4WD×ターボのポルシェ(前編)|Porsche
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2015年2月26日

4WD×ターボのポルシェ(前編)|Porsche

Porsche Panamera Turbo Executive|

ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ

4WD×ターボのポルシェ(前編)

ポルシェ ハイパワーモデルの看板として綿々と開発が続けられる“ターボ”と“4WD”という、ふたつのキーテクノロジー。「911」を中心に、「ボクスター」「ケイマン」「カイエン」「パナメーラ」、そして「マカン」とラインナップを拡充していくなかで、昨今その技術はさらに魅力を増している。今回は、数あるポルシェファミリーのなかから、最新モデル「ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ」と「911 ターボS」の2モデルにフィーチャー。前後編の2部構成でお届けする。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

4WDの優位性を信じるポルシェ家の血統

編集部Aが面白い提案をしてくれた。

「今回は4輪駆動のターボモデルにフォーカスすることにしませんか?」

“ポルシェ・フルモデルレンジ試乗会”と銘打ったこのイベントには「911」「ボクスター」「ケイマン」「カイエン」「パナメーラ」と現行ポルシェが勢揃いし、合計18台が会場にずらりと用意された。ポルシェ好きには願ってもないチャンスだが、だからといって手当たり次第に試乗するのでは能がないし、そもそも18台すべてに乗れるほど時間はない。

そこで何らかの縛りというか、条件を課す必要に迫られたわけだが、なるほど“4WD×ターボ”というのはポルシェにとってなかなか興味深いテーマである。ポルシェ最初の4WDモデルとされるのは1981年フランクフルトショーで発表された「911 カブリオレ」で、これはやがて「959」(デビューは1985年)に発展し、911のハイパフォーマンス4WDモデルの基礎を形作ることになる。

Porsche 959|ポルシェ 959

Porsche 959 (Paris-Dakar Rally)

Porsche Cayenne Turbo S|ポルシェ カイエン ターボ S

Porsche Cayenne Turbo S

ただし、これは自動車メーカーであるポルシェとしての話であって、その創始者であるフェルディナント・ポルシェはなんと1900年に4WDシステムを搭載したレーシングカーを試作していた。

4WDの優位性を信じるポルシェ家の血統はフェルディナントの息子であるフェリーにも受け継がれたのか、彼は1946年に4WDのグランプリカー(現代でいうF1マシン)である「360 チシタリア」の開発に着手、1949年にこれを完成させている。

また、1980年にデビューした史上初のオンロード向きフルタイム4WDモデルのアウディ「クワトロ」が、ポルシェ家の血を引くフェルディナント・ピエヒによって生み出されたことも、この家系に4WDの優位性を信じる思想が根強く受け継がれていることを証明するものである。

Porsche Panamera Turbo Executive|

ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ

4WD×ターボのポルシェ(前編)(2)

ハイパフォーマンスモデルの象徴

話がやや脇道に逸れたが、ハイパフォーマンスカーにこそ4WDが必要とのアイデアを生み出したのは間違いなくポルシェ家である。そして、それを現実のモデルとして仕立てたのはポルシェであり、その親戚筋にあたるアウディだった。つまり、ポルシェのハイパフォーマンスモデルの象徴としていまも4WDが君臨していることは偶然でも何でもないのだ。

いっぽうのターボは、1973年にBMWが「2002 ターボ」を世に送り出したものの、ウェイストゲートバルブ付きターボエンジンを初めて量産化したのは1974年発表の「911 ターボ」だったとされる。

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 10

Porsche Panamera Turbo Executive

Porsche 911 Turbo S (Type 991)|ポルシェ 911 ターボ S(タイプ991)

Porsche 911 Turbo S (Type 991)

これもポルシェ ハイパワーモデルの看板として綿々と開発が続けられたことはご存じのとおり。そして、1995年にはターボと4WDが組み合わされた初の911が誕生、ポルシェにとって重要なふたつのキーテクノロジーがついにここで融合することとなった。

しかも、今回の試乗モデルのなかで4WD×ターボの条件を満たす「911 ターボ S」と「パナメーラ ターボ エグゼクティブ」は、いずれも先ごろ広報車のラインナップにくわわったばかりのニューフェイス。というわけで、ここではこの2台を中心に前編と後編の2部構成でお届けすることにする。

今回はその前編としてパナメーラ ターボ エグゼクティブを紹介しよう。

Porsche Panamera Turbo Executive|

ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ

4WD×ターボのポルシェ(前編)(3)

正直、これはリムジンと呼べる広さだ

気がつけばパナメーラはずいぶんと大家族になっていた。そのグレード数は、日本に導入されているものだけでも11に上るが、パワープラント別に見ると、V6 3.6リッターNAの「パナメーラ」、V6 3.0リッター ターボの「パナメーラS」、V6 3.0リッター スーパーチャージドにハイブリッドを組み合わせた「パナメーラS Eハイブリッド」、V8 4.2リッターNAの「パナメーラGTS」、V8 4.8リッター ターボの「パナメーラ ターボ」、そのハイパワーバージョンである「パナメーラ ターボS」の6タイプに分類できる。

