ポルシェ ケイマンに試乗|Porsche
Car
2014年12月5日

ポルシェ ケイマンに試乗|Porsche

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン

ケイマンに試乗

ポルシェの代表車種「911」につづき、モデルチェンジを果たした「ボクスター」がワールドプレミアを飾ったのが2012年3月。そして、そのボクスターに遅れること8カ月、ポルシェのミッドシップ2シータークーペ「ケイマン」が初のモデルチェンジを経験した。すでに日本での予約受付も開始している、この新型ケイマン。2013年2月、河村康彦氏が、ついに試乗の機会を得た。ボクスターをして「世界でもっとも隙のないスポーツカー」と評した河村氏による、ポルトガルからのホットなリポート!

Text by KAWAMURA Yasuhiko

そのルックスに文句ナシ!

昨年末のロサンゼルスモーターショーで初披露をされた、2代目となるポルシェ「ケイマン」。その国際試乗会の舞台となったのは、ユーラシア大陸西端でスペインと国境を接する小国ポルトガル南部の、アルガルヴェ地方。

「冬でも温暖で、降雨量も少ない」という情報通り、イベントがおこわれた2月半ばでも陽が射す日中にはセーターを脱ぎたくなるほどの快適さ。この周辺はワインディングロードにも事欠かないので、スポーツカーのイベントにはまさにピッタリというお膳立てだ。

そんな南欧の日差しの下で初の対面となったあたしいケイマンのルックスは、ひと目で「これはまさに文句ナシ!」と、そう感じられるものだった。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

このモデルが、先にモデルチェンジ済みの新型ボクスターと外観上も多くの部分を共有するモデルであるのは良く知られている通り。が、全長のほぼ中央部分を頂点としてテールエンドへと流れるクーペならではのルーフラインを得たプロポーションは、ボクスター以上に流麗で、かつ躍動感に溢れて見える。

そんな印象には、従来型比で60mm延長されたホイールベースや、より大径化されたシューズといったアイテムも、もちろん影響をおよぼしているにちがいない。

全長の増加は3cmほどに過ぎないのに、フロントビューでは「大きくなったように感じられる」のは、ヘッドライト間の距離が増し、トレッドも拡大された事による点に起因をしていそうだ。

従来型よりもインテーク開口部が強調されたフロントビューや、911とはことなる新造形のドアパネル採用で、サイドインテーク部分の立体感が増した事も、ダイナミックな表情の演出に繋がっている。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

2シーターレイアウトによるキャビン部分のコンパクトさなども含め、ピュアなスポーツカーとしての表現力は、見方によっては「911以上に高い」と言っても過言ではなさそうだ。

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン

ケイマンに試乗(2)

実用性を評す

ボクスターと同様のデザインのキャビンへと乗り込み、ドライビングポジションを決める。ヒップポイントが低いシートに脚を前方に投げ出すように座るのは、いかにも典型的なスポーツカー流儀の作法だ。

Aピラーが比較的手前に引かれたまま、ウインドシールド下端が従来型より100mmほど前出しされた事で、ロングノーズのプロポーションを保ったまま“顔面直前”の空間が開けた感じがするのがちょっと新鮮。

前後に2箇所のラゲッジスペースが用意され、「2シーターモデルとしては例外的に大容量の荷物スペースが確保される」のは、従来型と同様にケイマンというモデルの大きな特長点。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

いっぽうで、最新ポルシェ各車に共通する前方へとせり上がった“ライジング コンソール”は、残念ながらそこに小物入れの類が不足をするのがウイークポイントだ。

シート背後の隔壁部分の高さゆえ振り向き後方視界に難アリだったボクスターに比べると、基本骨格を共有するこちらは、その点遥かに優れるのは、ちょっと意外だった。

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン

ケイマンに試乗(3)

MTも魅力的だ

絶対的な動力性能が優れるのは、当然ながらより大排気量でパワフルなエンジンを搭載する「S」グレードの方だ。

その中でも、MTにたいして、より多段の7段ギアを備え、しかもシフト時の駆動力ロスがない“PDK”を称するデュアルクラッチトランスミッション仕様の方が、カタログ上でもより素早い加速タイムをアピールするのは従来と同様となる。

ただし、そんなPDKを構造上のベースとしたユニットを採用する新型911の、「パッセンジャーカー用としては世界初」を謳う7速MTに比べると、そもそもMTとしての専用構造を持つこちらの方が、より節度感に富んだ操作フィーリングが優れているのは見逃せない。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

ボクスター同様に従来の2.9から2.7リッターへと“ダウンサイズ”がはかられたベースグレードの動力性能は、当然ながらSグレードの迫力には及ばない。

とはいえ、それは一級のスポーツカーとして受け取るのに差し支えはない印象でもある。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

