マツダ アテンザに試乗|Mazda
CAR / IMPRESSION
2014年12月5日

マツダ アテンザに試乗|Mazda

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

アテンザに試乗

マツダ「アテンザ」。海外では「MAZDA 6」として販売される、マツダのフラッグシップモデルである。世界中で高い評価を受けるアテンザだが、当然日本でも売れゆきは好調だ。特にディーゼルエンジン搭載車は、先に搭載された「CX-5」の評判の高さもあり、ドイツから日本に上陸したBMWのディーゼルエンジンを迎え撃つモデルとして話題にのぼった。そんなアテンザのハンドルを九島辰也氏が握る。

Text by KUSHIMA Tatsuya

クリーンディーゼルは欧州の専売特許ではない

アテンザが売れている。自動車関連のメディアに目を通すかたならそんなニュースが発信されているのをご存知だろう。昨年11月20日に発売したそれは、12月末までに8,500台の受注台数を得た。1ヶ月の販売計画が1,000台だからじつに8ヶ月分に値する。

だが、その程度のニュースなら他メーカーにだってある。日産「ノート」もそうだし、トヨタ「クラウン」もまた、「販売好調」の文字は踊る。がしかし、アテンザにはほかにはない販売特性がある。それが「スカイアクティブ」の目玉のひとつでもあるディーゼルエンジン車。なんとこのクリーンディーゼルを搭載したモデルが全体の8割近くを占めるというから恐れ入る。もはやクリーンディーゼルはヨーロッパメーカーの専売特許ともいえなくなってきた。まさに新機軸の登場といったところだ。

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

ではそのディーゼル車、なにがそんなに優れているかというと、まずは燃費。日本オリジナルのJC08モードでいうと、6MT車で22.4km/ℓ、6AT車で20.0km/ℓとなる。数値だけでいえばハイブリッド車に迫る勢いだ。というか、つかいかたによってはハイブリッドを凌駕する。

そして次に運転のしやすさ。ディーゼルエンジンの特性でもある低速域の太いトルクがスムーズな運転を約束する。こちらも数値だけを見れば、4リッターV8ガソリンエンジン並み。回転数を上げずに走れるのだから燃費にだって役立つってもんだ。さらにこいつは高回転の伸びも特筆。大小2つのタービンが備わるのだが、それがしっかり高回転域まで過給してくれる。4,500~5,000rpmに入るあたりのディーゼルらしくない? 伸びは感動すら覚えるだろう。

と、ここでおもい出したのが「BMW320d Blue Performance」のディーゼルユニット。

BMWがつくるとディーゼルもこんなにスムーズにまわるのか
と感心させられる。吹け上がりのリニアなフィーリングはピカイチだ。ただし、この2モデルともに6,000回転までしっかりまわるという面ではいい勝負だとおもう。

既存のディーゼルにたいするイメージをガラリとかえるだけの要因は十分にもちあわせている。

またこのときのエンジンサウンドが気持ちいいのも報告しておこう。しっかりチューニングされたそれが加速感を演出する。これがディーゼル? とおもわずニヤけてしまうほどだ。ボーズサウンドシステム搭載車はさらにそれを増幅させる機能が付いているから楽しい。

マニュアルトランスミッションで操る楽しみ

今回そんな高回転領域をつかった走りを試せたのは6MTが用意されていたのも関係する。

各ギアでしっかり上までまわすことでそれを確認した。と同時に、これはうれしい配慮でもある。MTが死滅しそうな日本のマーケットにおいて、こうした日常使いのクルマに設定されるのは重要なことだ。

なぜなら普段からクルマの運転が楽しいとおもえることが、いまの日本のクルマ社会には欠けている。

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

その点ではBMWのディーゼル車にもMTは欲しいところだが、日本仕様はその設定がない。かつてアルピナのディーゼル車をMTで走らせたことをおもい出しても、それがないのは寂しい限りである。パドルでスパスパっとギアを切り返すのもいいが、手のひらでクルマの振動を感じ、手首でギアを操作するあの感覚はやはり特別である。

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

アテンザに試乗(2)

練りに練ったセッティングには17インチタイヤがベストチョイスか

ということでアテンザのディーゼルは全方位的にかなりいい。もちろん、「CX-5」で体感済みではあるが、クルマがかわると特性も若干かわる。マツダ自社製のMTとのマッチングも相当練りに練ったのではないかとおもえるくらいグッドな相性だった。

では、乗り心地はというと、オプションの19インチはイメージより少々硬めだった。

最近はタイヤの性能が上がり大径ホイールも違和感はなくなってきたが、それにしては硬過ぎる。段差を越えるときのゴツンという感覚はフロントシートでこそ許容できるが、リアシートはどうだろう。

