アウディ スポーツ クワトロ コンセプト発表|Audi
Audi Sport Quattro Concept|アウディ スポーツ クワトロ コンセプト
「クワトロ コンセプト」の第2弾
アウディ スポーツクワトロ登場30周年へのオマージュ
アウディは、「スポーツ クワトロ」の誕生30周年を記念したコンセプトモデル、「スポーツ クワトロ コンセプト」をフランクフルト モーターショーで発表する。これは、コンセプトカー「クワトロ コンセプト」のエボリューションモデルともいえるもので、最新のプラグインハイブリッドを搭載。エコとパワーを両立させた、スポーツカーの未来像を描いたものだ。
Text by SAKURAI Kenichi
ディテールに秘められた量産車のプレレビュー
アウディは、フランクフルト モーターショーで、「スポーツ クワトロ」の誕生30周年を記念したコンセプトモデル、「スポーツ クワトロ コンセプト」を発表する。これは2010年に公開した「アウディ クワトロ」誕生30周年記念のコンセプトカー「クワトロ コンセプト」につづくシリーズともいえるもので、かつての「Ur-クワトロ(オリジナル クワトロ)」とエボリューションモデルの「スポーツ クワトロ」の関係がそうであったように、モータースポーツのテイストを盛り込んだより力強いデザインを採用している。
今や伝説ともなった、「スポーツ クワトロ」は、1983年の今回とおなじフランクフルト モーターショーで、世界ラリー選手権のホモロゲーションモデルとして発表された。最高出力225kW(306ps)を誇る直列5気筒DOHC 20バルブターボエンジンをフロントに搭載し、4輪を駆動。運動性を向上させるために、「Ur-クワトロ」よりもさらにホイールベースを切り詰めた、独特の外観が特徴的だった。現在はポルシェのテストドライバーとして知られる、かのヴァルター・ロールのドライブで、1987年のアメリカ・コロラド州で開催されたパイクスピーク ヒルクライムレースで勝利を果たしている。
「スポーツ クワトロ コンセプト」は、こうした「スポーツ クワトロ」へのオマージュであり、今後登場するスポーティバージョンの予告編ともいえるものだ。エクステリアは「クワトロ コンセプト」に取り入れられたデザインをベースに進化させ、そこには「Ur-クワトロ(オリジナル クワトロ)」と「スポーツ クワトロ」のDNAも融合させている。
個性的なプロポーションは、全長4,602×全幅1,964×全高1,386 mmのスリーサイズから生み出され、ホイールベースは2,784mm。前後のオーバーハングはきわめて短く、21インチサイズのタイヤをおさめるために採用されたブリスター風のデザインをもつ前後フェンダーや、台形型のCピラーが特徴的だ。このシルエットからも、「スポーツ クワトロ」へのオマージュであることが理解できる。フェンダーデザインは、ブリスターフェンダーのあたらしい解釈で、筋肉質のシャープなラインが、よりエモーショナルである。
注目すべきは、アウディ マトリックスLEDと呼ばれる左右のヘッドライトに挟まれたフロントグリルのデザインと、フォー シルバー リングスと呼ばれるエンブレムの位置。
アウディの標準ラインナップともいえるAシリーズは、RSモデルも含め、現在グリル内にエンブレムを収めているが、こちらは「R8」と同様に、ボンネット先端にその位置が移動している。これはあたらしいRシリーズのラインナップや、スポーツグレードのデザインプレビューとみていいものだろう。
Audi Sport Quattro Concept|アウディ スポーツ クワトロ コンセプト
「クワトロ コンセプト」の第2弾
アウディ スポーツクワトロ登場30周年へのオマージュ (2)
700ps、800Nmのハイブリッドシステム
キャビンは4シーターで、その「R8」にも似た、シンプルだがスポーティなデザインを採用した。ほとんどの機能はドライバーにフォーカスした配置で、ステアリングホイール、デジタルインスツルメントクラスター、ヘッドアップディスプレイが、ドライバーの前方に集約されている。少々気は早いかもしれないが、こうした基本デザインや、ステアリングから手を離すことなくさまざまな操作をおこなえる、マルチファンクション スポーツステアリングホイールなどにも、次期「R8」のインテリアイメージを感じとることができるはずだ。