より鮮烈に伸びる

ちなみに、「より走りのポテンシャルの高いミッドシップ・スポーツカー」というキャラクターをアピールするプロモーション上の戦略もあり、いずれのエンジンもソフトウェアの変更によってボクスター用より10psと10Nm大きな数字が与えられている。が、実際にはそれゆえのさらなる強力さというよりは、いずれのグレードでも、ボクスター比で「高回転域にかけての伸び感が、さらに鮮烈に感じられる」のが嬉しいポイントだ。

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン

ケイマンに試乗(4)

ゴキゲンそのもの

今回のイベントに用意をされたすべてのモデルには、電子制御式の可変減衰力ダンパーである「PASM」、LSDとセットで採用される内側後輪へのブレーキ制御でコーナリング能力を引き上げる「PTV」、各種の電子制御系機能を一括してよりスポーティな設定へと変更させる「スポーツクロノプラス パッケージ」、50km/hまでの速度での操舵力を低減させる「サーボトロニック」、そしてベースグレードで18、Sグレードで19インチという、標準サイズにたいして、それぞれ1インチ増しとなるシューズがオプション装着されていた。

そうした状態での各モデルのフットワークの印象は、ひとことで言ってしまえば「まさにゴキゲンそのもの!」だった。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

ばね下重量を大幅に低減させ、それゆえ快適性向上にも効果があるいうセラミック コンポジット ブレーキ「PCCB」のオプション装着の有無や、前述2種類のグレードのちがいにかかわらず、まず驚かされたのがすべての仕様での圧倒的な乗り心地の素晴らしさ。

路面凹凸を軽くいなしつつ、速度にかかわらずフラットな姿勢を保ちつづけるボディコントロール性の高さは、そうした点ではすでに定評あった従来型をも確実に凌ぐのだから恐れ入る。

その上で、「こちらの方がより“走り”に振ったハードなスプリングを装着している」というにもかかわらず、そうした印象がボクスターを明確に凌ぐのは、「静的なねじり剛性値が2倍」というクーペならではのより強靭なボディも大いに貢献しているのは間違いないはずだ。

サーキットでは自由自在

もちろんそうは言っても、そんなこのモデルが「快適性のみを追求したもの」であるはずなどない。すなわち、ミッドシップ スポーツカーならではの優れた操縦性もまた、特筆すべきレベルにあったという事だ。

軽やかで俊敏なノーズの動きはミッドシップレイアウトの持ち主ならでは。その上で、前述のようにフラット感がさらに向上し、それが安定感のアップをも実現させていた点には、ホイールベースの延長も、もちろん効果をもたらしているはずだ。

今回の試乗プログラム内には本格的なサーキット走行も含まれていたが、そこでの身のこなしはまさに“自由自在”の印象。前出PCCB装着車のみならず、標準仕様のままでも「ポルシェのブレーキ」が並々ならぬタフネスさの持ち主である事も、改めて確認ができた。

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S

実は、先に挙げたような様々なオプションアイテムを選んで「自分好みの仕様」に仕立てて行くと、たちまち価格が大きく跳ね上がってしまうという“ポルシェマジック”の存在は知っておくべき事柄。

しかし、もっともベーシックな911でも1,145万円からというこの時代に、最新のポルシェ スポーツクーペが612万円から手に入るというのは、やはり見逃せない事柄と言えるだろう。

spec

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン
ボディサイズ|全長4,380×全幅1,801×全高1,294 mm
ホイールベース|2,475 mm
重量|1,310 kg[1,340kg]
エンジン|2,706cc 水平対向6気筒
最高出力| 202kW(275ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|290Nm / 4,500-6,500 rpm
トランスミッション|6段マニュアル / 7段オートマチック(PDK)
駆動方式|MR
タイヤ 前/後|235/45R18 / 265/45R18
0-100km/h加速|5.7 秒[5.6 秒]
最高速度|266km/h[264km/h]
燃費|8.2 ℓ/100km[7.7ℓ/100km]
CO2排出量|192 g/km[180g/km]
価格|612万円[659万円]

Porsche Cayman S|ポルシェ ケイマン S
ボディサイズ|全長4,380×全幅1,801×全高1,295 mm
ホイールベース|2,475 mm
重量|1,320 kg[1,350kg]
エンジン|3,436cc 水平対向6気筒
最高出力| 239kW(325ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|370Nm / 4,500-5,800 rpm
トランスミッション|6段マニュアル / 7段オートマチック(PDK)
駆動方式|MR
タイヤ 前/後|235/40R19 / 265/40R19
0-100km/h加速|5.0 秒[4.9 秒]
最高速度|283km/h[281km/h]
燃費|8.8 ℓ/100km[8.0ℓ/100km]
CO2排出量|206 g/km[188g/km]
価格|773万円[820万円]

*[]内はPDKモデルの数値

           
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