新型BMW X5に試乗|BMW
BMW X5 xDrive50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive50i
BMW X5 xDrive30d|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive30d
7年ぶりのフルモデルチェンジで3代目へと進化
新型BMW X5に試乗
今年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで、実に7年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たしデビューを飾った「X5(F15)」。3代目へと進化を遂げた新型は、先代(E70)からどう進化したのか。カナダの大地で「xDrive50i」と「xDrive30d」、ふたつのモデルを河村康彦が試す。
Text by KAWAMURA Yasuhiko
あたらしいX5のパッケージング
BMWが提唱するSAV、すなわち”スポーツ アクティビティ ビークル”の先駆けである「X5」が、第三世代のモデルへと進化を遂げた。
既存のラインナップに当てはまらない、『X』の名を冠した初のモデルとして初代X5が誕生をしたのは2000年の事。以来、その弟分としての「X3」や、クロスオーバー色を強めた派生モデルの「X6」、そしてサイズや価格を抑えたエントリーモデルとしての「X1」などが続々と登場。昨今では「全BMW車中のおよそ三分の一が、『X』の名を持つモデルで売れている」と言うほどの基幹シリーズに成長を遂げているという。
かくも重要な”Xシリーズ”を改めて牽引する役割を担う新型X5のルックスは、しかし多くの人にとっては「あまり代わり映えがしないかな……」と、そう感じられるものであるかも知れない。
そのボディサイズも、全長が20mmほど伸び、逆に全高が10mmほど下げられた事以外は殆ど変わっていない。実際開発陣からは、「X5のパッケージングはすでに従来型で”最適解”であり、改めて大きく変えようという気持ちはなかった」という声も聞こえても来るものだ。
それでは、デザイン面で特にリファインをしたい部分はなかったのか? と改めて問うてみると、そこで得られたのは「よりエレガントな雰囲気を演じたかった」という回答だった。
BMW X5 xDrive50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive50i
BMW X5 xDrive30d|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive30d
7年ぶりのフルモデルチェンジで3代目へと進化
新型BMW X5に試乗 (2)
これまでにないカスタマイズの可能性を提案
ノーズの長さをアピールするために逆スラント気味のグリルを採用し、”縦長のシルエット”による伸びやかさをより強調。同時に、キドニーグリルやエアインテークを幅広化して、ワイド感も高めているのが新型のスタイリングのひとつの特徴。フロントフェンダーアーチの上部からドア アウターハンドル上を経由し、リアのコンビネーションランプへと続くキャラクターラインは従来型から受け継いだアイデンティティだ。
リアビューでは、やや細身になって”L字型”の印象を強めたテールランプが新型の大きな特徴点。なるほど、少しスマートになって流麗さを増したかな、とは思えるものの、全般には”キープコンセプト”の雰囲気が強いのが新型のエクステリアデザインと言えるだろう。
一方のインテリアも、従来型に比べてややモダーンな印象を強めている。ラグビーボールの断面のような、”両細り”形状のダッシュボードを用いるのは従来型の場合と同様。しかし、そのセンターパネル上部に流行のタブレット端末を立て掛けたようなディスプレイのレイアウトなどは、やはり「あたらしさ」が滲み出る部分だ。
上質さの向上を狙ったという今回のモデルでは、『デザイン ピュア エクスペリエンス』と『デザイン ピュア エクセレンス』という2つのデザインラインが用意され、エクステリアとインテリアの装備品を自由に組み合わせる事で、従来は成し得なかったあたらしいカスタマイズの可能性を提案しているのもニュース。
3列目のシートをオプション設定するのは従来型と同様。ただし、前述のようにホイールベースを含めたボディのサイズはほぼおなじため、「格納式の3列目シートは身長1.5mまでの乗員用」と、あくまでも”5+2シーター”のキャビンの持ち主である事を強調する。
BMW X5 xDrive50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive50i
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試乗したのは「xDrive50i」と「xDrive30d」
カナダで開催された国際試乗会に用意されたのは、4.4リッターのツインターボ付きV8ガソリンユニットを搭載した「xDrive50i」と、これまで同様に日本では“xDrive35d”とグレード名を変えそうな、3リッターのターボ付き直6ディーゼルユニットを搭載の「xDrive30d」。また、今回は用意がなかったものの、3リッターのトリプルターボ付き直6ディーゼルを積む「M50d」を含めたこの3タイプが、導入時の新型X5のバリエーション。
さらに今年年末には、ディーゼルの「xDrive40d」、「xDrive25d」と、軽量化を推進した”燃費スペシャル版”である25dの2WD仕様。そして、50i/30dと共に日本への導入も予想される3リッターのターボ付き直6ガソリンエンジンを搭載の「xDrive35i」の追加投入が、すでに発表されている。
