アヴェンタドールにサーキットで試乗|Lamborghini
Lamborghini Aventador LP 700-4|
ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
文句なし! 究極のスーパーカー
アヴェンタドールをサーキットで試乗!
元レーサーで本格レースゲームのアドバイザリースタッフでもある大井貴之氏が、ランボルギーニのフラグシップ「アヴェンタドール」に試乗。場所は袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ。0-100km/h加速2.9秒、最高速度350km/hという猛牛は、サーキット上で高速走行するとどのような本性をあらわすのか。
Text by OHI Takashi
Photographs by ARAKAWA Masayuki
三種の神器を備える
2001年にデビューし、10年ものあいだランボルギーニのフラッグシップとして存在した「ムルシエラゴ」がフルモデルチェンジ! 「アヴェンタドール」としてデビューし、ついに上陸した。全長が200mm伸びて、幅は15mm細くなっているボディサイズは、乗用車的には大きなサイズ変更だが、このクルマのオーナーにとってはたいした問題ではないだろう。斬新なデザイン、12気筒エンジン、跳ね上げ式のドアというランボルギーニのフラッグシップに必要な三種の神器をそなえたスーパーカーの登場である。
アウディと手を組んでからのランボルギーニは、まず最初に「ディアブロ」の後継となる「ムルシエラゴ」をリリース。しかし、それは既存のモデルにアウディが手をくわえたものであり、実質的な第1作目は「ガヤルド」。アウディ・クオリティで生まれてきたこの「ガヤルド」というスーパースポーツカーは、クルマの出来を性能の限界を引き出して評価するレーシングドライバー的なオレとしても歓迎すべきモデルだった。
しかもそれが、サイズ的にも、メカニズム的にも、日常的に使えるフレキシビリティを備えているとあれば、もう夢のスポーツカーとしか言いようがない。ランボルギーニはじまって以来という「ガヤルド」の販売台数が、その完成度の高さをあらわしているとおもうが、子供のころ、DNAに組み込まれた『サーキットの狼』スピリッツは、どうしても「ガヤルド」を“ランボルギーニ”としてではなく、“アウディ“のフォルダにソートしようとする。
「ガヤルド」には「ミウラ」、「カウンタック」、「ディアブロ」と、つねにスーパーカーの王者として君臨してきたランボルギーニらしい、良い意味でのハチャメチャさが足りないと感じる時があり、それはドイツのテクノロジーが注入されたからには仕方のないことかと考えていたが、「アヴェンタドール」は文句なし。仕事抜きでとにかく乗ってみたい! と強く感じたクルマは久しぶりだ。
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ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
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アヴェンタドールをサーキットで試乗!(2)
意外なほど普通に乗れる
どこか折り紙っぽく感じるシャープなラインで構成されたデザインは、ステルス戦闘機がモチーフ。写真で見た時にも驚いたが、実物の存在感は写真以上! それはもう、宇宙から舞い降りてきた飛行物体に突然出会ってしまったくらい感動的なフォルムである。
カウンタック時代と同様に、ドアノブはドアのくぼみの裏側にひそませてあるのだが、それは自然と手が行く場所にある。ソフトなタッチのボタンを押すと、電磁式のロックが解除され、手を添えているだけでドアが持ち上がる。ドアを開けただけで周囲の空気を変えてしまう。そこにいるだけで強烈な存在感がある。これがランボルギーニのフラッグシップである。
まるで地べたに座るように強烈に低いシートに腰を下ろすと、そこはまさにコクピットなのだが、圧迫感はない。操作ミスを防ぐためのカバーを開け、エンジンスタートボタンを押すと、直後にTFTモニターにメーターが描き出される。ドライバーがアクセルを踏んでいるかどうかに関係なく、エンジン始動とともに一旦3,000rpm少々まで回転があがる。深夜の外出時にはちょっと困りそうだが、そのサウンドはランボルギーニらしい迫力の重低音だ。
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ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
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アヴェンタドールをサーキットで試乗!(3)
ただひとつだけの残念なこと
ブレーキペダルを踏み、サイドブレーキスイッチを解除。ステアリングの右側にあるパドルをカチッと引くと1速に入る。アイドリングのままでスルスルと動き出すクリープ設定はないが、ごく普通のAT車として扱うことができる。カーボンモノコック+プッシュロッドタイプのダブルウィッシュボーン式サスペンションという、トップカテゴリーのレーシングカーと同等のメカニズムを持つアヴェンタドールだが、その乗り心地はすばらしく快適。車幅は2メートルをこえているが、視界の良さからか、扱いにくさは感じない。
斜め後方には死角があるものの、後方視界は確保されていて、パーキング用にはバックモニターが装備されている。シートのアジャストはスライドが手動でリクライニングは電動。ステアリング位置は高さも前後も調整可能なため、最適なドライビングポジションを取ることができる。
このクルマを日常的に使う場合、低く、長く伸びたノーズが気になるところだが、スイッチひとつで瞬時にフロントの車高を上げることができちゃうのも、このクルマの凄いところ。それに、意外なほど小回りも利くため、なんの不自由も感じないだろう。
ただ、ひとつだけ残念に感じたのはシングルクラッチ式だったこと。今回のトランスミッションは新設計であり、軽量化と小型化のために、あえてシングルクラッチタイプをチョイスしている。コルサモードでは僅か0.05秒でシフトを完了し、スポーツモードでもそれなりに小気味の良いシフトをしてくれるが、シフトラグのないツインクラッチに慣れたドライバーにとっては違和感をおぼえてしまう。
