クライスラー イプシロンに早速試乗|Chrysler
CAR / IMPRESSION
2014年12月26日

クライスラー イプシロンに早速試乗|Chrysler

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

イプシロンに早速試乗

11月15日に、クライスラーブランドからの日本上陸となった3代目にあたる「イプシロン」。本国イタリアでは、ランチアブランドで販売されているクルマだ。コンパクトなエンジン、コンパクトなボディで、一見2ドアハッチバックのように見えながら、実は4ドア、5人乗り。OPENERSは、このエレガントなスタイルと実用性を両立するイプシロンを、小川フミオ氏とともに、さっそく都内で試す機会を得た。

Text by OGAWA Fumio
Photographs by ABE Masaya

個性的なコンパクトカー

ダウンサイジング時代の先陣を切るがごとく、2気筒エンジンで気を吐くハッチバック「イプシロン」。ブランドがランチアからクライスラーへと変わったが、小型車づくりに長けた欧州の血統を感じさせる出来だ。

買収による企業合併で誕生したフィアット クライスラー。日本法人であるフィアット クライスラー ジャパンが2012年11月に発売したクライスラー イプシロンは、全長3,835mmのコンパクトな車体に、わずか875ccの2気筒+ターボ・エンジンを搭載。欧州で大きな流れになっているダウンサイジング(エンジンの小排気量化)を地でゆくモデルだ。

イプシロンは1994年に初代が発表された。

当初より、小型ボディに上質なつくりとシャレっけのあるデザインを組みあわせたコンセプトがセリングポイントになってきた。フィアット「500ツインエア」をベースに開発されてはいるが、類車のない個性がクルマ好きの興味を惹くモデルといえる。

実際に台場かいわいで試乗した3代目イプシロンは、スタイリングも乗り味も、いい意味で個性をしっかり備えたクルマだった。

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

イプシロンに早速試乗(2)

はっとするスタイリング

「アートの領域まで高められた独創的なフォルム」とは、フィアット クライスラー ジャパンが、イプシロンのことを謳った惹句である。それに同意できるかどうかは措いておくとしても、見た目に強く印象に残るクルマである。

クルマのスタイリングの妙とはバランスにある、と自動車デザイナーは言う。たしかにイプシロンのサイドビューは美しい。前後車輪と、前後オーバーハングを含めたボディとの関係が、きれいに収まっている。これは画像からではわかりにくい。路上で見かけたときに、はっとするだろう。

リアドアのハンドルがモール内に隠されているとか、リアコンビネーションランプの流れるような形状とか、1930年代の工業デザインを代表するプロダクトと讃えられる、デソート(かつて存在したクライスラー傘下のブランド)「エアフロー」へのオマージュを謳うフロントグリルとか、悪くいえばデザインのためのデザインともいえるディテールが散見されるが、全体のプロポーションは、練り込まれた、よくできたものなのである。

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

よく走る!

走らせての印象は、まず「意外なほどよく走る」と感心した。145Nmのトルクは1,900rpmで発生する設定だが、静止からアクセルペダルを踏み込むとエンジンは軽々と3,000rpmを超え、クルマは痛痒なく加速する。

ギアボックスはロボットによる自動変速システムを備えた2ペダル式の5段で、トルコンATを運転するつもりで、ずぼらにアクセルペダルを一定量踏み込んだままだと、ガクンガクンとシフトアップするときにショックを感じる。

そのショックも以前よりはだいぶマシになったことが印象に残ったが、スムーズに運転したいなら、適当なタイミングでアクセルペダルを踏んでいる足の力を弱め、シフトアップをうながしてやるといい。

基本的に室内の静粛性は悪くないのだが、直列2気筒エンジンの、威圧的でない「トコトコトコ……」という爆発音が、加速とともに大きめに聞こえてくるのもそう悪いものではない。あまりに早い速度での加減速の繰り返しは得意でないかもしれないが、東京なら首都高速のような道でも難なく周囲のペースに乗って走れる。

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

イプシロンに早速試乗(3)

イタリア車ファンの期待にも応えるはずだ

イプシロンでもっとも印象的なのは、ハンドリングだ。ひとことでいうと、すばらしくスポーティ。一時代前のアルファロメオの、ネガティブキャンバーによるセッティング(タイヤがハの字についていること)を連想させる、カーブをおもしろいほどクイクイと曲がっていく感覚はじつに痛快だ。

アクセルペダルとギアの操作で最適なトルクで走れるよう心がける運転といい、ドライバーの意思に忠実なハンドリングといい、一体感がじつに気持ちいいクルマである。小さなクルマを味わいつくすというような、イタリア車にファンが期待する要素がしっかりある。

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

乗り心地もけっして悪くなく、リアシートにも175cmの乗員が2名座っていられる(ただしヘッドルームに余裕はないが)パッケージングといい、デザインから想像するよりはるかに実用的で機能主義的に設計されたクルマなのだ。試乗したのは、「プラチナ」(260万円)という上級グレードだったが、195/45R16サイズのタイヤやレザーシートの代わりに、185/55R15タイヤとファブリックシートの「ゴールド」(235万円)のほうが、より乗り心地などがソフトかもしれない。今度機会があれば試乗したいと興味が湧く。

きっと好きになる

イプシロンのライバルには、おなじエンジンのフィアット「500ツインエア」(230万円から)、999cc3気筒のフォルクスワーゲン「up!」(149万円から)など、魅力的で個性のあるクルマがある。

up!がスマートフォンなどのデザインとの近似性を感じさせ脱自動車的であるのにたいし、イプシロンは従来の自動車の文法にのっとったうえで、これまでとちがう方向を目指そうとしているといえるかもしれない。どちらがいいかは好みの問題だが、あまり難しく考えずイプシロンに乗ったとしても、きっと好きになれるとおもう。

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン

spec

Chrysler Ypsilon|クライスラー イプシロン
ボディサイズ|全長3,835×全幅1,675×全高1,520 mm
ホイールベース|2,390 mm
トレッド 前/後|1,415 / 1,410 mm
重量|1,090 kg(サンルーフ付1,130 kg)
エンジン|875cc 直列2気筒 インタークーラー付ターボ
最高出力| 63kW(85ps)/ 5,500 rpm(エコモード時 57kW(77ps)/5,500 rpm)
最大トルク|145Nm(14.8kgm)/ 1,900 rpm(エコモード時 100Nm(10.2kgm)/2,000 rpm)
トランスミッション|ATモード付き5段シーケンシャルトランスミッション
駆動方式|FF
タイヤ 前/後|185/55R15(ゴールド)/195/45R16(プラチナ)
燃費(JC08モード)|19.3 km/ℓ
CO2排出量|97 g/km
価格|ゴールド 235万円 / プラチナ 260万円

           
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