JEEP GRAND CHEROKEE|ジープ グランドチェロキー 新型の試乗インプレッション
JEEP GRAND CHEROKEE|ジープ グランドチェロキー
時代に応じた、精悍なオフロード4WD
新型グランドチェロキーは、スタイリッシュな外観と、上質な作り、オフロード性能を売り物にしている。欧州のSUVとはまたちがう、独特の乗り味は、いちど体験してもいいかもしれない。市街地でもしっくりくる、クーペライクな外観も魅力的だ。
文=小川フミオ
新世代のV6エンジンに一本化
クライスラー日本が2010年3月12日に発売開始する新型グランドチェロキー。新開発V6エンジンを搭載し、オフロードで高い走破能力を発揮する4輪駆動システム「クォドラトラックII」、走行状況に応じて5つのドライブモードが選べる「セレクテレイン」システムなど、機能的な装備も豊富だ。上級車種のラレードにはエアサスペンションも備わり、路面状況によって車高を調節できる。
新型グランドチェロキーで注目に値するのは、時流にのったダウンサイジングコンセプトが採用されたことだ。日本で売られるモデルのパワーユニットは新開発の3.6リッターV6DOHCに統一された。
従来のグランドチェロキーは、4.7リッター、5.7リッター、それに6.1リッター(いずれもV8)とエンジン排気量は大きかった。今回の3.6リッターV6への一本化は大胆な選択だが、輸入元のクライスラー日本では、パワーは十分なので燃費を考慮してこのエンジンに統一した、とする。
実際に乗るとたしかにパワー不足の感はない。回転計には1,000~2,000rpmあたりにエコゾーンと表示されていて、そこを使って走ると燃費も良好なのだろう。高速など巡航時はそれを目安にするとよい。いっぽう、2,500rpmからエンジンははっきり目が覚める。アクセルペダルの踏み込みに対してレスポンスよく、もりもりとトルクがわき上がってくる。5段オートマチックギアボックスの設定も、走りたいドライバーには有効なトルクバンドを使わせてくれるようになっていて、パワフルな印象が強い。
347Nmという太いトルクが独特の力強さを生みだす
ハンドルへの反応はそれなりにちゃんとしている。この手のクルマなので、レスポンスがクイックすぎてはオフロードで危ないが、そのあたりのサジかげんは、手慣れたかんじだ。車輪が向いている方向をちゃんと感じさせ、かつ直進安定性も確保しながら、独特の操舵感が守られている。
標準装備される「セレクテレイン」は4WDシステム「クォドラトラックII」と組みあわされる。車内のコントローラーで5つのモードを選べるのが特徴だ。「サンドおよびマッド」「スポーツ」「スノー」「ロック」そして「オート」となる。目的は「あらゆる道で最適な走り」(クライスラー日本)をすることにあり、トラクションコントロールシステム、スロットルコントロール、シフトプログラム、トランスファー、ESPといった装備と関連制御される。
グランドチェロキーが欧州のライバルとちがうのは、加速時の感覚だ。オフロードの走破性の高さも誇るだけにサスペンションのストロークはそれなりに長いせいだろう。クルマが走っているとき、路面によっては、ゆらゆらと前後左右に、やわらかく揺れる場面がある。それでいて不安はないが、347Nmという太いトルクに支えられた加速感とともに、これをアメリカ的と表現すればいいのだろうか、独特の力強さを味わうことができる。おそらくグランドチェロキーのファンには、これが大きな魅力だろう。
洗練性でいえば、新型は大きく向上している。まず静粛性が高いことが印象に残る。アクセルペダルの踏み込みに対してエンジン吸気音が大きく聞こえるときもあるが、高速走行時の風切り音は比較的低く抑えられているし、路面からのノイズの侵入も少ない。ねじれ剛性が従来型の145パーセントというだけあって、フロアの剛性感は高く、かつインシュレーションも適切なのだろう。足の裏にわなわなと感じる振動もなく、高級感が強い。クライスラー日本によると、「インテリアに使う素材は、手に触れたときの印象を重視して選択している」というが、それもよく分かる。
ファストバックに近い、スポーティなデザイン
新型グランドチェロキーは従来型に比べて、ホイールベースが135mmも延長され、レッグルームが後席で100mm拡大している。いっぽう車体の全長は30mmプラスに抑えられている。全幅は55mm広くなっている。そこで室内の居住性が向上。さらに使い勝手の面でいうと、ドアの開口が従来より11度大きくなったという。これはほんとうに使いやすい。使うひとのために進化したといっていいだろう。
「ジープデザイン部の使命は、グランドチェロキーのデザインを一から見直し、ジープの高級感にあたらしい意義を見出すことでした」という製品デザイン担当者の言葉が広報資料に紹介されている。実際、新型グランドチェロキーは7スロットグリルというデザインアイデンティティこそ守っているが、リアハッチゲートの傾斜角を強くして、ファストバックスタイルに近くなり、スポーティだ。フェンダー部分やフロントグリルも合成樹脂やクロームパーツの使用を抑えた感があり、乗用車的な雰囲気が強くなっている。
英語には「ギーク」という言葉がある。いい意味でオモチャ(感覚)といった意味だ。クライスラーのもつジープというブランドの製品には、多かれ少なかれ、ギーク的な印象があった。ベースラインを構成するパトリオットから、ラングラー、チェロキー、どれも男のオモチャのような、遊び感覚をもっている。しかしグランドチェロキーは一歩踏み出して、女性が乗ってもいいし、国際的に通用するキレイ系なスタイリングを特徴とする。ゆえに競争力も高いだろう。あたらしい時代のジープだ。
JEEP GRAND CHEROKEE Laredo|ジープ グランドチェロキー ラレード
ボディサイズ|全長4,8825×全幅1,935×全高1,785mm
ホイールベース|2,915mm
車両重量|2,160kg
エンジン|3.6リッター V型6気筒エンジン
最高出力|286ps(210kW)/6,350rpm
最大トルク|347Nm(35.4kgm)/4,300rpm
トランスミッション|電子制御式5速AT
JC08モード燃費|7.8km/ℓ
CO2排出量|265g/km
価格|398万円
※CO2排出量は欧州データに基づく。