ポルシェ911誕生50周年イベント 第3回|Porsche
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2014年12月4日

ポルシェ911誕生50周年イベント 第3回|Porsche

Porsche 911|ポルシェ 911

50周年 ワールドツアーリポート 第3回

911の進化とは──996、997、991篇

ポルシェ 911の50周年を駆け抜けるリポートも今回で最終回。最初の水冷911たる「996型」から、「997型」を経由し、最新の「991型」を比較。その体験から感じられた911の進化を島下泰久氏が語る。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

初代水冷911―996型

タイプ「996」になると、まだまだ現役のクルマ、最近の話という感じがしてしまうが、発表されたのは1997年だから、もう16年も経っていることになる。つまり911の歴史の3分の1は、水冷化以降の話となるわけだ。

エンジンが水冷化されただけでなく、長い歴史上はじめてボディ構造が完全に刷新されて、タイプ996は見た目も中身も近代的なスポーツカーへと進化した。当時、熱狂的なファン達は、この進化を必ずしも歓迎したわけではない。しかしいっぽうでこのタイプ996があらたなファンの獲得を実現したのも確かであり、実際に販売台数は大きく跳ね上がることになる。

Porsche 911|ポルシェ 911

Porsche 911|ポルシェ 911

ステアリングを握ったのは、後期型の「911 カレラ 4 S カブリオレ」。確かに、タイプ993以前のモデルにくらべれば機械的な密度感、あるいは凝縮感とでも呼びたくなる味わいが薄まっている感は否定できない。特にボディ構造がかわったことで、カブリオレはその傾向が一層強めに感じられた。

しかしながら今あらためて乗ると、これも間違いなく911だなと強く感じられるのも、また本当の話である。当時の記憶から頭のなかには、もっと洗練された、悪いいい方をすれば乗用車っぽい乗り味のイメージがあったのだが、走らせてみて感じたのは「こんなにスポーツカーっぽかったっけ?」ということ。

あきらかに、それまでの延長線上にあるモデルだと再確認できたのだった。

Porsche 911|ポルシェ 911

50周年 ワールドツアーリポート 第3回

911の進化とは──996、997、991篇(2)

デュアルクラッチトランスミッション PDKも誕生―997型

そして2004年にデビューし、2010年まで現役だったのがタイプ997となる。好評とはいえなかったヘッドライトが伝統の丸目へと回帰したほか、電子制御式アクティブサスペンションのPASMの搭載、カレラSへの3.8リッターエンジンの搭載などによりパフォーマンスを大幅に引き上げたタイプ997は更なるヒットへと繋がる。

しかも2009年にはのちのタイプ991用に開発されていた直噴エンジン、そしてデュアルクラッチギアボックスのPDKが搭載されるなどの大改良もおこなわれた。

Porsche 911|ポルシェ 911

Porsche 911|ポルシェ 911

911不断の進化

この日、用意されていたのは前期型の「911 カレラ 4 カブリオレ」。タイプ996と較べるとボディの剛性感などは予想以上に進化していたが、じつは今回の行程に常に帯同していた最新のタイプ991から乗りかえると、このタイプ997すら、あきらかに時代の流れを感じさせたことには驚いてしまった。911の不断の進化を、改めて実感させられたというわけである。

これまでに84万台を超える車両が世に送り出されてきたというポルシェ911というクルマは、まさにこの50年に渡って、ずっとそんなふうに進化を繰りかえしてきた。間違いなく911以外の何物でもない、共通の遺伝子を継承しながら、毎年のように確実に以前のモデルを凌ぐものへと生まれかわってきたのだ。そんな風に歴史を折りかさねてきたからこそ、911は生ける伝説として崇められているのだ。

Porsche 911|ポルシェ 911

50周年 ワールドツアーリポート 第3回

911の進化とは──996、997、991篇(3)

PORSCHE|ポルシェ

ポルシェのクラシックを訪ねる

ポルシェ社が、壮大なミュージアムを運営し、またポルシェクラシックと呼ばれるクラシックモデルの整備やレストア、パーツ供給などをおこなう部門を早くから運営してきたのは、その価値を明確に理解していたからである。

Porsche 911|ポルシェ 911

Porsche 911|ポルシェ 911

今回は道中でそのファクトリーにも立ち寄ることができたのだが、「356」や「911」だけでなく、十数台の「959」が整備を受け、あるいは順番待ちの倉庫に眠っている壮観な絵柄には度肝を抜かれてしまった。彼らは、クラシック911が元気な姿で走っていることが、そのまま最新の911のブランド価値を押し上げることになると、よく知っているのである。

今回のイベントも、おなじような文脈で語ることができるだろう。

とは言え、ミュージアムに所蔵されるような貴重なクラシックモデルのステアリングホイールを、相手がプレス関係者とは言え、こんなに簡単に委ねてしまうことには恐れ入った。

なにしろ今回一緒だったなかには、空冷時代には911とは無縁だった、いわゆる新興国のジャーナリストたちも沢山混ざっていたのだから。

案の定、彼らの後にはギアシフトなどに問題を抱えてしまった車両も無くはなかったのだが、ポルシェとしては、そんなのは直せば済むことで、このイベントにはそれ以上の価値があるということだったのだろう。

Porsche 911|ポルシェ 911

おかげで本当に素晴らしい体験をさせてもらってしまった。

日本にもやってくる

冒頭に記したとおり、「911ワールドツアー」は世界中で展開される。もちろん、ここ日本でも。

日時は10月20日。WEC(世界耐久選手権)が開催される富士スピードウェイにて、世界中を行脚している67年式911の展示をはじめとするイベントが行われる予定だ。

           
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