メルセデス・ベンツ GLクラスに試乗|Mercedes-Benz
Car
2014年12月5日

メルセデス・ベンツ GLクラスに試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

メルセデス・ベンツのフラッグシップSUVに試乗

メルセデス・ベンツの四輪駆動システム「4MATIC」採用モデルが充実を見せている。最近では「CLS 63 AMG」や、新型「E 63 AMG」への採用も報じられたほか、「CLAクラス」や、「A 45 AMG」では、メルセデス・ベンツ初となるFFベースの「4MATIC」搭載が予告されている。その「4MATIC」の頂点に立つ、もっともヘビーデューティーなシステムといえるのが、フラッグシップSUV「GLクラス」に搭載されるそれだ。河村康彦氏が、2012年4月のニューヨークモーターショー2012にてデビューを果たした新型「GLクラス」と、その「4MATIC」を解説。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

SUVの「Sクラス」

メルセデス・ベンツがこれから先、“4MATIC”を名乗る4WDモデルのラインナップをより充実させていく動きを鮮明にしている。これまではなかったFFレイアウトベースの4WDモデルをあらたに設定。これを含め、現状では51という4WDモデルのバリエーション数を、近い将来ほぼ60にまで増やす計画があるというのだ。

ちなみに、電子制御式の油圧多板クラッチをもちいた、いわゆる“トルクオンデマンド”方式の4WDシステムを採用と発表された、あたらしいしいFFレイアウトベースの“4MATIC”車の位置づけは、「2輪駆動モデルよりもスポーティなものとする」のもすでに決定事項という。その象徴的存在として間もなく姿をあらわすことになりそうなのが、コンパクトな4ドアクーペのボディに400Nmを超える最大トルクを発する2リッターのターボ付き4気筒エンジンの搭載があきらかにされた「CLA 45 AMG」というわけだ。

いっぽうで、FRレイアウトをベースとした既存の“4MATIC”シリーズのなかで、あらたな頂点に立つことになったのが、自ら“SUVの「Sクラス」”というキャッチフレーズを標榜する、昨年春にデビューの新型「GLクラス」だ。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

全長が5.1メートルを超え、全幅も2メートルに迫ろうというその巨体が決して道路インフラが充実しているとは言えないこの日本にフレンドリーなものかと問われれば、当然そこでの答えは「NO!」とならざるを得ない。いっぽうで、日本では“常識はずれ”ともいえるそんなスケールのボディがもたらす、このモデルならではの存在感の強さはやはり圧倒的だ。

昨今では、SUVでありつつも流麗さを狙った「背の高い4ドアクーペ風」のクロスオーバー的プロポーションを特徴とするモデルも見受けられるなかで、このモデルの佇まいは先代モデルと同様のいかにも正統派のSUVといった風情が強くただようもの。ほぼ水平ラインのルーフを、ボディのほとんど最後端まで引っ張ったその姿からは、いかにも広い室内空間も連想させられる。

3列シートを備えた7シーターモデルでもあるGLクラスが、前述の“SUVの「Sクラス」”というフレーズを謳うあたりには、当然そんな居住性の高さも含まれているにちがいないのだ。敢えて「奇をてらわないデザイン」もまた、新型GLの特徴といってよい。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

メルセデス・ベンツのフラッグシップSUVに試乗(2)

もっともヘビーデューティーな4MATIC

「Mクラス」「Rクラス」とも共通する前後アクスルへのエンジントルク配分が50:50に設定されたフルタイム方式だ。リアとセンターのディファレンシャルにはロック機構が備わり、7段オートマチックトランスミッションには副変速機もくわえられるという本格派。

さらに、急な降坂時の速度を一定に制御する「DSR(ダウンヒル スピード レギュレーション)」や、路面への潜り込みも利用して制動距離を短縮させる「オフロードABS」までもを用意するこのモデルが採用のシステムは、数ある「4MATIC」バリエーションのなかにあってもっともヘビーデューティな一品と紹介することができる。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

興味深いのは、そんな標準のスペックにくわえて、さらにオフロード踏破性を向上させる「オン&オフロードパッケージ」なるオプションが設定されている事。ランドローバー車の「テレインレスポンス」などと同様、各種の電子制御系のプログラミングを路面の変化に対応して1タッチでチョイスできる6種のドライビングモードや、滑りやすい路面でのハンドリング性能向上に貢献するという、アクティブスタビライザーなどからなるこのオプション装備によって、GLクラスはそのルックスからは想像できないタフなオフローダーへと変身してくれるのだ。

