ランドローバー フリーランダー2 の実力|Land Rover
Land Rover Freelander2|ランドローバー フリーランダー2
SUVならSUVブランドにタイトル
ランドローバー フリーランダー 2の実力
昨年末、内外装のデザインを刷新すると同時に、従来の3.2リッター直列6気筒エンジンを2.0リッター直列4気筒エンジンに載せ替え、ダウンサイジングをおこなったランドローバー「フリーランダー 2」。このクルマ、ランドローバーブランドのエントリーモデルだから、とあなどることなかれ。スタイリッシュな「イヴォーク」の影にかくれがちとはいえ、SUV専門ブランドならではの哲学がこのクルマにも息づいている。いよいよ完熟した感のあるフリーランダー 2を、九島辰也氏がその成り立ちから紐解く。
Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by ABE Masaya
ランドローバーの起源
90年代から巻き起こったアメリカを起点とする世界的なSUVブームで、いまやほとんどの自動車メーカーが背の高いクルマをつくるようになった。1999年にはBMWが、2002年にはポルシェ、VW、ボルボが後を追った。
それまでのSUVはアメリカと日本のメーカーの専売特許。トヨタ「ハイラックスサーフ」や日産「テラノ」は北米でもヒットしたSUVだ。
では、ヨーロッパはというと、ランドローバーがその代表格となる。去年売り出した「イヴォーク」で初の2WDモデルを発売したが、それまでは“世界で唯一の4WD専門メーカー”と呼ばれていた。
では、そんなランドローバーの起源はというと、そもそもはジープと深く関係する。
第二次世界大戦で英国に置き去りになっていたそれを自動車メーカーが目をつけ、開発に至った。ウィリス MBかフォード GPWあたりだったとおもわれる。目をつけたのは、それを個人的に愛用していた当時のローバー社の役員だった。
ただし、その時点で用途はジープのそれとは大きく変わっていた。
アメリカ陸軍のオファーで開発されたジープとはちがい、戦後ということもあり荒れた農地を耕すことを目的にローバーは開発プロジェクトに取り組んだ。つまり、農耕用ということだ。
詳しい話は省くが、そんな背景からランドローバーは生まれた。
1948年のアムステルダムモーターショーに出品したのが、その第一号車となる。いわゆる「シリーズ 1」の出来上がりだ。
ランドローバーのモデルラインナップは今日でいうところの「ディフェンダー」の祖先となるシリーズ1、2、3と、70年にリリースされた「レンジローバー」、89年にその弟として誕生した「ディスカバリー」を柱とする。
ディスカバリーは当時でいうところのいすゞ「ビッグホーン」や三菱「パジェロ」をライバルとして開発されたモデルだ。
今回ここで紹介する「フリーランダー 2」は、90年代に開発がはじまった。アメリカのマーケットにおけるコンパクトSUVの躍進を見越しての追加モデルとしてである。
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ランドローバー フリーランダー 2の実力 (2)
ダウンサイジングはいいことずくめだ
初代「フリーランダー」の登場は1997年で、フルモデルチェンジを2006年におこない、それ以降「フリーランダー 2」となった。
基本的なボディフレームは「イヴォーク」と共有するFWDをベースとしたモノコック構造からなる。なので、これまで6気筒エンジンを横置きしてきた。
通常であればセンターデフを有する4WDパッケージングを優先してエンジンを縦に置くが、フレーム構造上それはできなかったのだ。そのため機構が少々複雑になっていたのは否めないし、アクセルのオンオフにたいして大きなエンジンが前後するスナッチ現象も起きた。その部分からするといささかムリがあったともいえる。
ところが、ご承知のようにイヴォークの誕生からランドローバーは2リッター直4ターボユニットを手に入れた。
フォード「エクスプローラー」にも積まれるエコブーストと呼ばれる汎用的なユニットだ。
なので、今度のフリーランダー 2にもそれが積まれるようになった。ワイドこそ1,910mmだが、全長4,515mmという車格を鑑みると、まさにピッタリの組み合わせである。
それに直噴式という、燃焼効率のいい、環境にやさしいことも忘れてはならない。窒素酸化物や二酸化炭素の排出量もこれで抑えられる。
それでいて、最高出力は前述した従来の3.2リッター直6より7ps多い240psを発揮する。これこそ、“高効率”といった感じだ。
また、エンジン単体で約40kg軽くなったのも利点。パワートレーンのダウンサイジングはじつにいいことずくめ。さらにトランスミッションもイヴォークとおなじ6段マニュアルモード付きのATが組み合わされる。これもまた高効率化のひとつに挙げられるだろう。
ただし、イヴォークがすでに9段AT搭載を発表しているだけに、今後このクルマにもそれが積まれる可能性がある。
実際に試験状態ではあるが9段AT仕様のイヴォークを運転したが、かなりスムーズでシームレスな変速を見せた。6速からオーバードライブ的なギア比となると、高速走行での燃費向上はかなり期待できそうだ。
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ランドローバー フリーランダー 2の実力 (3)
ランドローバーの血統
今回はインテリアの質感もかなり向上している。インパネとセンターコンソールのデザイン変更をしているが、サイドブレーキがレバー式から電子制御式になったのもそのひとつだろう。細かいところが上級モデルと共有する。これはカスタマーには嬉しい配慮だ。
乗ってみておもったのは、まずはコマンドポジション健在ということ。座面は高く、クルマの四隅を見下ろすような姿勢を自然ととれる。これはディスカバリーとまんまおなじ。基本的にはオフロード走行での優位性を目的としたものだが、オンロードでも車庫入れなどに役立つのはいわずもがな。使い勝手の良さを実感できる。
そして走りだして感じるのは、バランスのよさ。少々フロントヘビー気味であった前後の重量配分は均整がとれ、鼻先が軽く感じ、ハンドリングが軽快になった。クルマ本来のサイズ感が伝わってくるといったところだ。
また、いまさらだが、このターボは低回転から効くためそれほど回転数を上げなくても太いトルクでクルマを前へ押しやれる。この辺はまさに排気量ダウンのネガティブイメージを払拭させるテイストだ。
と、このとき感じたのだが、新型はボディ剛性も上がっているでは、ということ。
ステアリングを切り込めば切り込むほど、ボディとの一体感は強く得られた。それに静粛性も確かに向上した。
なるほど、パワートレーンの変更にともない、この辺も手が入ったのではないかとおもわれる。
そんなフリーランダー2の日本仕様はワングレードとなる。価格も装備のわりにはグッと抑えられ、399万円を実現した。一番身近なランドローバーだ。だが、欲を言えば今回エクステリアにもう少し変化があってもよかった。中身がこれだけよくなっているのだから、カスタマー心理を煽っても罪にはならないだろう。
まぁ、このコンサバティブさがこいつの魅力であるは百も承知なのだが。となると、次のフルモデルチェンジでガラリとかわるのか?
Land Rover Freelander 2|ランドローバー フリーランダー2
ボディサイズ|全長 4,515×全幅 1,910×全高 1,740 mm
ホイールベース|2,660 mm
トレッド 前/後|1,600 / 1,615 mm
最低地上高|210 mm
最小回転半径|5.5 メートル
重量|1,820 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 DOHC 直噴ターボ
最高出力| 177 kW(240ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|340Nm / 1,750 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|4WD(ハルデックス リアアクスルディファレンシャル付きフルタイム4WD)
タイヤ|235/65R17
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|リンクストラット
0-100km/h加速|8.8 秒
最高速度|200km /h
燃費(JC08モード)|9.0 km/ℓ
CO2排出量(EU複合)|224g / km
価格|399万円