あまりクルマが得意でない人を乗せたらすぐに酔ってしまいそうだ。

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

そんなことを考えながら、今度は2リッターガソリン車に乗る。するとこいつは乗り味がすこぶるいいではないか。標準の17インチを履いたそれはしっとりした快適さを提供してくれる。となると基本的にはアテンザは17インチにあわせたセッティングなのだろう。ちなみに開発はお馴染みの三次テストコースだが、サスペンションの最終セッティングはヨーロッパ仕様とおなじだそうだ。

このほかには2.5リッターガソリンエンジン+6AT車のステアリングも握った。こちらはアテンザのなかで、もっともパワフルなユニット搭載車となる。もちろんそれだけに2リッターでは物足りなかった中間加速を得ることができた。当然これはこれでアリの仕様だ。

今回ワゴンボディに1台も乗らなかったが、3つのエンジンと2つのトランスミッションに乗ることができた。で、結論をいえばディーゼル、ガソリンともにこのクルマに求めるものはちゃんと備わっていた。ディーゼル+6MT/6ATも2リッター/2.5リッターガソリン+6ATも試乗時間目一杯楽しめた。嗜好順位はあるものの、これはいいがあれはダメということはない。

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

MAZDA Atenza|マツダ アテンザ

マツダらしいデザイン

こうした全体的な好印象を司るのはエクステリアデザインも貢献する。あらためていうまでもないが、躍動的なボディラインとバランスのとれたパッケージングはうまくまとまりをつけている。個人的にはフロントフェンダーの膨らみが好きだ。

逆にこれだけ完成度が高まると今度はインテリアのデザインが気になる。エクステリアやハードウエアをせっかくマツダらしいアイデンティティで仕上げているのだから、ここもそうあって欲しかった。これでは見ようによってはまんまドイツ車である。

ほんの少しの改善で世界をリードする日本車になる

そんなところを改善していただければ、アテンザは世界に誇れる日本車として完成するであろう。今後さらに加速するとおもわれる韓国車や中国車の台頭を鑑みれば、それは急務かもしれない。いま求められるのは世界基準の日本オリジナル。アテンザはそれにもっとも近いポジションにある一台といえる。

spec

MAZDA Atenza XD|マツダ アテンザ XD
ボディサイズ|全長4,860×全幅1,840×全高1,450mm
ホイールベース|2,830 mm
トレッド 前/後|1,585 / 1,575 mm
最低地上高|160 mm
最小回転半径|5.6 メートル
重量|1,490 kg
エンジン|2,188cc 直列4気筒 直噴DOHC ツインターボディーゼル
圧縮比|14 : 1
ボア×ストローク|86×94.2 mm
最高出力| 129kW(175ps)/ 4,500 rpm
最大トルク|420Nm(42.8kgm)/ 2,000 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
ギア比|1速 3.357
2速 1.826
3速 1.565
4速 1.147
5速 0.893
6速 0.745
減速比|1-2速3.850 3-6速・後退2.961
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|225/45R19
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|22.4 km/ℓ
CO2排出量|117 g/km
燃料タンク容量|62 ℓ
価格|302.6万円

MAZDA Atenza 20S|マツダ アテンザ 20S
ボディサイズ|全長4,860×全幅1,840×全高1,450mm
ホイールベース|2,830 mm
トレッド 前/後|1,585 / 1,575 mm
最低地上高|160 mm
最小回転半径|5.6 メートル
重量|1,430 kg
エンジン|1,997cc 直列4気筒 直噴DOHC 16バルブ
圧縮比|14 : 1
ボア×ストローク|83×91.2 mm
最高出力| 114kW(155ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|196Nm(20.0kgm)/ 4,000 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
ギア比|1速 3.552
2速 2.022
3速 1.452
4速 1.000
5速 0.708
6速 0.599
減速比|4.325
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|225/55R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|17.4 km/ℓ
CO2排出量|133.4 g/km
燃料タンク容量|62 ℓ
価格|250万円

MAZDA Atenza 25S L Package|マツダ アテンザ 25S L パッケージ
ボディサイズ|全長4,860×全幅1,840×全高1,450mm
ホイールベース|2,830 mm
トレッド 前/後|1,595 / 1,585 mm
最低地上高|160 mm
最小回転半径|5.6 メートル
重量|1,450 kg
エンジン|2,488cc 直列4気筒 直噴DOHC 16バルブ
圧縮比|14 : 1
ボア×ストローク|88×100 mm
最高出力| 138kW(188ps)/ 5,700 rpm
最大トルク|250Nm(25.5kgm)/ 3,250 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
ギア比|1速 3.552
2速 2.022
3速 1.452
4速 1.000
5速 0.708
6速 0.599
減速比|4.056
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|225/45R19
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|15.6 km/ℓ
CO2排出量|148.8 g/km
燃料タンク容量|62 ℓ
価格|300万円

           
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