アフロビートの先駆者フェラ・アニクラクポ・クティを讃える熱いイベントへ

MUSIC｜FELABRATION TOKYO 2025

代官山UNITにて音楽イベント「FELABRATION TOKYO 2025」が開催される。15時から23時までの長時間にわたるこのイベントは、アフロビートの創始者であり人権活動家としても知られるナイジェリアの音楽界の巨人、フェラ・アニクラポ・クティを追悼し讃えるフェスティバルだ。日程は2025年10月26日（日）。

Text by WASEDA Kosaku

アジアで数少ない公認イベント

FELABRATION（フェラブレーション）は、1998年にフェラの娘の一人であるイェニ・アニクラポクティ氏によって考案されたアフロビートが主役のイベント。彼の誕生月である10月に世界各地で開催されているが、ナイジェリアの本家運営側から許可を得た公認開催は極めてレア。アジアでは大阪とシンガポールのみであったが、昨年東京での公認開催が行われた。今年は東京で2回目の開催となる。

フェラの没後、2000年代初頭にはAntibalasやAkoyaAfrobeatといったニューヨーク発の次世代アフロビートバンドが登場し、世界的なムーブメントが巻き起こった。日本でもKingdom Afrocksを筆頭に、JaliBu Afrobeat Arkestra、Ajate、Bunvestroといったバンドがシーンを牽引してきた。

現在も、アフロビートの洗礼を受けたミュージシャンやDJたちの草の根的活動によってグルーヴを体感できる場は存在するが、一般リスナーへの浸透は依然として困難だ。

アフロビートの魅力といえば、15人以上で構成されるビッグバンドサウンド。しかし、大所帯バンドならではの課題として、メンバー間のスケジュール調整、演奏者のギャランティー、演奏場所の確保など、情熱だけでは乗り越えられない壁が立ちはだかる。

そして、日本においてアフロビートというジャンルが定着していないことも課題だ。

ビッグバンドスタイルのアフロビートを体感できる機会の少なさ、リズムセクションが比較的単純なフレーズの繰り返しであるためミュージシャンが演奏を楽しみにくいこと、英語によるメッセージが日本では伝わりにくいこと、そしてアフロビートの核心である社会的・政治的メッセージが十分に理解されていないことなどにあると、主催者は考えている。

フェラが問題提起したのは、汚職による貧困、経済的不平等、人権侵害、犯罪の増加など、1970年代のナイジェリアという壮絶な状況下での課題だった。

本イベントの目的は、アフロビートを一過性のムーブメントではなく、文化として定着させること。フェラの鼓動ともいえるアフロビートを演奏し、歌い、感じることで、彼が生涯をかけて伝えようとしたメッセージへの理解を深め、より良い世界と未来を築く主体性を育む場を創造することを目指している。

アフロビートは、ダンスミュージックでありながら、社会的・政治的な問題提起を人々に投げかける音楽。世代やジャンルを超えた人々がビッグバンドの強力なグルーヴで踊りながら、自分たちの現在と未来を主体性を持って考える場を持つことは、極めて意義深い行為であるという。

今回のライブには、R.S.J Collectiveをバックバンドに、A.Y.A.とYoshi Takemasaが出演。スペシャルゲストとして、OKI、Gen Ogimi、CHOZEN LEE、ARIWA、Mika Arisaka&The Sunshowers、COMA-CHI、DEADMANN、MOTOHARUらが参加し、フェラの楽曲を中心としたライブショーが展開される。

FELABRATION TOKYO は、単なる音楽イベントではなく、ヴィジュアルアート、写真、ダンス、ファッションなどの要素も取り入れた総合的な文化イベントとして、今後も毎年恒例で開催していく予定だ。

彼が訴えたアフリカ人としてのアイデンティティとは何か。日本人としての我々のアイデンティティと役割とは何か。自分たち自身で希望と未来を創造していくために、世代を超えて一緒に考える場と機会を創ることで、自ら行動し発信していく人が増えていくことを、主催者たちは切望している。