日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗|BMW
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2015年4月2日

日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗|BMW

BMW 4 series coupe|ビー・エム・ダブリュー 4 シリーズ クーペ

セダンやワゴンにないものをもとめて

日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗

4シリーズ クーペ」は、「3シリーズ クーペ」の後継として、2013年のデトロイトモーターショーでコンセプトカーが登場。9月初頭に開催されたフランクフルトモーターショーでそのプロダクションモデルが発表され、おなじ9月末にははやくも日本上陸を果たしている。既存のベーシックなラインナップから外れたモデルを示す偶数番号があたえられたこの流麗なクーペに、河村康彦氏が試乗した。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

Photographs by HANAMURA Hidenori

3シリーズと名前はちがえど血縁は濃い

3シリーズ クーペ」あらため「4シリーズ」へ──そんなネーミングの変更からも、より強い独立志向と上級化への想いが伝わってくるBMW最新クーペが、本国での発表から半年足らずで日本に上陸した。


かつての「3シリーズ」といえば、「BMWラインナップを底辺からささえるコンパクトなモデル」という印象が強かった。が、系譜をたどればそこからの派生ということになるこの「4シリーズ」に、もはや“コンパクト”という言葉があてはまる要因などはまるで見られない。


見た目上の“BMWらしさ”の根源でもある長いフロントフードにはじまるそのボディのシルエットは、セダンとおなじ2,810mmのホイールベースを採用しつつも、より伸びやかで、流麗にかんじられるもの。


さらに、ファストバック調のルーフラインを採用しつつも、それが下降をはじめるポイントが比較的後方に設定されたことで、クーペでありながらも居住空間に比較的ゆとりがありそうな印象を、見る人に抱かせるのも、またこのモデルならではのエクステリアデザインの特徴だ。

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 13

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 27

実際、4シリーズの後席は「おとなが長時間を、さしたる辛抱なくすごせる空間」でもある。同時に、高さ方向にはさほどではないものの、奥行き方向の寸法が予想以上に大きいトランクスペースが確保されたことにくわえ、リアのシートバックが60:40分割で前倒し可能な構造であるのも手伝って、2ドアクーペのなかにあってもユーティリティ性にすこぶる長けているというのが、このモデルのパッケージングの大きな特長にもなっている。


いっぽうで、フロントシートからの眺めは、「3シリーズ セダン」や「ツーリング」のそれと「大差はない」といって差し支えないもの。ダッシュボードの中央前面に横長のタブレット端末を立てかけたようなモチーフや、オーディオ操作系と空調操作系を分割しつつ縦方向2列に配したセンターパネル部のレイアウト、バイワイヤー式のシフトセレクターを“iDrive”の操作ダイヤルと視覚的にも明確にわけながら配置したセンターコンソールなども、3シリーズとまったくおなじ“文法”を採用したものとされている。


そう、このモデルが3シリーズとの強い血縁関係をもつものであることは、あたらしい名前を手にしてもまったくかわっていないのは明らかというわけだ。

BMW 4 series coupe|ビー・エム・ダブリュー 4 シリーズ クーペ

セダンやワゴンにないものをもとめて

日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗 (2)

日常使いにも耐えうるクーペ

ちなみに、そんなこのモデルではセダン/ツーリングよりも全幅が25mm拡大され、また後席への乗降性確保のためにBピラーがより後方に置かれて長いドアを採用するために、狭いスペース内でのドア開放時の使い勝手がいくぶん低下をしているのは事実。


いっぽうで、それにともなうフロントシートでのベルト装用性低下を補うために、乗降時にBピラーから前方へと伸びる電動式のベルトリーチャーが標準採用という優しい配慮がほどこされている点は見逃せない。


すなわち、前述の高いユーティリティ性とともに、“2ドアセダン的”にあつかううことも可能としているのがこのクーペのデザイン。結果として、後席の使用頻度がさして高くないユーザーにとっては、日常シーンを「これ1台」でオールマイティにもちいることがじゅうぶん可能ということにもなっている。

