ボルボ V40 D4のスポーティな特別仕様車に試乗|VOLVO
VOLVO V40 D4 R-Design|ボルボ V40 D4 R-デザイン
ボルボ V40 D4のスポーティな特別仕様車に試乗
ロングツーリングのいいパートナー
4ドアハッチバックの「V40」に2リッター4気筒ディーゼルエンジンを搭載した「V40 D4」がデビューしたのが2015年6月のこと。このたび同モデルに、よりスポーティな特別仕様車である「R-Design」が登場した。モータージャーナリスト小川フミオ氏によるインプレッションをお届けする。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
固められた足まわりと専用の内外装が特徴
ボルボって面白い。いわゆる“順列組み合わせ”的な車種構成が徹底しているからだ。消費者目線が徹底しているというべきか。最近の注目は、「V40 D4 R-Design」だ。コンパクトな車体、燃費にすぐれるディーゼルエンジン、楽しい操縦性。3つの重要な要素を組み合わせて、1台に仕立てあげてしまった。
2015年12月に日本発売開始されたV40 D4 R-Design。従来から人気のある4ドアハッチバックのV40に、2リッター4気筒ディーゼルエンジンが搭載されたのが2015年6月だった。これに組み合わされたR-Designは、固められた足まわりに、専用の内外装などを特徴とするスポーティ仕様だ。
スポーティな仕様は、そもそも、日本市場でずっと人気を博している。メルセデスでいえばAMGエディション、BMWはMスポーツ、アウディはSラインと、ドイツ車のラインナップでは、その人気ぶりが証明ずみだ。ボルボのR-Designも、けっこう長い歴史を持つ。
「ボルボのディーゼルは、燃費とともに、スポーティなキャラクターを特徴としています。そちらの個性を活かした、日本市場にはライバルがないモデルです」。ボルボカージャパンの広報が胸を張るのが、R-Designチューンを施されたこのモデルなのだ。
R-Designとはなにより「スポーツシャシー」を備えていることを意味する。ボルボ車には、じつは3タイプのシャシーが用意されている。「ツーリングシャシー」「ダイナミックシャシー」そして今回V40 D4 R-Designで追加された「スポーツシャシー」だ。
スポーツシャシーの中心はスポーツサスペンション。スプリング剛性はダイナミックシャシーに対してフロントで10パーセント、リアで7パーセント上がっている。ダンパーも専用。とりわけリアサスペンションには、路面との追従性を上げる目的でモノチューブダンパーが備わっているのが注目に値する。そして前後ともに硬くなったぶん、バンプストップも強化されている。
V40 D4 R-Designには、もうひとつ、「ポールスターパフォーマンスパッケージ」(18万8000円)もオプションで用意される。特徴は、エンジンROMチューンが施されているところだ。出力が7.4kW(10ps)、トルクが40Nm上がっている。とりわけエンジン回転の中間領域においてパワー感を出すことを重視した、とボルボカージャパンでは説明する。
ポールスターとは、ボルボと同じ、スウェーデンはイエテボリに本拠を置くチューニングメーカー。正式社名は「ポールスターレーシング」というように、レース車両の制作がメインの仕事だ。同時にボルボとは、同社が1996年に設立されていらい、レースのパートナーとしての関係を築いてきた。昨今は、S60やV60にスポーティなポールスターエディションが設定されるなど、ボルボのスポーティイメージを高めるのに貢献している。
V40 D4 R-Designは、これディーゼル?というクルマだった。
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ガソリンエンジンのような回転フィール
V40 D4 R-Designの実車は、ちょいと精悍である。クロームの飾りが雰囲気を出しているのだ。試乗した赤色ボディはとりわけ、見た目からして元気がよい。シートも立体的な造型で、視覚的にも、実際のホールド性も文句がない。
専用デザインのバンパー、大径のテールパイプ、シルクメタルフィニッシュで縁取られたフロントグリル、同様のリアビューミラーとウィンドウモールなどが外観上の特徴だ。
車名にあるD4にはじつは意味がある。「D」はご賢察のとおりディーゼルを意味していて、いっぽう「4」は、ボルボの2リッター4気筒ディーゼルユニットにおけるポジションを表す。現在のところ頂点はD5。でもD4だって、最高出力140kW(190ps)、最大トルク400Nmとかなりのものだ。
