クライスラー 300に試乗|Chrysler
CAR / IMPRESSION
2014年12月26日

クライスラー 300に試乗|Chrysler

Chrysler 300|クライスラー 300

クライスラー復活を告げる

アッパーミドルクラスセダン「クライスラー 300」に試乗

クライスラーの誇るラグジュアリーセダン「300」。2004年に登場した先代は、全長5,000mm、全幅1,910mmという堂々たる車格と独特なスタイリングにくわえ、同クラスの欧州車とくらべれば比較的手ごろな価格も手伝い、日本でも人気を集めた。そのクライスラー「300」がモデルチェンジを果たしたのが2011年のこと。それからおよそ1年おくれて、今年の11月、ついに新型300が日本上陸を果たした。ダイムラーとの協業時代から受け継がれたコンポーネンツをベースにしながらも、あたらしい「300」は数々の進化を遂げている。小川フミオ氏がハンドルを握った!

Text by OGAWA Fumio
Photographs by ABE Masaya

フィアット・クライスラーの意気込み

上質なアッパーミドルクラスセダンとして日本でも人気が高かった、クライスラー「300C」。その最新型が「300」として、2012年12月15日に日本発売された。

2011年7月に、イタリアのフィアットが株式の58.5パーセントを取得することで同社の子会社化した米クライスラー。両ブランドは、中型車以下をフィアットが、大型車をクライスラーが担当することで市場で棲み分け、同時にシナジー効果をはかるとしている。

その証左のひとつが、クライスラー300だ。イタリアをはじめ欧州ではランチア「テーマ」の名の下に販売される。3.6リッターV型6気筒エンジンに8段オートマチックトランスミッションを搭載する、後輪駆動の上級サルーンである。先代のクライスラー300Cは、メルセデスのコンポーネンツを使用しながら開発された。しっかりした骨格と、トルキーなエンジンにすぐれたハンドリングで、よくできたセダンだった。

Chrysler 300|クライスラー 300

現行クライスラー「300」 日本仕様

Chrysler 300 Model Year 2010|先代 クライスラー 300 2010年モデル

先代 クライスラー 300 2010年モデル

その300Cをベースに、今回の300は、パワーアップにくわえ、ウィンドシールドとサイドウィンドウに二重構造の「アコースティックガラス」を採用して静粛性向上をめざすなど、いっそうの高級化がはかられている。

ボディも大幅に手がいれられ、フロントグリルとともにパネルが一新された。全長はプラス60mmの5,070mm、全幅はプラス15mmの1,905mmとやや大型化しているのも特徴だ。1,495mmの全高は不変。

操縦してみると、よくまわるエンジンに、フラット感のある乗り心地で、スポーティなドライブが楽しいクルマに仕上がっている。フィアット クライスラーの意気込みが、このクルマの魅力をいまも衰えさせてはいないようだ。

Chrysler 300|クライスラー 300

クライスラー復活を告げる

アッパーミドルクラスセダン「クライスラー 300」に試乗(2)

インテリアの印象はとてもよい

クライスラー300はドアを開けた瞬間から、驚きを与えてくれる。ベージュの内装に、青く光るメーターが、心地よい雰囲気をつくりだしているのだ。アイボリーの外板色に、ライトフロストベージュと呼ばれるレザー内装という「ラグジュアリー」が試乗車だった。これはとても好ましい組みあわせだったが、あいにく、日本仕様にこの組みあわせは存在しないそうだ。輸入車ではどこかでなにかの間違いがあり、時々こういう楽しいことが起こる。市販されないが。

それはともかく、インテリアの印象はとてもよい。8.4インチの液晶画面を中心に「uコネクト」というシステムで構成されたセンタークラスターは、メタルで円状にぐるりとオーナメントを設けた独特のデザイン。その下にエアコンの操作盤が配置される。コントロール類は煩雑でなく、必要なものが確実に操作できるデザインで好ましい。