2種類のエンジンに4つのトリムラインの組み合わせ

日本での4シリーズは、2リッター4気筒もしくは3リッター6気筒の、いずれもターボ付き直噴エンジンに8段ATを組み合わせたパワーパックに、それぞれ4つのトリムレベルを用意するというのが基本の構成。

今回テストドライブをおこなったのは前者「428i ラグジュアリー」と、後者「435i Mスポーツ」の2台。


428iにはLEDヘッドライトやガラスサンルーフ、アクティブ クルーズコントロールなど総額75万円強ぶん、435iにはおなじくLEDヘッドライトやガラスサンルーフ、アクティブ クルーズコントロールにくわえ、さらに電子制御式可変ダンパーからなる“アダプティブ M サスペンション”や、強化型の“Mスポーツブレーキ”など、総額85万円強ぶんのオプション アイテムが装着されていた。

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 21

撮影時間との兼ね合いから、まずはそんな「フットワークもオプション アイテムで強化」をした435i Mスポーツでのスタートとなったのは、結果としては“よりおいしいご馳走を先に食する”ということになったようだ。

BMW 4 series coupe|ビー・エム・ダブリュー 4 シリーズ クーペ

セダンやワゴンにないものをもとめて

日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗 (3)

エンジン、シャシー、ATいずれも高い完成度の435i Mスポーツ

ツインスクロール式ターボによって、ごく低回転域からしっかりとしたターボブースト効果によるトルクの太さを実感できるこのモデルの動力性能は、1.6トン超という車両重量をまったく意識させない。全回転域での淀みないパワー感のみならず、いかにも直列6気筒エンジンらしい回転バランスの良さや適度に迫力に富んだゴキゲンなサウンドなどのフィーリング面などまでもをふくめ、それはまさに「パーフェクトな仕上がり!」と快哉を叫びたくなる逸品だ。


さらに、7,000rpmのレッドラインをめがけてパワフルにぴっちりと回り切るエンジンの素性の良さを引き立てるのが、MTライクなタイトな駆動力伝達感を実現させ、エンジン回転数と車速の伸びとをきれいにリンクさせるATの仕上がりでもある。素早い変速とダイレクトなエンジントルクの伝達性を両立させながら、微低速域ではデュアルクラッチトランスミッションとは一線を画すなめらかな動きも実現させているのだから、こちらもまた文句ナシ。

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 15

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 18

すなわち、435iの走りの魅力とは、「まずはそのパワーパックに宿っている」といっても過言ではないのである。


それでは、このモデルでの見所はそんな動力性能面のみに集約されているのかというと、じつはシャシーの仕上がりぶりがまたそんなパワーパックに勝るとも劣らないものである点をも評価したい。


そのハンドリング感覚は、じつはかならずしも“俊敏”という言葉があてはまるものではない。中立付近からのステアリング切り込みにたいして、反力の出方はやや甘めの設定。キビキビとした応答性こそを善と考えるひとにとっては、だから「いまひとつ面白みに欠ける」という評価を受ける可能性もありそうだ。


しかし、実際にはステアリング操作にたいする反応はどこまでいっても一定で、かつハンドリングと安定性のバランスは「コーナーをどんなに追い込んでもニュートラル」という感覚。ときにランフラット タイヤ採用の影響とおもわれる路面凹凸にたいする敏感さは感じるものの、基本的には乗り味もすこぶるしなやか。とにかく、あらゆる部分でのバランス感覚がきわだって高いのが、このモデルの走りの印象の大きな特徴といえるのだ。

BMW 4 series coupe|ビー・エム・ダブリュー 4 シリーズ クーペ

セダンやワゴンにないものをもとめて

日本に上陸した「4シリーズ クーペ」に試乗 (4)

秀逸なバランス感の428i ラグジュアリー

そんな435i Mスポーツから428i ラグジュアリーへと乗り換えると、じつはスタート早々に感じられたのは「ブレーキの感覚がちょっと甘いナ」という事柄だった。

先に紹介をしたように、今回乗った435i Mスポーツのブレーキは、じつはオプションの強化型アイテムを装着したものだったことが後に判明。ならば、「Mスポーツ グレードを選ぶのならば、“Mスポーツ ブレーキ”は迷わず選ぶべきオプション」というのが当方の結論。