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ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
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いよいよサーキットへ
今回の試乗会はクローズドサーキットでおこなわれたが、トラクションコントロールはONのままで走る約束。しかも先導車によって頭をおさえられた状態でのコースイン。参加するのは各メディアを代表するドライバーだといっても、プロのレーシングドライバーばかりではないため、致し方ない。といいながら出鼻を挫かれた気分だったが、先導車両は「ガヤルド」を、サーキット走行用に軽量化したスペシャルモデル「スーパートロフェオ ストラダーレ」であり、ハンドルを握るのは本国でテストドライバーをつとめるイタリア人。
コースには前夜に降っていた雨が残っていたこともあり、3セットの試乗枠で少しずつペースアップしていくとの説明だったが、若干車間を詰めたとたん、後続の存在はどこへやら。どんどんペースが上がり、袖ヶ浦フォレストレースウェイの短いストレートで時速180キロオーバー! 0-100km/h加速2.9秒、最高速350km/hというアヴェンタドールの実力を充分に満喫することができた。
気になったトランスミッションの制御だが、このサーキットをワインディングとして走らせるならスポーツモードが最適。後半にはコルサモードを試したが、ストレート加速においては使えるものの、シフトショックも大きく、耐久性を心配してしまうレベルだった。ほかはほぼ完璧なだけに、ちょっと残念。
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ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
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アヴェンタドールをサーキットで試乗!(5)
変身!
しかし、そのハンドリングは素晴らしく素直。前後駆動力配分は43:57と、「ガヤルド」の4WDモデルと同様のなのだが、さらに安定している。コーナリング中、高いGフォースを発生させている状態でアクセルを抜いても、また床まで踏み込んでも、唐突な挙動変化はおきない。
タイトコーナーの立ち上がりではトラクションコントロールの作動ランプが点滅していたものの、アクセルを強制的に閉じられてしまった、というようなストレスは皆無。高いボディ剛性、最適なジオメトリーで設計されたサスペンション、そしてフロント255/30ZR19、リア335/35R20という、駆動力配分とほぼ同等のサイズ比をもつ「ピレリP-ZERO」の高いグリップとコントロール性の良さ、すべてのアイテムが最大限に活かされているからこそのハンドリングだ。
このクルマは、走行状態に応じて3段階に変化するリヤスポイラーを備えている。その作動を止めることはできいないため、どの程度の効果を発揮しているかは不明だが、その姿のカッコ良いこと!
しかも、エンジンの温度が上昇すると「ムルシエラゴ」同様、リヤクォーターのパネルが開き、カウンタックのようなエアインテークに変身する。その姿を目の当たりにできたのは、今回の試乗会がランデブー走行だったお陰だ。アヴェンタドールの変身によって、オレもすっかりスーパーカー少年に変身してしまった。
このクルマの車両価格は税抜きで3,905万円。2007年に、たった20台の限定モデルとして発売された「ムルシエラゴ」ベースのスタディモデルである「レヴェントン」は、当時、ユーロが160円したこともあり1億6,000万円の値をつけていたことから考えれば格安だ。
否、そんなものを引き合いに出さずとも、これで4,000万円はちっとも高くない。どっちにしてもオレにとっては天文学的数字だが。4,000万円という数字は、もしそれが手元にあったら、「ケイマンR」とBMW「5シリーズ」のワゴンを買って、さらに海が見える場所に洒落たマンションが買えちゃうかもしれない……と、おもうと、クルマ1台の価格として現実的にとらえることができないが、もし、宝くじが当たったとしたら、消費税率がアップされてしまう前に購入したい。
西川淳氏によるアヴェンタドール試乗記「ランボルギーニの最新フラッグシップに試乗」はこちら
OHI Takashi|大井貴之
東京出身。
自動車専門誌、自動車専門ビデオの編集スタッフを経てフリーに。スーパー耐久レースで3度のシリーズチャンピオンを獲得、ニュルブルクリンク24時間耐久レースでクラス優勝、スーパーGTでも表彰台にたった経験を持つレーシングドライバーでもある。どんなクルマでも乗りこなすため、チューニングカーのタイムアタックドライバーとしても評価が高い。REVSPEED DVDのプロデューサー、ゲーム「グランツーリスモ」のアドバイザリースタッフでもある。
Lamborghini Aventador LP 700-4|ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4
エンジン|60°V型12気筒 DOHC 48バルブ ミッドシップ
最高出力|700 ps(515 kW)/ 8,250 rpm
最大トルク|690 Nm / 5,500 rpm
ボディ|全長 4,780 × 全幅 2,030 × 全高 1,136 mm
車両重量|1,575kg
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,720 / 1,700 mm
駆動方式|4輪駆動
トランスミッション|7段ISR(シングルクラッチ セミオートマチック)
最高速度|350 km/h
0-100km/h 加速|2.9 秒
最小回転半径|6.25m
タイヤ 前|255/35 ZR19
タイヤ 後|335/30 ZR20
燃費(欧州複合サイクル)|17.2ℓ / 100 km(約5.81 km/ℓ)
CO2排出量|398 g/km
車両価格|4,100万2,500 円(税込)