その数値はたんに数値でない。そのことは、走り出せばすぐ分かる。標準モデルで1750rpmから最大トルクが出る設定(今回試乗したポールスターパフォーマンスパッケージ装着モデルでは440Nm/1750〜2250rpm)は、発進からぐいぐいと力強く加速していくことで十分体感できる。しかも、1350から3500rpmのいわゆる中回転領域でのトルクはスタンダード仕様より50Nm厚くなっている設定だ。
体感的には、1500rpmを超えるとまさに強力にクルマを引っ張られるかんじだ。しかも「D4」ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンのような感覚で気持ちよく回る。室内ではディーゼル特有のノック音も意識されないほどだ。
このクルマのキャラクターがはっきりするのは、カーブを曲がる時だ。ステアリングホイールを切りこむと、安定した姿勢で曲がっていく。ボルボのよさは、長い距離を安心感とともに運転できるところにある(と個人的には思う)。スポーツシャシーは、しっかりしたハンドリングを実現しており、その長所を延ばしてくれているように思う。
安定性という意味で、トルクバンドの太いD4というディーゼルエンジンとの相性もいい。しかも、車載の燃費計でみると、リッター15km以上。さまざまな意味で、ロングツーリングのいいパートナーなのだ。
変速機には仕掛けがあって、V40 D4 R-Designの魅力を高めている。
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このクルマにしかない武器
V40 D4 R-Designは、フツウに走っても楽しい。でももっと楽しむコツがある。それはシフトレバーに仕掛けがある。8段オートマチック変速機のセレクターレバーを左側に倒すと、スポーツモードに入るのだ。エンジン回転を調整して、より太いトルクを使う設定になる。ぽんっというかんじで、エンジン回転が上がり、シフトタイミングも遅れるので、たっぷりしたトルクを堪能できる。
V40 D4 R-Designは、スポーツシャシーを備えているぶん、足回りが硬めだ。ファミリーカーとして買うのは微妙なところもある。V40はそもそも、リアシートはややタイトで、前席主体のパッケージングである。逆の見方をすると、「プレミアムショートワゴン」を標榜するV40 D4 R-Designこそ、V40のキャラクターを存分に活かしたモデルともいえる。いい点も、いまいちな点もあえてそこを承知で、パーソナルにクルマを楽しみたいという向きには、まさにぴったりだろう。
ボルボ車を特徴づけてきた“フローティング・センタースタック”には、高級腕時計の世界でいうところの「コト・ド・ジュネーブ」(英語ではジニバ・ウェイブ)なる、さざ波パターンが表面に刻まれている。さらにそこに、レーシングカーを思わせるブルーのアクセントストライプが加えられている。
200台限定で販売されるV40 D4 R-Designには、パノラマサンルーフ(ガラスのはめ込み式)、プレミアサウンドオーディオシステム、パークアシストパイロット(縦列駐車支援システム)、歩行者エアバッグ、キーレスドライブ、それに「レザーパッケージ」相当装備が備わる。メーカー純正の「ポールスターパフォーマンスパッケージ」(専用ソフトウェアやエンブレム)は、2016年1月3日から同月11日の期間にかぎり購入者に無償プレゼントされるそうだ。
ライバルはなんだろう。車型からいうと、フォルクスワーゲン・ゴルフにはGTI(389万円〜)やR(539万円〜)というライバルがある。運転の楽しさでいうと、BMW118iMスポーツ(364万円)も強力だ。V40 D4 R-Designには、安心感というボルボが従来から持ってきた価値が健在だ。なみのディーゼルエンジンをはるかに上回るトルクによる加速性のよさと、燃費のよさ。このクルマにしかない武器がある。順列組み合わせの強みである。
VOLVO V40 D4 R-Design|ボルボ V40 D4 R-デザイン
ボディサイズ|全長 4,370 × 全幅 1,800 × 全高1,4400 mm
ホイールベース|2,645 mm
トレッド 前/後|1,545 / 1,535 mm
最低地上高|135 mm
車両重量|1,550 kg
エンジン|1,968 cc 直列4気筒 直噴ディーゼル DOHC インタークーラー付ターボチャージャー
最高出力| 140 kW(190 ps)/ 4,250 rpm
最大トルク|4000 Nm(40.8kgm)/ 1,750-2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / マルチリンク
タイヤ 前/後|225/40R18
燃費(JC08モード)|20.0 km/ℓ
価格|459万円
販売台数|限定200台
ボルボお客様相談室
0120-922-662
http://www.volvocars.com/jp