京都・東山 THE SODOH内「くろどう」 日本画家・竹内栖鳳の邸宅で、“くろぎ”黒木純がひらく、和食の新たな境地
LOUNGE / EAT
2025年10月17日

京都・東山 THE SODOH内「くろどう」 日本画家・竹内栖鳳の邸宅で、“くろぎ”黒木純がひらく、和食の新たな境地

EAT|THE SODOH 東山 京都 くろどう

京都・東山、八坂の石畳を抜けた先。
1700坪の日本庭園に抱かれる「THE SODOH 東山 京都」は、近代日本画の巨匠・竹内栖鳳が暮らし、筆を執った旧邸をリノベーションした邸宅である。

2025年9月、その本館に新たな息吹をもたらす和食のメインダイニング「くろどう」が、東京・芝大門の名店「くろぎ」で知られる料理人、黒木純氏の監修のもと、誕生した。

Text & Photographs by IJICHI Yasutake

黒木氏の料理の醍醐味は、素材と向き合い、旬の命を最大限に引き出し、和食でありながら和食の枠に留まらず、その土地、その人の“今”に寄り添う一皿にある。宮崎の割烹を営む家庭に生まれ、母の味の温もりを感じて育ったという黒木氏にとって、和食の原点は“郷土料理”だという。
懐かしさの中に宿る優しさ、土地の味が持つ力強さ。そこに常に新しさを加え、国内で喜ばれる料理をつくりながら、世界にどう昇華させていくかを考える。その探求の延長線上に、この「くろどう」はある。

竹内栖鳳の残響と、東山の静謐

この地に宿る美意識は、竹内栖鳳の存在なくして語れない。第一回文化勲章を受章し、近代日本画の先駆者として名を馳せる栖鳳の旧邸に漂うのは、静けさの中に凛とした緊張を孕む空気。
周辺には、豊臣秀吉の正室・ねねが、秀吉の菩提を弔うために建立されたという高台寺や、坂本龍馬をはじめとした幕末の志士たちを祀る護国神社が佇む。観光の喧騒を離れ、石畳を歩けば、京都の“間”を感じるような余白に出会える。
そして、その静謐の先で供されるのが、「くろどう」の料理である。
「くろどう」では、“本当に好きなものを、好きな調理方法で、好きなだけ”をモットーに、OMAKASEの先にある“WAGAMAMA”という新しい自由を提案している。ランチタイムには、シグネチャーの謹製だし巻きたまごに、WAGAMAMAにメインとデザートを選べる3つのコースを。
夜はコースに加え、アラカルトを自在に組み合わせ、メインは食材から調理法まで自らの好みで選べる。それぞれの“今、食べたい”に寄り添う柔軟な構成こそ、「くろどう」の真髄である。
今回、「くろどう」の最初のゲストとして、その世界観を堪能してきた。静謐な庭を望む窓辺の席でいただく一皿一皿は、どれもが“京都のいま”を映し出していた。
・くろどうの八寸
京文化をいかした素材と、現代の和食割烹のトレンドを融合させた、目にも鮮やかな一皿。
器の余白まで計算された美は、竹内栖鳳の日本画を思わせる。
・謹製 焼き胡麻豆腐
まるで河豚の白子のようにしっとり、ふんわりとした食感。焦がし醤油の香ばしさが重なり、口の中でやさしくほどけていく。胡麻豆腐という既視感ある料理に、未知の軽やかさを与えた“くろどう”らしい逸品。
・近江牛のフィレカツサンド
メインは、甘鯛、チキン南蛮、京丹波高原豚の生姜焼き、そして近江牛のフィレカツサンドから選択。肉の火入れ、パンの厚み、ソースの余韻。そのすべてが緻密に計算されている。
・雲丹キャビア半田麺
贅を尽くした一品。徳島の半田麺は、細身でありながらしっかりとしたコシと艶を持ち、雲丹とキャビアの濃厚な旨味を絶妙に受けとめてくれる。
・謹製 和栗のかき氷
くろぎの代名詞でもあるかき氷は、秋の始まり。口どけの儚さとともに、和栗の芳醇で濃厚な甘みがゆるやかに広がる。

竹内栖鳳の美学・黒木純の精神・Plan・Do・Seeの感性が交わる場所

「くろどう」では、京都の豆腐や湯葉など、地の食材も積極的に取り入れ、素材の背景までも味わわせる“京都ならではのくろぎ”が堪能できる。
「くろどう」を運営するのは、「日本のおもてなしを世界中の人々へ」をミッションに掲げる株式会社Plan・Do・See。
黒木氏の精神と、Plan・Do・Seeが培ってきたブランディング・マーケティング感性が融合することで、料理だけでなく体験そのものが、和食の新たな表現となっている。
黒木氏は語る。
「インバウンドが増えて久しい今、和食の発信も次の段階に入っている。第2フェーズ、第3フェーズへとどう進化し、どう深化させていくか。その挑戦を京都から始めたい。」
いま、京都は世界中の旅行者で賑わい、日本人が少し距離を置きつつあるとも言われる。しかし、日本人もまだ知らない静かな時間が息づく場所がある。
竹内栖鳳の美学と、黒木純の精神と、Plan・Do・Seeの感性、それぞれが交差する「くろどう」は、そんな京都の深層に触れる入り口だ。
くろどう
場所|京都市東山区八坂通下河原東入る八坂上町366
問い合わせ先

くろどう
Tel.075-541-3331
https://kurodoh.com/

Photo Gallery