Chrysler 300|クライスラー 300

Chrysler 300|クライスラー 300

インテリアの広々感も300の魅力で、前後席ともに、あらゆる方向に空間的な余裕を感じる。「ラグジュアリー」に標準装備される「デュアルペイン パノラミックサンルーフ」から採りこまれる外光が、室内の心地よさを増している。

ビジネスマンの足として使われることが多いこの種のクルマでは、居心地のよさがもっとも重要なキーワードだろう。静粛性の高さや、快適な乗り心地といった300の持ち味は、ビジネスマンにも愛されるであろう。

Chrysler 300|クライスラー 300

クライスラー復活を告げる

アッパーミドルクラスセダン「クライスラー 300」に試乗(3)

本領は高回転?

意外なことに、クライスラー300は、エンジンをまわして走ると本領を発揮するモデルだ。

340Nmの最大トルクを4,650rpmで発生する3,604ccのV型6気筒エンジンは、可変バルブタイミングの効果もあって、低回転域から高回転域までフレキシブルなエンジンだが、それでも、もりもりと力を出しはじめるのは3,000rpmを超えてからだ。そこからが、このクルマの真骨頂で、アクセルの微妙な踏みこみぐあいに即座に反応して加減速をおこなうとともに、ハンドルの入力にきれいにそって車体は動く。

車体の動きはいかなる速度域でもフラット感が強く、速度が上がっていっても不安はない。

おもしろいのは、このクルマは、ごく低速域ではハンドルが重く、それなりに力が必要な設定になっていることだ。

回転が1,500rpmを超えるあたりから、パワーアシストの介入量が増えるようだが、男性的な味付けというのか、個人的には嫌いではないが、日本の女性ユーザーはどうおもうだろう。

Chrysler 300|クライスラー 300

Chrysler 300|クライスラー 300

クライスラー復活を告げる

アッパーミドルクラスセダン「クライスラー 300」に試乗(4)

高級車の特権

フィアットに買収されたあと、クライスラー300はどうかわったか。

「内外装ともに大きく手をいれました」と、フィアット クライスラー ジャパンの広報部では説明する。

「まず出力ですが従来型より15パーセント、パワーを上げて286psにしています。同時に燃費を見直して10パーセント向上させるのに成功しました。Aピラーは従来型より細く、かつ傾きを強くしました」

もうひとつ、フィアットグループの資産ともいうべきミラノのポルトロナ フラウのレザーをシートに採用したのも、新型300の特徴だ。滑らかで、触ると手のひらに吸いつくような感触をもつ同社のレザーは、フェラーリなど、イタリアの高級ブランドで使われてきたもの。

Chrysler 300|クライスラー 300

Chrysler 300|クライスラー 300

このような贅沢が、高級車の特権だろう。いまはダウンサイジング化が大きな傾向だが、その反対に位置するクライスラー300。このクルマのもつ、大きなトルクによる気持ちよい加速感、長いホイールベースや重い車体のもたらす乗り心地のよさ、そして余裕ある室内空間。それらは、いちど試す価値がある。

価格は「300リミテッド」が398万円、「300C ラグジュアリー」が538万円。後者専用の装備は、ポルトロナ フラウのレザーシート、サンルーフ、ブラインドスポットモニター、20インチホイールなどがあげられる。

spec

Chrysler 300C Luxury|クライスラー 300C ラグジュアリー
ボディサイズ|全長5,070 × 全幅1,905 × 全高1,495 mm
ホイールベース|3,050 mm
トレッド 前/後|1,625 / 1,640 mm
最低地上高|140 mm
車両重量|1,900 kg
車両総重量|2,175 kg
エンジン|3,604cc V型6気筒DOHC
最高出力|210 kW(286 ps)/ 6,350 rpm
最大トルク|340 Nm / 4,650 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ウィッシュボーン / 5リンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
タイヤ|245/45/ZR20
燃費|9.2km/ℓ(JC08モード)
価格|538万円

           
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