2代目フライングスパーを北京でテスト|Bentley
Bentley Flying Spur|ベントレー フライングスパー
2代目 フライングスパー を北京でテスト
ジュネーブモーターショーで初公開され、先日日本でもお披露目されたばかりのベントレーの4ドアサルーン、新型「フライングスパー」。九島辰也氏が北京で試乗した。
Text by KUSHIMA Tatsuya
いいものは売れる
アベノミクス効果で日経平均1万5,000円を超えそうな日本経済だが、ベントレーの販売状況を知ると「それがどうしたの?」ともいいたくなる。
昨年日本での販売台数は190台で、前年比でいうと73パーセントジャンプアップという結果を導いた。母数が少ないので強くはいえないが、この国はどこの誰が主導者になっても、いいものは売れるという下地ができている気がする。
“いいもの”かどうかは、グローバルマーケットの動向でもわかる。2012年のベントレー世界販売台数は8,510台で、前年比22パーセントアップとなった。つまり、各地で経済不安が叫ばれようとも、このクルマは現実に売れているのだ。
世界最大のマーケットはアメリカで2,457台を売った。次は中国で2,253台を記録する。その他では前年比44パーセントアップと、中東が気を吐く。……と、ここであることに気づく、世界第一位と第二位が肉薄しているではないか。
そんなことが関係してか、新型フライングスパーの国際試乗会はなんと北京でおこなわれた。
国際免許証が役に立たないばかりか、テンポラリーでも現地の免許証が必要という、かなり手続きが通常とことなる上での開催だ。
しかも、市内中心地は東京やロンドンを超える渋滞。そこでどれだけ新型を試せるか、少々疑心暗鬼なイベントとなる。
ただ、そこはベントレー。抜かりなくスムーズにプログラムはスタートした。各国のジャーナリストはみな現地で無事に免許証を手に入れ試乗することができた。過酷な渋滞や路面の劣悪な状態も、走り出せばどこの国もおなじ? と思い込めば、なんとかなるもんだ。
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2代目 フライングスパー を北京でテスト (2)
625psの4ドアサルーンとは恐れ入る
さて、新型フライングスパーである。
このクルマの特徴は……その性能にある。最高出力625ps、最高速度322km/hは恐れ入る。というのも、この625psという数値は「コンチネンタル GT スピード」とおなじ。通常の「コンチネンタル GT」の575psを50psも上回るものだ。
ではなぜ、4ドアサルーンに2ドアクーペの、しかもハイパフォーマンス版のエンジンを載せたのか。その理由は……このクルマが売れているからにほかならない。
キープコンセプトながらもあたらしい
エクステリアはキープコンセプトながら、ほぼすべてがあたらしくなっている。
ルーフラインはよりフォルムが強調され、全体的に流れる感じが強まった。また、ボディパネルのつなぎ目も感じさせず、シームレスな装いを漂わせる。実際、従来ヘッドライトの部分で切れていたパネルはかなり下の部分まで切れ目なく一体となる。この辺を知っておくと通っぽくていいだろう。ひとめで「これはモデルチェンジ前」とかいえるようになる。
おもいのほか変わっていたのはテールランプ。今回はかなり大きく横長になった。ここはスクエアに近い従来型とは明らかにことなる。
そしてインテリアだが、こちらもキープコンセプトとしながら600ものパーツを入れ替えるなど手が込んでいる。ディテールに魂が込められたといった感じだ。スイッチ類の触れたときに伝わる感覚がいい。洗練さが乗員を凛とさせる。
また今回はタッチスクリーンからなるナビゲーションシステムが最新のものに変わったのもそうだが、リア専用のエンターテイメントシステムが備わるなど充実ぶりが目につく。この辺はホンキで勝負をかけてきた証だろう。
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走りの進化は?
それでは実際にステアリングを握った印象へ移ろう。
まず、おもったのは静かだということ。そもそもそこが長けているのはいわずもがなだが、それが新型はさらに進んだ。フロアからの振動が皆無なら窓越しの風キリ音もうまく消されている。聞くところによると大量の吸音パネルや防音ガラスが採用されているようだ。
そして乗り心地はじつに快適。コンピューター制御のエアサスペンションは再設計され、進化した。
考え方としてはこうだ。
通常走行時に乗り心地をやわらかくし、コーナーリングなどクルマの挙動に変化を生じたとき硬くする。それによりドライバーが走りたいときにしっかり対応するというわけだ。で、通常それをコンピューターが自動制御するわけだが、任意にスイッチで設定することも可能。“sport”から”comfort”までを4段階で区切られる。
いろいろ試したが、“sport”にしても硬すぎないのがベントレーらしい。このクラスともなれば、ただ単に硬くすればいいってもんじゃない。
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どこまでも行ける
それにしても試乗車はすべてオプションの21インチを履いていたが、とてもそこまでのロープロにはおもえない乗り味だった。
エンジンパフォーマンスについては多くを語るまでもないだろう。
世界有数のスーパーカーに匹敵する625psという数値は、簡単に「ああだ!こうだ!」いうものでもない。2,000回転で最大トルクを発生するのだから、足をほんのちょっとアクセルに載せていればどこまでも行ける気になる。
そして、ガバッと踏めばとてつもないトルクが発生し、遠くの景色がグイグイ迫ってくるのだからたまらない。このとき、パドルシフトで高回転までエンジンを引っ張るのもいいが、ATモードに任せるもよし。ZF製8段ATはスタートからずっとシームレスで、6速以上はオーバードライブといっても過言ではない滑らかさをもつ。
ドライブコースは全行程で400kmほどあった。
北京市内から北上し、万里の長城にタッチして戻るというもの。パートナーとなったのは若きオーストラリア人のラグジュアリーマガジンのオーナーだが、彼と意見が合ったのはまさにゴールしたとき。
それなりの距離を走ってもおもいのほか疲れていない。なるほど、これがベントレーの神髄か。ドライバビリティがありながら快適性を失わない彼らのクルマつくりには、ひたすら感心するばかりであった……
Bentley Flying Spur|ベントレー フライングスパー
ボディサイズ|全長 5,295 × 全幅 1,976 × 全高 1,488 mm
ホイールベース|3,065 mm
トレッド 前/後|1,643 / 1,642 mm
重量|2,475 kg
エンジン|5,998cc W型12気筒 直噴DOHC ツインスクロール ツインターボ
最高出力| 460 kW(625ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|800 Nm / 2,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(ZF社製、クイックシフト、ブロックシフティング、パドルシフト付
駆動方式|4WD (前60:後40)
サスペンション(前)|4リンクダブルウィッシュボーン式エアサスペンション
サスペンション(後)|トラペゾイダルマルチリンク式エアサスペンション
タイヤ 前/後|275/45ZR19
最小回転半径|5.85 m
Cd値|0.29
最高速度|322 km/h
0-100km/h加速|4.6 秒
燃費(EUサイクル値)|14.7 ℓ/100km
CO2排出量|343 g/km
価格|2,280 万円