OPENERS CAR Selection 2013 九島辰也 篇
CAR / FEATURES
2015年1月16日

OPENERS CAR Selection 2013 九島辰也 篇

OPENERS読者におくる2013年の5台

OPENERS CAR Selection 2013 九島辰也 篇

九島辰也氏が選ぶ、“2013年のクルマで注目したい5選”を紹介。さらに、ことしのクルマ業界についても総括していただいた。

Text by KUSHIMA Tatsuya

既存のDNAをどう受け継ぎ進化させるか

今年もまたエコ技術は進化し、加速した。日本の規制に見合ったクリーンディーゼルが生まれたことでディーゼルモデルが増えたり、単なるハイブリッドではないプラグインハイ ブリッドもカタログに追加された。三菱「アウトランダー」は技術力で今年の日本カーオブザイヤーのイノベーション部門賞を受賞したほどだ。
また、ガソリンエンジンも黙ってはいない。フォルクスワーゲン「ゴルフ」に代表されるダウンサイジング化で、燃費をかせぎつつ二酸化炭素の排出量をおさえた。なんたってゴルフに積まれるのは1.2リッターなのだから驚く。初代のキャブレターエンジンより排気量は下回った。
このほかではテスラ「モデルS」の登場がある。テスラの第2弾となるこいつは4ドアのボディをもった完全なEV。特筆すべきはその航続距離だろう。なんとトップグレードでは500キロ走るというのだ。実際、テスラは東京-京都間をテスト走行させてみた。すると余裕でその距離を走りきったそうだ。リアルに渋滞をふくんで。
テスラ モデルSの真骨頂はそこだけにとどまらない。コクピットに座ると驚くのはダッシュボード。そこにiPad 2個分のモニターがはめこまれる。操作は当然タッチパネル式で、グーグルの検索からクルマのセッティングまで多岐にわたる。おもわず「これが新時代なのかぁ」と口にしてしまうほどだ。
といった流れのなかで個人的に注目したのは、伝統の継承。あたらしい技術によるニューモデルの発表もいいが、既存のDNAをどう受け継ぎ進化させていくかが、カーメーカーの課題のような気がする。ブランドやモデル名をマーケットに古く感じさせない努力が必要なのだ。
きっとここで選んだ5台はそんな期待にこたえてくれたモデルではないかとおもう。「レンジローバー」も「Gクラス」も「ゴルフ」もそうだ。それにベントレーもボルボもブランドという意味合いではおなじである。で、これらはみな個人的な予想を超える進化を見せた。詳細は省くが、どれも走らせて楽しいクルマに仕上がっている。
エコ技術が進化し業界に蔓延するいま、クルマの価値はあらたに見直されている。道具は道具として、嗜好品は嗜好品として。最近はようやく日本メーカーも「嗜好品っぽい」ものをつくれるようになってきた。そう考えると来年あたりこの5台のなかに国産車が入ってくることもあるかも。そんな期待もまたいいもんである。

九島辰也がOPENERS読者にオススメする2013年の5選

  • Volvo V40
    ボルボV40
  • XC60以降のボルボはすべていい。スタイリングも走りもそれに安全装備についても一級品だ。このV40はそれを具現したモデル。プレミアム コンパクトハッチというカテゴリーにふさわしい高級感ある仕上がりはさすがだし、かつスポーティな雰囲気もプンプンする。流れるようなフォルムはさすが。そしてシティセーフティやヒューマンセーフティといったデバイスはもちろん、世界初の歩行者用エアバッグなど“ならでは”の装備もつく。200年前に戦争を放棄した彼の国の人の命を大切にする姿勢を感じる。しかも低価設定も抜群。まさに言うことなし

  • Volkswagen Golf TSI Trendline
    フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン
  • 7世代目となった新型ゴルフ。輸入車の定番モデルだけに期待度は高い。でもこいつは見事にそれをクリアした。クイックなハンドリングとそれに追従する足さばきは見事である。とくにエントリーモデルのトレンドラインには驚かされた。意外?にも乗り心地がいい。トップエンドに位置するハイラインの4リンク式リアサスならまだしも、こいつはシンプルなトレーリングアーム。コストの面からそれが採用されたのは想像がつくが、動きが自然で気持ちいい。このセッティングは脱帽である。それとTSIとDSGの完璧な組み合わせ。突っ込みどころがない。

  • Mercedes-Benz G 350 BluTEC
    メルセデス・ベンツ G 350 ブルーテック
  • かつてこのクルマを所有していた立場から言わせてもらうと、こいつの弱点は燃費に尽きる。もちろん、高速での走行安定性やハンドリングなどに不安をもつが、それはひとつのキャラクターとして許容できる。そもそもそういうクルマではないからだ。だが、燃費はちがう。当時のそれは5リッターV8だったが、ウソのように燃料計が動くのをただただ眺めるしかなかった。ということで、こいつの存在価値は高い。JC08モードはまだ発表されていないが、期待はできる。それにSUVとディーゼルとの親和性をかんじる。この力強さは誰もが憧れる男の世界を色濃くする。

  • Land Rover Range Rover
    ランドローバー レンジローバー
  • 今年4世代目として進化した新型レンジローバー。そのデザインは今後のトレンドとなるにちがいない。ポイントは贅を尽くしたインテリア。ウッドやレザーの仕上がりにはただただ感心するばかり。そしてそこにモダンデザインが取り入れられる。スイッチの数をおよそ半分にしたというダッシュパネルは秀逸だ。シンプルななかに機能性をもたらしたそれこそデザインの勝利としかいいようがない。またエンジンが5リッターの他に3リッターV6+スーパーチャージャーが追加されたのも見逃せない。かっこよくさらに身近になったレンジに心奪われた。

  • Bentley Flying Spur
    ベントレー フライングスパー
  • 今年一番長距離を走ったクルマがこいつだ。海外試乗会では北京から万里の長城までを往復、国内では都内から岐阜を往復した。それで体感したのが乗り心地のよさ。雲の上を滑走するようなそれはもはやほかのクルマとは別次元。キャビンの気密性と合わせ、自分のクルマだけ別世界にいうような気になる。しかも、625馬力にスープアップされたパワーはとんでもない。どの回転数からもスーッと加速するのでストレスがまったくない。もっと言うとコーナリングスピードの高さは半端ない。エアサスがピタリ路面に吸い付くようにラインを描く様にただただ感動するばかり。

           
Photo Gallery