まずはトップグレードである50iで走り始めると、その走りは軽快かつ強力でありながらも、さすがに”威風堂々”とした重厚感をもイメージさせるものだった。8段ATとの組み合わせによる加速フィールは、時にアクセルのゲイン(操作に対する応答性)がちょっとシャープに過ぎるかな、という印象も受けたものの、基本的には滑らかそのものだ。
「同等装備を持つ従来型との比較では、最大で90kgの軽量化」を謳うものの、それでも車両重量は軽く2.1トン以上。しかし、実際にアクセルペダルを踏み込む側にとっては、そんな重さは一切意識をさせられない。
トランスミッションは、MTライクに小気味良い変速を繰り返すものの、それでもシフトショックが皆無なのはオーソドックスなトルコン式ATの美点でもあるはず。いずれにしても、動力性能についてはまさに「文句のつけようがない」というのが実感だ。
BMW X5 xDrive50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive50i
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Xシリーズの紛れもないフラッグシップ
エンジンが発するノイズやロードノイズが、すべて”ぶ厚いオブラート”に包まれたかのような静粛性の高さは、このモデルがXシリーズの中にあっても紛れもないフラッグシップである事を彷彿とさせるもの。
255/50サイズの19インチシューズを履くものの、それがサイドウォール補強型のランフラット仕様である事を意識させないしなやかさが実現されているのは、さすがは長年こうしたアイテムを使い続けて来たBMW車と納得できるポイントだ。
ハンドリング感覚は決して俊敏さが記憶に残るようなタイプではないものの、ノーズヘビーな印象や過度のロールの大きさを意識させないのは、やはり『駆けぬける歓び』を”社是”とするメーカーの作品だけはあるという感覚。
いずれにしても、こうしたカタチのモデルではありつつも「とことん上質な乗用車」としてのテイストを具現させている、というのが、この50iに乗っての総合的な印象だ。
BMW X5 xDrive50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive50i
BMW X5 xDrive30d|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive30d
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注目とオススメに値するグレード
一方、そんなモデルから乗り換えての30dでの第一印象は、率直なところ「50iに比べるとやはり”音・振性能”がやや劣る」というものであったのは否定出来ない。
もちろんそうは言ってもそれはあくまで50iとの比較論。絶対的にはすこぶる高い静粛性を実現させているし、ごく低回転域から太いトルクを発するエンジンの特性もあって、「日本でも、これを主軸にセールスして行きたい」というメーカー側の思いは十分に納得できるものだ。
ただし、低回転域を中心にエンジンの微振動が時にステアリングホイールまで伝わる現象は、新型X5が狙うキャラクターには相応しくない。これは、早急に改善をくわえるべきポイントだ。
とはいえ、日常シーンでの力強さやその燃費経済性を考えれば、あたらしいX5シリーズ全体でも確かにこれは最も注目とオススメに値するグレードではありそう。
願わくば、最新のモデルらしい数々のドライビングアシスタントシステムや、スマートフォンとの機能統合を図ったテレマティクスシステムを導入するのこのモデルが、「今年年末の予定」とされる日本導入時にも従来型と同等、あるいはそれ以下のプライスタグが与えられる事を期待したいものだ。
BMW X5 xDrive 50i|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive 50i
ボディサイズ|全長4,886×全幅1,938×全高1,762 mm
ホイールベース|2,933 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,646 mm
重量|2,175 kg
エンジン|4,395cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボ
最高出力| 330kW(450ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|650Nm / 2,000-4,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|255/50R19
0-100km/h加速|5.0 秒
最高速度|250km/h
燃費|10.4 ℓ/100km
CO2排出量|242 g/km
トランク容量|650-1,870 リットル
BMW X5 xDrive 30d|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive 30d
ボディサイズ|全長4,886×全幅1,938×全高1,762 mm
ホイールベース|2,933 mm
トレッド 前/後|1,644 / 1,650 mm
重量|2,070 kg
エンジン|2,993cc 直列6気筒 ディーゼル ターボ
最高出力| 190kW(258ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|560Nm / 1,500-3,000 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|255/55R18
0-100km/h加速|6.9 秒
最高速度|230km/h
燃費|6.2 ℓ/100km
CO2排出量|162 g/km
トランク容量|650-1,870 リットル