが、サルヴァトーレ フェラガモならではといえる、マッケイのつくりの軽さに合わせ薄い革のミッドソールにしてあります。そのため“オリジナーレ(オリジナル)”とよんでいます」(ハビエ氏)。ブレイク・ソーイング・マシンを用い、靴底の厚みに小さな刃を差し込んでつけたくぼみに沿って、おこなうチャネルステッチを採用してある。

ステューディオはソールとアッパーを特殊なプレスを用いて接合される、セメント製法のライン。現在、ウィメンズのシューズは、おもにこの製法が取り入れられている。最新ハイテク技術やエンジニアリングの利点と、熟練職人の手仕事を融合してあるシリーズである。トゥボラーレはほかのシューズとは異なる製法でつくられている。それはモカシンタイプなどに用いられるものだ。フリーダムは、フェラガモ のスニーカータイプに採用されるラインだ。

どのカテゴリーもサルヴァトーレ フェラガモらしい、こだわりに満ちている。
現在はトータルブランドに成長したサルヴァトーレ フェラガモだが、その出自は靴職人である。そのことを象徴するようなハビエ氏の靴に対する情熱的なお話は、サルヴァトーレ フェラガモの深いこだわりを感じさせてくれた。

第二部 ハビエ・スアレス×宮尾俊太郎
若きソリストに贈りたい靴

「フェラガモ・ワールド」のレセプションに合わせ、来日したフェラガモUSA副社長兼メンズレザーグッズプロダクトディレクター、ハビエ・スアレス氏。彼は行く先ざきの国で、文化人やアーティストとの語らいを楽しみにしているという。今回の来日にあたり、レセプションに招かれていたバレエダンサー、宮尾俊太郎氏との対談という機会を得た。足という共通項をもつ二人の創造者の話は、自然に靴へとおよんだ。

ハビエ・スアレス(以下ハビエ) ロベルト・ボッレをご存知ですか?

宮尾俊太郎(以下宮尾) ミラノ・スカラ座のエトワール。写真家のブルース・ウェーバーが写真集をつくってしまったほどのバレエダンサーですね。

ハビエ ちょうど一年前ですが、彼にサルヴァトーレ フェラガモのイメージモデルを務めていただきました。

宮尾 彼はモデルとして、どうでしたか?

ハビエ とても体格が良いですね。ダンサーとしてだけでなく、甘いマスクでもイタリアではとても人気があります。あなたも、とてもハンサムでいらっしゃる。

宮尾 ありがとうございます(笑)。

足に優しい靴は、足裏に付いてくる靴

ハビエ バレエダンサーは、皆さん足をとても大切にされますね。

宮尾 レッスンのあとは、きちんとケアをしないと。翌日に疲れを残すわけにいきませんから。だからというわけではないのですが、ついラクな靴をはいてしまいます。本当はお洒落な靴もはきたいのですが。

ハビエ サルヴァトーレ フェラガモは、あらゆる人のご要望に応える靴を用意しています。バレエダンサーにもきっと相応しい靴があるはずです。

宮尾 軽くてラクな靴もありますか?

ハビエ 優しいはき心地のためには、軽い靴がよいのでは、と思われるかもしれませんが、最も大切なことは自分の足に適切なサイズとフィットを選ぶことです。

Salvatore Ferragamo|サルヴァトーレ フェラガモ 01

宮尾 革靴は重いものと考えていたので、敬遠してしまっていたようです。

ハビエ サルヴァトーレ フェラガモでは5つのカテゴリーの靴を用意しています。それぞれフィットがちがいますが、あらゆる人間のライフスタイルをカバーできるラインナップです。

宮尾 では、そのカテゴリーのなかから、どのように選ぶのがよいのでしょう?

ハビエ はいたとき靴底が足裏に吸いつく靴が、はく人にとってもっとも適した靴です。ソールのクッション性も重要ですが、素材や厚さにかかわらず、歩くとき足に靴がついてくる靴を選ぶことが大切です。

宮尾 なるほど、それでは試しばきも重要ですね。

ハビエ 最高級ラインとなるトラメッザは1992年に、創業者サルヴァトーレが用いていたウェルト技法を復刻したコレクションです。レザーのミッドソールがはく人の足裏のかたちになじんでフィットしていきます。

宮尾 はくほどに自分だけの一足になっていくわけですね。

ハビエ そうです。この靴なら、どんなにハードなレッスンの後でも快適にはけるでしょう。

Javier A. Suarez|ハビエ・スアレス

Javier A. Suarez|ハビエ・スアレス
メンズレザーグッズプロダクトディレクター兼フェラガモUSA 副社長。ラグジュアリー・フットウエアのデザインおよび開発におけるキャリアは、25年に及ぶ。1990年9月、サルヴァトーレ フェラガモに入社。現在、メンズレザーアクセサリーのデザイン、技術開発、マーチャンダイジングすべてを統括している。アルゼンチン ブエノスアイレス生まれ。ニュヨーク在住。

宮尾俊太郎

宮尾俊太郎
1984年生まれ。北海道札幌市出身。14歳のとき、熊川哲也が踊るTVCMを見てバレエをはじめ、17歳のとき仏カンヌ・ロゼラハイタワーに留学。2004年に帰国し、憧れていた熊川哲也が主催するKバレエ カンパニーに入団。「イチローに憧れて野球をはじめた子供が、イチローと同じ球団でプレイするようなものです」とは本人の弁。2009年、ファースト・ソリストに昇格し、数々の公演で主演を務める。
ドラマ、CM等にも出演するなど、幅広い活動を行っている。
12月23日、25日夜「くるみ割り人形」(赤坂ACTシアター)主演予定。

           
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