SRT バイパーGTSに試乗|SRT
CAR / IMPRESSION
2015年1月23日

SRT バイパーGTSに試乗|SRT

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRTバイパーに試乗

フェラーリF12ベルリネッタ」が6.3リッター。ランボルギーニアヴェンタドール」が6.5リッター。ニューヨークモーターショー2012でワールドプレミアを果たした、新型「バイパー」は、8.4リッター。現行乗用車最大のエンジンを搭載する、アメリカンスーパーカーだ。長らく名乗ってきた「ダッジ バイパー」の名を捨て、すでに日本にも上陸している「クライスラー 300 SRT8」、「ジープ グランドチェロキー SRT8」など、ハイパフォーマンスカーを展開する「SRT」ブランドの頂点として「SRT バイパー」を名乗ることになったこのクルマに、九島辰也氏が試乗した。

Text by KUSHIMA Tatsuya

クライスラー版のAMG

メルセデスにAMG、BMWにMシリーズがあるように、クライスラーにもハイパフォーマンスモデルがある。その名はSRT。“ストリート&レーシング テクノロジー”の略がつけられたものだ。

はじめてそれが顔を見せたのは2003年の二世代目バイパーのときだった。「ダッジ バイパーSRT10」という名で登場したのがそれにあたる。そしてその後、「グランドチェロキー」「クライスラー300」に「SRT8」を、「クロスファイア」に「SRT6」、「ネオン」に「SRT4」をラインナップするなど精力的に展開、今日に至る(数字は気筒数)。

おもい起こせば、2003年はクライスラーがダイムラーとひとつの会社になっていた頃。となると、冒頭に記したように、クライスラー版のAMGをつくるというのは、社内的に自然の流れだったのかもしれない……

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

あれから10年。去る12月にSRTモデルだけを集めたメディア向けの国際試乗会がアメリカ、アトランタでおこなわれた。場所はアメリカ・ル・マンシリーズでも使われる“ロードアトランタ”。一周4kmちょっとのそこはアップダウンの厳しいサーキットとしても知られる。かつてポルシェのレーシングカーが吹っ飛び、大事故となった場所だ。

それはともかく、試乗会をそこでおこなったのは彼らに思惑があるからだ。それは国際レースへの参戦。ル・マン24時間レースをはじめとする大きなレースへ積極的に出ていこうという旨をアナウンスした。すでにアメリカ・ル・マンシリーズへのエントリーは社内で承認されている。年間12戦、そのうち2戦は耐久レースとなるそうだ。

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRTバイパーに試乗(2)

OHVにはOHV独特のフィーリングがある

さてさて、そんな場所で乗ったバイパーだが、今回の新型から名前が「ダッジ バイパー」ではなく「SRT バイパー」となった。SRTをひとつのブランドとし、その象徴にバイパーを押し上げたのだ。

で、中身は基本骨格を踏襲するものの、全体的に大きな見直しをはかった。ドアはアルミ、ボンネット、ルーフ、リアゲートにはカーボンを使い、先代より45kgの軽量化を実現している。またシャシーのねじれ剛性も50パーセント向上させた。アルミは航空機メーカーのサプライヤーにオーダーしたようだ。

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

軽量化もそうだが、前後の重量配分も今回はこだわっている。お馴染みのビッグエンジンをフロントミッドに納め、均等を図る。結果、空車時で前49:後51、ドライバー乗車時で前50:後50を達成している。

エンジンは8.4リッター(512立方インチ)V型10気筒のOHVで、VVTが装着される。ブロックとヘッドはアルミ製。最高出力は640bhp(649ps、477kw)で最大トルクは814Nm(83kgm)を発生させる。特徴はOHVという点だろうが、そこは既存のユニットの進化形と考えるのが素直だろう。

もちろん、サーキットへ持ち込むことを鑑みればDOHC化という選択もあるが、主要マーケットにおけるOHVの重要性も捨てるわけにはいかない。OHVにはOHV独特のフィーリングがあるからだ。それに、「ラム」のヘビューデューティ版でもこのユニットは使われる。つまり、汎用性までも考慮しての結果使われたエンジンとなる。

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRTバイパーに試乗 (3)

「Come on Viper!」

では、実際に走った印象だが、第1コーナーから急激な上り勾配ではじまるサーキットで、まずはトルクの太さを体感させられる。アクセルを闇雲に踏み込むことなく、パーシャルな状態でグイグイと上っていくさまはすごい。そして、2速、3速とマニュアルシフトを上げていくも、4速まで入れば踏み込む前にコーナーが目の前にあらわれる。つまり、絶対的なスピード域が速いため、高いギアが必要ないのだ。

ハンドリングはじつに素直で、適度に反発力のあるパワステのチューニングも好印象。軽すぎないところがレーシーは気分を盛りあげる。また、先代までは高速コーナーでアンダーステア、低速コーナーでオーバーステアだった挙動もかなりニュートラルに仕上がった。これでかつての乗りにくいイメージは払拭できる。

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

SRT Viper GTS|SRT バイパー GTS

また、今回は乗り心地がいいのに驚いた。試乗車の「バイパーGTS」は2ステージの可変式ダンパー(ビルシュタイン製)が備わっていたが、これを“トラック”モードにしても硬過ぎる印象はなかった。この辺を開発陣に問うと、SRTは街乗りをこなすことも考え抜かれていると答えた。なるほど、おもいのほか懐は深そうだ。

といった内容の新型バイパー。現在、フィアット クライスラー ジャパンは導入を検討中とか。障壁になっているもののひとつにマフラーがある。90度の角度で設置されたサイドマフラーを日本の法規は許さない。ただ、今回それが日本だけの法規ではなく、英国など数ヵ国も同じような規制があることをメーカーは把握していた。となると、何かしらの対策を思案中? う~ん、いずれにせよ、新型バイパーは2013年是非日本導入してもらいたい1台であることは間違いない。

「Come on Viper!」

           
Photo Gallery