これらのエンジンバリエーションを基本にして、4WDを搭載していれば“4”の文字が追加され、2,920mmのホイールベースを150mm延長して3,070mmとしたものであれば“エグゼクティブ”の名が与えられるという仕組み(ただし、GTS、ターボ、ターボSの3グレードは全車4WDのため、“4”の文字はつかない)。こうして見れば、モデル名を聞くだけでどんなパナメーラかがおおよそ想像できるだろう。

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 15

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 16

これによると、試乗したパナメーラ ターボ エグゼクティブは最高出力520ps、最大トルク700NmのV8 4.8リッター ターボエンジンをフロントに搭載して4輪を駆動する、ロングホイールベースの上級モデルであることが知れる。

この種の4ドアクーペのなかでは、リアのボリューム感がもともとたっぷりとしているパナメーラだが、そのロングホイールベースバージョンともなれば迫力満点というか、ある種の威厳さえ漂わせている。

実は、パナメーラ ターボ エグゼクティブの全幅は1,931mmもあるが、全長が5,015mmにも達するためにむしろ細長く見えるほど。

全高が1,418mmに過ぎないこともこの傾向を助長しているようにおもうが、いずれにせよ、たとえばベントレー「フライングスパー」のように重厚なスポーティサルーンとも、アストンマーティン「ラピード」のように軽快感優先の4ドアクーペともまったくことなるユニークなプロポーションを作り出しており、このあたりがパナメーラを好きになれるかどうかの分かれ目になるような気がする。

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 17

ただし、ボディサイズに余裕を持たせているだけあって、後席のスペースは4ドアクーペとはおもえないほど広々としている。身長172cmの私が前後に腰掛けた場合、リアシートでゆったり寛ぐ私の膝から前席のシートバックまでには長さ40cm以上の空間が残されていた。

正直、これはリムジンと呼べる広さだ。しかも、シートは左右独立式でゆったりと寛げるし、エアコンのコントロールなどおもてなし装備も充分。本格的なサルーンに比べれば、幅方向も天地方向も広くはないけれど、このクルマで送迎にきてもらって文句をいう人は滅多にいないだろう。

Porsche Panamera Turbo Executive|

ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ

4WD×ターボのポルシェ(前編)(4)

ポルシェ濃度はかなり濃い

では、運転席の印象はどうなのか? これはもう、純然たるポルシェとしかいいようがない。ステアリングホイール、メーターまわり、センタコンソールまわりの景色はポルシェファミリーそのもの。使われている素材だって、並みいるポルシェのラインナップのなかでもかなり上質なものが中心。ポルシェ濃度はかなり濃い。

とはいえ、911やケイマンで味わえる軽快感を期待すると、少し落胆するかもしれない。なにせ車重は2トンオーバー。その割には重心高が低く抑えられているためハンドリングは素直だけれど、大きなマスを常に振り回しているという印象から逃れることは難しい。

そのいっぽうで、私が深く感銘したのがステアリングフィールである。ステアリングからかすかに伝わってくる微細なバイブレーションにより、路面のざらつきはどの程度か、そしてフロントタイヤがいかにしっかりと路面を捉えているかが克明にわかるのだ。多くのポルシェ乗りにとって、この感覚は捨てがたいものだろう。

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 18

Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ 22

もちろん、パフォーマンスだって文句のつけどころがない。最高速度の305km/h、それに0-100km/h加速の4.2秒というデータは、いかにパワフルなエンジンを搭載したとしても、前面投影面積の大きなSUVでは実現しがたい。やはり、4ドアクーペとした価値はあったのだ。

仕事の性格上、まれに大切なお客様を乗せる機会はあるけれど、ポルシェのステアリングフィールだけはどうしても諦めることができないというスポーツマンにとって、パナメーラ ターボ エグゼクティブはまたとない選択肢になるだろう。

──後編へつづく

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Porsche Panamera Turbo Executive|ポルシェ パナメーラ ターボ エグゼクティブ
ボディサイズ|全長5,165 × 全幅1,930 × 全高1,425 mm
ホイールベース|3,070 mm
トレッド 前/後|1,655 / 1,645 mm
車両重量|2,110 kg
エンジン|4,806 cc 90度V型8気筒 直噴DOHC ツインターボ
圧縮比|10.5:1
ボア×ストローク|96.0 × 83.0 mm
最高出力| 382 kW(520ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|700 Nm / 2,250-4,500 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(PDK)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|255/45R19 / 285/40R19
0-100km/h加速|4.2 秒
最高速度|305 km/h
燃費(JC08)|9.0 km/ℓ
CO2排出量|242 g/km
価格|2,484 万円

           
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