ロサンジェルス自動車ショーリポート|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016
CAR / FEATURES
2016年11月25日

ロサンジェルス自動車ショーリポート|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016

ロサンジェルス自動車ショーリポート|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016

今年のロサンジェルスはSUVに注目

世界最大の自動車マーケットであるアメリカにおいて、もっとも大きな試乗であるカリフォルニア。それゆえ、同地で開催されるロサンジェルス自動車ショーは、世界中のカーメーカーがこぞって注目のモデルと持ち込む。11月18日から開催されたロサンジェルス自動車ショー2016ではどんなモデルが登場したのか。彼の地を訪れた小川フミオ氏がリポートする。

Text by OGAWA Fumio

各メーカーからSUVの最新モデルが登場

米国一のマーケットとして世界の自動車メーカーがつねに重要視しているカリフォルニア。2016年11月18日からロサンジェルス自動車ショーが開催された。2016年は原油安を背景に大型トラック(ピックアップやSUVの一部を米国人はトラックと呼ぶ)が売り上げを伸ばしたのが同国マーケットの特徴だ。

ショーではさまざまなSUVが多くみられ、各国のメーカーが力を入れているのがよく分かった。「テスラの頭痛の種になるだろう」とUSAトゥデイに好意的に評されたジャガーの「I(アイ)ペース」という電気自動車コンセプトから、自動車好きの心をくすぐるアルファロメオの「ステルビオ」まで多種多様。日本メーカーもトヨタが日本でも12月に発売予定の小型SUVである「C-HR」を、マツダが新型「CX-5」を初公開するなど気合いが入っていた。

Jaguar I Pace|ジャガー Iペース

Jaguar I-PACE

NISSAN Rogue|日産 ローグ

Nissan Rouge

面白かったのは日産自動車で、スターウォーズの新作「ローグ・ワン」とのコラボレーションを大々的に展開。同社のSUV「ローグ(日本名エクストレイル)」との名前の近似性を利用してスターウォーズ関連の展示で多くの観客を惹きつけていた。なかでも帝国軍が乗るTIEスターファイター(実物大?)は圧倒的な迫力。遠くからも来場者を呼び寄せる効果を発揮していた。「ズルい」という他メーカーの声もあったようだけれど。

アルファロメオはやはり今でも米国で高いブランドイメージを確立しているメーカーだ。とくに新型セダン「ジュリア」で(マセラティ「ギブリ」なみの)高価格路線を打ち出したあと、今回は(やはり「レヴァンテ」なみの)高級SUV、ステルビオをワールドプレミアとして発表。大きく注目を浴びていた。ステルビオはどこかで聞いた名前だけれど、もとはイタリアとスイスが国境を接する最高峰のステルビオ峠に由来しており、ドライビングルートとして有名だ。スポーティなイメージを強調するのによいネーミングといえるだろう。

Alfaromeo Stelvio|アルファロメオ ステルビオ

Alfaromeo Stelvio

MINI COUNTRYMAN|MINIカントリーマン

MINI Countryman

「フェラーリの技術とノウハウを活かして開発した」とアルファロメオがプレスリリースで謳う510馬力の2.9リッターV6エンジン搭載によるパワフルさもステルビオのセリングポイントになっている。それにQ4と同じグループに属するマセラティと同じ名称を使う電子制御式センターデフを持った4WDシステムが組み合わされているのだ。もう1つ、280馬力の2リッター4気筒モデルも用意される。

「MINI カントリーマン」も世界初のお目見えとなった。従来型より全長で20cm長くなり居住性が改善されたのが特徴の1つ。もう1つはプラグインハイブリッドモデルの設定だ。「MINI クーパーS Eカントリーマン ALL4」。電気モーターだけで40kmをカバーするという。

日本勢も負けていない。

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今年のロサンジェルスはSUVに注目 (2)

日本メーカーも要注目

ブラックに統一されたマツダらしいブースでひときわ目立っていたのは新型SUV「CX-5」だ。日本でもまもなく発売になる新型CX-5は従来型のイメージを踏襲しつつクーペ的なルーフラインといい、より都会的で洗練されたスタイリングと感じられた。

新型マツダCX-5のエンジンはガソリンが2.0リッター、2.5リッター。加えて2.2リッターディーゼルも用意されるという。米国では初のマツダのディーゼルエンジン車になる。「パフォーマンスと燃費をともに気にするドライバーにふさわしいモデル」(マツダのプレスリリース)とされている。

Toyota C-HR|トヨタ C-HR

Toyota C-HR

トヨタは新型SUVである「C-HR」を日本よりひと足先にロサンジェルス自動車ショーで公開した。「コンパクトクロスオーバーという大きな市場に向けたもの」(米国トヨタのビル・フェイ副社長)という位置づけだ。

しかしそれはたんに小さいということでなく、全体の面構成や立体的な造型のリアコンビネーションランプに見られるように、コンパクトしかし新しい、というイメージを大事にする市場のようだ。