内装にはカーボンを多用。スポーツモデルらしく、内装の軽量化にも注力している。
メーターは完全にデジタルの世界。インスツルメントクラスターは液晶画面に表示されるバーチャルで、マルチファンクション スポーツステアリングホイールよって、3Dディスプレイの表示を切り替えられ、たとえば中央のスピードメーターにトラックインフォメーションを同時に表示することや、ストップウォッチを含むレースモード、数々のサーキットの詳細が入ったセットアップモードなどを選択できるという。
パワートレーンには、プラグイン ハイブリッド ドライブ システムを採用。エンジンは、気筒休止システムを搭載した4.0 TFSI(4リッターV8ツインターボ)で、単体の最高出力は412kW(560ps)、最大トルクは700Nm(71.3kgm)となる。電動モーターは、エンジンとトランスミッションのあいだに設置され、最高出力110kW(149.5ps)、最大トルク400Nm(40.7kgm) を発生。システム合計出力は515kW(700ps)、システムトルクは800Nm(81.5kgm)で、より進化した8段ティプトロニックから、4輪にパワーが伝達される。
プラグイン ハイブリッド ドライブ システムを構成する、もうひとつの重要なパーツである液体冷却型リチウムイオンバッテリーはリアに搭載され、14.1kWhの電力量を確保した。電力のみで走行できる「EVモード」、もっとも効率的な「ハイブリッドモード」のほか、最大パフォーマンスを発揮する「スポーツモード」をそなえ、それらはドライバーが任意でセレクトできるようになっている。
ドアとフェンダーはアルミニウム製、ルーフ、エンジンフード、そしてリヤハッチはカーボンファイバーで強化されたポリマーで、バッテリーパックを含む車両重量は、わずか1,850kg に過ぎない。よってV8エンジンと電動モーターの同時作動時の0-100km/h加速は、3.7秒とかつてラリーフィールドを席巻した、勝つために造られた「スポーツ クワトロ」やその派生モデルたちの記録と互角であるという。
最高速度は「アウディ R8 クーペ 4.2 FSIクワトロ」を超える305km/hを誇るいっぽう、電力のみでは、約50kmの走行が可能になっている。参考までに「スポーツ クワトロ コンセプト」の平均燃費は2.5ℓ/100km(1リッターあたり40km)で、CO2排出量はわずか59g/km である。
「スポーツ クワトロ コンセプト」の市販版として、「コンセプト」の名称が取れたプロダクションモデルの登場を期待するのはもちろんだが、エクステリアのディテールや、インテリアの造形に次期生産車のベースとなるデザインが隠されている──とおもいながらみると、その存在はなかなか興味深い。単純にコンセプトカーをみて、「市販する・しない」を語るだけでなく、コンセプトカーに込められた密かなメーカ開発者の意図を読み取るのも、モーターショーの醍醐味である。
Audi Sport Quattro Concept|アウディ スポーツ クワトロ コンセプト
ボディサイズ|全長 4,602 × 全幅 1,964 × 全高 1,386 mm
ホイールベース|2,784 mm
重量|1,850 kg
エンジン|4.0リッター V型8気筒 直噴DOHC ツインターボ
最高出力| 412 kW(560 ps)
最大トルク|700Nm
モーター出力|110kW
モータートルク|400Nm
システム最高出力|515 kw(700ps)
システム最大トルク|800Nm
トランスミッション|8段オートマチック(ティプトロニック)
駆動方式|4WD
サスペンション 前|5リンク式
サスペンション 後|トラペゾイダル式
タイヤ 前/後|285/30R21
ブレーキ 前/後|カーボンファイバー セラミック ディスクブレーキ
最高速度|305 km/h
0-100km/h加速|3.7 秒
燃費|2.5 ℓ/100km
CO2排出量|59 g/km
バッテリー容量|14.1 kWh
トランク容量(VDA値)|300 リットル