たとえば、最大で285mmもの地上高が確保され、渡河能力も600mmに達するといったスペックからも、その本格的オフローダーとしてのパフォーマンスの一端を垣間見ることができるというもの。ルックス上からタフネスぶりを演じる“成り上がり者”とは、ひと味もふた味もちがうのだ。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

メルセデス・ベンツのフラッグシップSUVに試乗(3)

安心感は極めて高い

そんなあたらしいGLクラスをテストドライブしたのは、かつて2度に渡って冬季オリンピックが開催されたウインタースポーツの本場としても知られる、オーストリアはインスブルックの都心部から郊外にかけて。

すでに雪の季節がはじまっていたものの、テスト時の路面は基本的にはドライという状況。が、山間部にむかうに従って路肩からはところどころに雪融け水が流れ込み、気温上はそれが凍結することも考えられる低さであっただけに、4WDシステムがもたらす安心感は極めて高いものであったというのも、また間違いのない事柄だった。

日本では従来型の場合と同様に“550”の数字を名乗る事になるという「GL500」に搭載されるのは、ターボ付きの4.7リッターV型8気筒エンジン。

その最高出力が435psと強力ならば、最大値が700Nmというトルクは“強烈”と記すべきか。

しかも、こちらはそんなデータを、わずかに1,800rpmからという、まるでディーゼルユニットばりの低回転域から発するというのが、大きな特徴になっている。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

「フルタンク時の90パーセントの燃料に68kgのドライバーと7kgの荷物をくわえる」というヨーロッパ流儀の測定法による車両重量は2,445kgという値。が、前出エンジンと7段オートマチックトランスミッションの組みあわせによるパワーパックはそんな重さをものともせず、0-100km/h加速をわずかに5.4秒でこなしてしまう。

実際、その加速の力感はそうしたデータが頷けるもので、当然ながらそこに“非力感”などはいっさい伴わない。さらに、そうしたシーンでも際立つ静粛性がキープをされるから、まずはアクセルペダルを踏みくわえた時点で“SUVの「Sクラス」”というフレーズには多くの人が納得をする事だろう。

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

ウインタータイヤが装着されていたとはいえ、都心部から伸びる高速道路から2,000メートル級の高度を誇る山岳ワインディングロードまで、前述のように、時にスリパリーな路面の中を安心して巨体を進めて行くことができたのには、心理面も含め、やはり常に安定したトラクション能力と正確なハンドリングを味わわせてくれた4WDシステムの効用が大きかったことは疑いない。

メルセデスきってのオフローダーといえば、そこでは「Gクラス」の名を挙げる人が多いはず。なにしろそれは、優に30年を超える歴史の持ち主だけに、そうした“時”がつくり上げたブランド力が偉大なものである点にもちろん異論はない。

けれども、今やどうやっても“クラシック”という部分にこそ大きな価値が見出されるにちがいない「Gクラス」にたいしては、遥かに現代的かつ実用的なポテンシャルを発揮してくれるビッグオフローダーがこちら「GLクラス」というモデル。フルラインナップメーカーであるメルセデスにとって、なるほどそれはまさしくSUVの「Sクラス」を地で行くキャラクターの持主にほかならない結果になっているのだ。

spec

Mercedes-Benz GL 500 4MATIC BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ GL 500 4マチック ブルーエフィシエンシー

ボディサイズ|全長 5,120 × 全幅 1,934 × 全高 1,850 mm
ホイールベース|3,075 mm
トレッド 前/後|1,645 / 1,665 mm
最低地上高|285 mm
トランク容量(VDA値)|680-2,300 リットル
重量|2,445 kg
エンジン|4,663 cc V型8気筒 DOHCツインターボ
最高出力| 320kW(435ps)/ 5,250 rpm
最大トルク|700Nm(71.4kgm)/ 1,800-3,500 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|4WD
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|5.4 秒
燃費(NEDC値)|11.3 ℓ/100km
CO2排出量|262 g/km
燃料タンク容量|100 ℓ
価格|79,500ユーロ

           
Photo Gallery