なにしろ、その価格はわずかに10万円で、すなわちそもそもの4シリーズの価格にたいしては、そうしたコストアップ分は“微々たるもの”と呼べるものに過ぎないからだ。

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 24

428iの心臓も、わずかに1,200rpmという回転数で350Nmのトルク値を発生するゆえ、日常シーンでの加速の余力はつねに十二分。しかし、それでも435iからの乗り換えだと、どこかやや“寂しく”感じられたのは、絶対的な加速力の差というよりも、やはりその回転フィールやサウンドの面で、435iとのあいだには明確な差が存在をしているからだ。


フットワークの仕上がりぶりは、こちらもまたバランス感覚の良さが印象的。じつは、こちらは「マイナス2気筒分」の効果があらわれて、前輪荷重は435i Mスポーツよりも50kgも軽い。が、ハンドリング面でも快適性面でも、残念ながらそんな“軽量化”ぶんのメリットを実感できなかったのは、やはり今回乗った435i Mスポーツに、オプションアイテムの電子制御式ダンパーが装着されていたこととも無関係ではないはずだ。


くらべれば、この点でも「435i Mスポーツの方が、4シリーズの狙いどころによりふさわしい」というのが結論でもある。

BMW 435i coupe|BMW 435i クーペ 10

BMW 428i coupe|BMW 428i クーペ 06

クーペとして手に入れるなら──

せっかく3シリーズ セダンというよくできた“お手本”があるにもかかわらず、あえてそこから実用性を落とし、価格を上乗せしたクーペモデルを存在させる理由は、当然のことながらセダンやステーションワゴンでは実現することができないより美しいボディを求め、さらに心豊かになれる自動車の愉しみかたを享受したいというユーザーのリクエストにこたえるためにほかならないはずだ。


となれば、今回の2台のなかで当方がより強くオススメをしたくなるのは、そんなクーペというモデルとしての狙いどころをより鮮烈に描写をした「435i Mスポーツ」の方──やはり最後は、そんなコメントでまとめたくなってしまう。

Spec|スペック

BMW 428i Coupe Luxury|ビー・エム・ダブリュー 428i クーペ ラグジュアリー

ボディサイズ|全長 4,640 × 全幅 1,825 × 全高1,375 mm

ホイールベース|2,810 mm

トレッド 前/後|1,545 / 1,575 mm

重量|1,570 kg

最低地上高|130 mm

エンジン|1,997 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ

最高出力| 180 kW(245 ps)/ 5,000 rpm

最大トルク|350 Nm(35.7 kgm)/ 1,250-4,800 rpm

トランスミッション|8段オートマチック

駆動方式|FR

タイヤ 前/後|225/40R19 / 255/35R19

燃費(JC08モード)|15.2 km/ℓ

トランク容量|445リットル

0-100km/h加速|5.8 秒

価格|646万円(428i 604万円 / 428i Sport 624万円 / 428i M Sport 644万円)

BMW 435i Coupe M Sport|ビー・エム・ダブリュー 435i クーペ Mスポーツ

ボディサイズ|全長 4,670 × 全幅 1,825 × 全高1,375 mm

ホイールベース|2,810 mm

トレッド 前/後|1,545 / 1,575 mm

重量|1,620 kg

最低地上高|130 mm

エンジン|2,979 cc 直列6気筒 直噴DOHC ターボ

最高出力| 225 kW(306 ps)/ 5,800 rpm

最大トルク|400 Nm(40.8 kgm)/ 1,200-5,000 rpm

トランスミッション|8段オートマチック

駆動方式|FR

タイヤ 前/後|225/45R19 / 255/35R19

燃費(JC08モード)|12.7 km/ℓ

トランク容量|445リットル

0-100km/h加速|5.1 秒

価格|774万円(435i 738万円 / 435i Sport 754万円 / 435i Luxury 758万円)

           
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