トヨタC-HRは日本で売られるときは、1.2リッターガソリンと、プリウスと同じ1.8リッターガソリンエンジンを使ったハイブリッドの2本立て。いっぽう米国では144馬力の2.0リッターエンジンで販売される。変速機はCVTで、前輪駆動となる。日米に欧州など加え世界50カ国での販売が決まっており、その皮切りがロサンジェルスだった。「若いトレンドセッターに向けてのクルマということだが、ちょっと変わったスタイルとディテールが好まれるのではないか」とは経済誌「フォーチュン」のウェブ上でのコメントだ。

Infiniti QX SPORTS|インフィニティ QX スポーツ

Infiniti QX SPORTS

NISSAN Rogue|日産 ローグ

NISSAN Rogue

インフィティの話題は2つ。1つは可変圧縮比エンジン「V-CT」だ。走行中にシリンダー内の混合気の圧縮比を8-14のあいだで変化させるという技術を実用化したところが注目に値する。ターボチャージャーを組み合わせることで加速時や高速走行時の圧縮比を最適に制御、異常燃焼を抑えて燃費の向上と、パワーとの両立を達成したという。

「今回は4リッターエンジンなみのトルクを出しています。メリットはサイズを既存のエンジンと同等にしているため、手持ちの変速機などが使えるところにあります。いっぽうもっとパワーを出すことも可能」(日産自動車の開発担当者)という。ガソリンエンジンの将来はまだ明るいということか。現状では生産コストがやや高くつくので日産の高級車ブランド、インフィニティ用に限定するそうだ。

もう1つはエンジンと関連するのだが、V-CTエンジンを搭載するのだろうか、隣りには「QXスポーツ インスピレーション」が展示されていた。これもミッドサイズSUVのコンセプトで、先にパリ自動車ショーで発表されたモデルである。スタイルも新しいし、エンジンも新しい。となると食指が動くのである。

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今年のロサンジェルスはSUVに注目 (3)

欧州と地元アメリカ勢は

欧州勢もSUVを数多く持ちこんだ。アルファやMINIに加えて、注目すべきモデルも多い。アウディは先ごろフルモデルチェンジした「Q5」を展示。軽量素材を多用することで従来モデルより最大90kg軽量化を実現しているといい、全長4.66メートルの車体はサイズ的には拡大していないため軽量化のぶん走りのクオリティは上がっているという。

ランドローバーは新型「ディスカバリー」を持ちこんだ。5世代目になるモデルで外観上は太いリアクォーターピラーが眼につく。「ディスカバリー スポーツ」を思わせるスタイリッシュな雰囲気だ。5メートル近い車体を持ち7人乗り仕様も。いっぽうで車体の軽量化を進め最大で480kgもの重量削減に成功したという。

Landrover Discovery|ランドローバー ディスカバリー

Landrover Discovery

Volkswagen Atlas|フォルクスワーゲン アトラス

Volkswagen Atlas

日本では「ディスカバリー ファースト エディション」としてすでに受注が始まっている。日本仕様は(とりあえず?)3リッターV6ガソリンと、やはり3リッターV6ディーゼルという2つのエンジンが用意されているのだ。ロサンジェルスのなかでも富裕層の多いエリアで人気が高いそう。インテリアは雰囲気ある造型と素材に加え、新型ではスマートフォンによって2列目と3列目のシートのフォルディングがコントロールできたりと“進化”しているのも特徴だ。

フォルクスワーゲンが大きなブースで展開していたのは7人乗りの「アトラス」。大人もサードシートに乗れることを謳う比較的大型サイズで、「アメリカのために作った」(フォルクスワーゲンのプレスリリース)と大々的に喧伝している。実際にテネシー州の工場で作られる。先進的安全装備も満載しており、安全で快適という点を強調。「アメリカ人がいかにミッドサイズSUVを日常的に使っているかじっくり研究した結果」とデザインディレクターのクラウス・ビショフ氏は語っている。

Volvo V90|ボルボ V90

Volvo V90

Cadillac XT5|キャデラック XT5

Cadillac XT5

ボルボは新型「V90 クロスカントリー」をアピールした。全長5メートル近い車体だが長いルーフを強調しつつ、リアは「V40」を思わせるように傾斜をつけて機能一辺倒ではない躍動感を与えている。「V90」とともに先進的安全技術は豊富で、ロングツアラーとしても信頼できそう。日本で間もなく発売と言われているが現時点でどんなエンジンが搭載されるかは定かでない。

最後になったが、米国ではキャデラックが2017年に日本にも導入する予定のSUV「XT5」が注目だ。現行の「SRX」の後継にあたるモデルで、米国ではメルセデスやアウディの対抗として企画されている。特徴は得意の軽量化技術をふんだんに盛り込みドイツ製よりうんと軽いボディを与えられていること。それにより燃費と操縦性ともに高いレベルを実現したという。

キャデラックはそもそもSUVを得意とするブランドという点に立ち返り、プレミアムSUVが人気の日本市場でもしっかり販売を伸ばしていきたい意向のようだ。ドイツ車でもレクサスでもないサードウェーブとしてキャデラックのエキゾチック感が日本でも輸入車に食指を動かす人に評価されている。右ハンドルも本当は設定されるとセールスも一段と伸びると思う。

           
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