OPENERS CAR Selection 2013 河村康彦 篇
OPENERS読者におくる2013年の5台
OPENERS CAR Selection 2013 河村康彦 篇
2013年のベストカー5台を河村康彦氏がセレクト。いま“OPENERS読者が注目すべきクルマ”とはなにか。そして、ことしのクルマ業界についても総括していただいた。
Text by KAWAMURA Yasuhiko
豊作な年
「オススメの5台を選んで欲しい」と問われても、それだけの数を選出するのに困ってしまう年もあるいっぽうで、2013年はまちがいなく“豊作”とよべる1年となった。
2008年の“リーマンショック”からまる5年。そのショックを引きずりながら、成長をつづける新興国市場にターゲットを絞り込んで、ひたすらコストダウンに走った事があからさまに見えるニューモデルもまだ少なくはない。
が、「やはりそれでは自動車としての進化は見込めない」と考えをあらため、ふたたび世界の最先端で戦える商品力をそなえた日本車が復活し始めたのが、2013年という年であったようにもおもう。たとえば、マツダ「アテンザ」やホンダ「フィット」などがその好例だ。
日本車のなかでは、フルモデルチェンジをおこなったレクサス「IS」も、印象に残る1台だった。なかでも、前輪側にも電子制御による可変ギア機構をそなえた4WSメカや、やはり電子制御による可変減衰力機構との操縦性統合制御システムをそなえた、シリーズ最高峰の「IS350 Fスポーツ」のフットワークは、クルマを降りてしばらく時間が経った後でもそのテイストが脳裏に蘇る鮮烈なものだった。そのほかのグレードも含め、日本発のプレミアムブランドの作品として、世界のどこに出しても恥ずかしくない高い商品力を実感させてくれるのが、このISというモデルであったのだ。
しかしながら、振り返ればそれを軽々と上回る衝撃を放ったのは、やはり7代目となった新型「ゴルフ」だ。
率直なところ、そのルックスは従来型にたいして、うっかりすると「一体どこが変わったの?」と、そうした声も出てきそうな“想定内”の仕上がり。しかし、そんな新型に乗ったすべての従来型ユーザーは、走りはじめたその瞬間に、まずは格段に進歩をしたその静粛性に圧倒されるにちがいない。さらに、乗り味のしなやかさ、クラストップの燃費性能など、実用車としてはもうこれ以上望むところはないというさまざまな性能を実現させている。そんなバランスレベルの高さは、ほかのどんなライバルも足元にも及んでいないものだ。
結局のところ、1年が終わってみれば「そんなゴルフが放ったインパクトこそが、まさにほかに類をみないものだった」と納得せざるを得ない。それこそが、2013年という年だったのである。
河村康彦がOPENERS読者にオススメする2013年の5選
今年の輸入車界はゴルフの独壇場! となるかとおもいきや、それを阻止する健闘ぶりを見せたのがV40だった。“四角いボルボ”の呪縛から見事に脱却したそのエクステリアデザインは、端的にいって「従来型からさしてかわり映えしない」ゴルフなどよりもはるかにスタイリッシュ! ドアを開けば、“スカンジナビアン デザイン”が売りのインテリアも、やはりゴルフのそれよりはるかに“華”がある。
VWとくらべるべくもないディーラー網にやや不安は残るものの、運動性能や価格面でも見所いっぱいの1台だ。
おなじSグレードMT仕様の初代モデルからの乗りかえで、“大借金”を背負いつつ個人的にも購入に踏み切ってしまったのがこのモデル。エクステリア デザインは初代モデルからの踏襲が鮮明だが、その走りのポテンシャルは乗れば乗るほどに、従来型をそれも予想以上の歩幅で上回っていることを日々実感させられている。
2シーターのミッドシップ モデルなど、みるべき実用性をもたないのではないか? とおもわれるかも知れないが、エンジンルームを“封印”して前後にラゲッジスペースをもうけたこのモデルは、数少ない例外でもある。
Honda Fit
ホンダ フィット
「ますます日本車との実力差が開いてしまったナ」と認めざるを得ない輸入車が次々上陸したなかにあって、そんな“舶来もの”たちにたいして一矢を報いる頑張りを実感させてくれたのが、モデルチェンジをおこなったフィット。「“つまらないハイブリッド”はつくらない」と開発者自らが宣言した上で、実際にシリーズきっての逞しい走りをしめすハイブリッド モデルや、軽く20km/ℓをこえる実用燃費を叩き出す1.3リッター モデルなどどれも魅力一杯。簡単アレンジで驚きの空間を生み出せる後席など、フィットならではの特長点ももちろん健在だ。
失礼ながら(!)、さしたる期待も抱かず走りはじめてみれば、「嗚呼びっくり!」の非凡なる実力を味わわせてくれたのが“普通のルーテシア”。国内導入されるルノー車で初めてDCTと組み合わされたエンジンが生み出す加速感は、1.2リッターという排気量を忘れさせる力強さ。極めて滑らかでありながらも路面とのコンタクト感を色濃く伝えてくれるステアリングのフィーリングも、おなじ“電動式”でありながら中立付近がプラプラと頼りない日産車のそれに、何故グループ内での”シナジー効果”が生きないのかと、心底不思議になるものですらあったのだ。