ポルシェがル・マンに帰ってきた、その訳とは|Porsche
CAR / NEWS
2015年8月24日

ポルシェがル・マンに帰ってきた、その訳とは|Porsche

Porsche 919|ポルシェ 919
Porsche 911 RSR|ポルシェ 911 RSR

ワールドプレミアは、919 ハイブリッド

ポルシェがル・マンに帰ってきた、その訳とは

ポルシェは、現在開催中のジュネーブ モーターショーで2つのレーシングカーを発表した。「919 ハイブリッド」、そして「911 RSR」は、ともに今年ル・マン24時間に参戦を予定するマシーンであり、今後のポルシェのモータースポーツ活動を牽引するあらたなシンボルとなるモデルだ。

Text by TAKAGI Noboru

レーシングはポルシェのDNA

ポルシェ ブースの主役は、今年ル・マン24時間に打って出る「919 ハイブリッド」と「911 RSR」という、2台のレーシングカーだった。プレゼンテーションでステージに上ったポルシェのマティアス・ミューラー社長は、次のように語ってモータースポーツの重要性を説いた。

「レーシングはポルシェのDNAです。すべてのポルシェ車はレーシングカーの要素がそなわっており、すべてのポルシェ従業員はレーサーです。何世代にもわたってサーキットで学んできたことが、現在のポルシェには息づいています。今回のジュネーブショーでは、新型のロードカーを紹介するのではなく、ポルシェのモータースポーツ活動がまったくあたらしい、そしてもっともエキサイティングな時代に入ったことを発表します」

911 RSR

最初に紹介された911 RSRは、ル・マン24時間や世界耐久選手権(WEC)のGTカテゴリーに参戦できる車両。「911」をベースとするレーシングカーのなかで、もっとも高性能なモデルに与えられるのが“RSR”の称号で、991タイプの911 RSRは2013年シーズンにデビューしている。

今回発表されたのはその2014年モデルで、プレゼンテーションによれば「エアロダイナミクスが改善され、ステアリングはより正確になり、コクピットの居住性が向上された」という。

Porsche 919|ポルシェ 919
Porsche 911 RSR|ポルシェ 911 RSR

ワールドプレミアは、919 ハイブリッド

ポルシェがル・マンに帰ってきた、その訳とは (2)

ル・マン24時間で総合優勝を飾るためのマシン

もっとも、世界中が注目していたのはもう1台のレーシングカー、その名も919 ハイブリッドのほうだ。こちらはおなじル・マン24時間やWECに参戦する車両といっても、その最高峰クラスのLMP1というカテゴリーに挑むもので、いわばル・マン24時間で総合優勝を飾るためのマシン。

なお、今年からLMP1クラスは車両規則が大幅に見直され、ハイブリッドシステム(正確にはエネルギー回生システム)の重要性が大幅に高まっている。なかでも注目されるのは、F1同様、ふたつの回生システムを搭載できるようになったことだが、ル・マンではそのふたつをどのような形式にするかについては、レーシングカーを開発するメーカーに委ねる形をとっている。

この結果、トヨタが前輪と後輪のそれぞれに計ふたつの回生システムを装着したのに対し、ポルシェは前輪の回生システムにくわえ、熱回生システムを搭載した点が目新しい。

熱回生システムとは聞き慣れない言葉だが、要はターボチャージャーのタービンとおなじようなものによって排気エネルギーから回転エネルギーを取り出し、この力で発電させてエネルギーを回収させることが熱回生システムの原理である。

まったくおなじものが今季よりF1でも採用されているほか、おなじル・マン24時間を戦うアウディの「R18 e-tron quattro」にも搭載されているが、エネルギーをリチウムイオンバッテリーに蓄えるポルシェとことなり、従来どおりフライホイール式のエネルギー保存装置に蓄える点がアウディの特徴といえる。

また、排気量2.0リッターのV4シングル ターボチャージャー エンジンを搭載する点も、トヨタ(V8自然吸気ガソリン)やアウディ(V6ターボディーゼル)とは大きくことなっている。

Porsche 919|ポルシェ 919
Porsche 911 RSR|ポルシェ 911 RSR

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ポルシェがル・マンに帰ってきた、その訳とは (3)

もしもアウディがあと5回ル・マンで勝ったら

ところで、おなじフォルクスワーゲン グループに属するアウディが長く席巻しているル・マン24時間に、なぜ同門ともいえるポルシェは打って出ようとするのか? 冒頭にミューラー社長が語った言葉はまさに正論だが、これだけでは1999年以来、休止していた「ル・マン24時間レースの最高峰クラスへの挑戦」を2014年に再開する必然性は理解できない。

いっぽうで、巷では次のような推測が囁かれている。ル・マン24時間で最多勝記録を有するポルシェの勝ち星は16。いっぽう、アウディは過去15年間に12勝を手に入れた。ポルシェとの差はわずかに4勝。もしもアウディがあと5回ル・マンで勝ったら、ポルシェは栄光の座から引きずり下ろされることになる。 この危機感が、ポルシェにル・マンへの復帰を決意させたというのだ。

だとすれば、たとえ同門といってもアウディとポルシェが全面戦争を繰り広げるのは必至。しかも、ここにトヨタも絡んでくるのだから、今年のル・マン24時間では相当、白熱した戦いが繰り広げられることだろう。

そのほか、ポルシェはロードカーの「マカン S ディーゼル」をワールドプレミア、そして「911 タルガ」をヨーロッパプレミアしたが、マカン S ディーゼルはすでにワークショップで紹介済み、そして911 タルガはデトロイトショーで発表済みなのだから、ジュネーブにおけるポルシェはやはりレーシングカーが主役だったと見るのが正しいようだ。

           
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