フランクフルト現地リポート|BMW
BMW|ビー・エム・ダブリュー
フランクフルト現地リポート
主役は「i3」
サブブランド「i」を前面に押し出したのはBMWのブース。7月に公開済みの「i3」をはじめ、今回のショーでワールドプレミアとなる「i8」、さらにX5のプラグインハイブリッドなど、“駆け抜ける歓び”を犠牲にすることなく環境への配慮を果たすべく、ダウンサイジングやハイブリッドのモデルを積極的に出展。BMWの本国、ドイツはフランクフルトから大谷達也氏がリポート。
Text by OTANI Tatsuya
サプライズはないが注目度の高いBMW
BMWのブースにわれわれをあっと驚かせるような展示はなかった。いちばん大きなスペースを占めていたのは、今年11月にヨーロッパで発売されるカーボンコンポジットボディのEV「i3」。ただし、そのコンセプトモデルはこれまでにもたびたび展示されてきたし、量産モデルは今年7月に発表済みなので、目新しさはさほど感じない。
BMW iブランドのスポーツモデル「i8」も展示されていたが、こちらのスタイリングも見慣れたもの。あらたに投入されたクーペモデルの「4シリーズ」、それにフルモデルチェンジを果たしたばかりの「X5」は、その姿がたびたび報道されてきたので既視感がともなう。BMWが手がけるようになって3代目となる「MINI」のデビューは11月18日なので、今回は現行型の展示にとどまった。
それでも、今年のフランクフルトショーでBMWは大いに注目されていた。その最大の理由は、i3に同乗するチャンスが得られたからだろう。
敷地が広大なフランクフルトショーでは、各メーカーが自社の最新モデルを構内用シャトルとして提供しているが、なかでも圧倒的な人気を誇っていたのがi3で、BMWブースのある“ホール11”前にはi3のシャトルに乗ろうとする人びとで長蛇の列ができあがっていた。カーボンコンポジットボディがもたらす乗り心地、それにBMWがはじめて手がける量産型EVの仕上がりには、世界中から熱い視線が注がれているようだ。
そのほかで目立った動きといえば、新型X5のプラグインハイブリッド版、「コンセプト X5 eDrive」が発表されたことだろう。ツインパワーターボ テクノロジーを採用した4気筒エンジン(排気量は未発表)と70kWのモーターを組みあわせることでハイブリッドモデルに仕立てられたX5は、リチウムイオンバッテリーのパワーで30kmが走行可能。燃費はEUテストサイクルで3.8ℓ/100km(約26.3km/ℓ)を記録するという。
同じBMWブースでは、「コンセプト アクティブツアラー アウトドア」が発表された。BMWブランドで初の前輪駆動モデルとなる「コンセプト アクティブツアラー」は、昨年のパリサロンでワールドプレミアを飾っているが、今回公開されたのは自転車用キャリアなどを搭載したバリエーションの一種。次期型MINIとプラットフォームを共用する点をふくめ、今後が楽しみなモデルである。
いずれにしても、BMWブースの人気をi3が独り占めしていた感は拭えない。その影響力は極めて大きく、ライバルメーカーのなかにはi3を強く意識した発言をする関係者も少なからずいた。ボディ構造に留まらず、その生産方法もふくめて革新的な手法を取り入れたBMW iは、今後しばらくは自動車産業界を賑わせていくことになりそうだ。