豪華さとうつくしさを兼ね備えたSUV

クーペのもつエレガントなフォルムと、SUVのパフォーマンスをミックスさせたメルセデス・ベンツ「コンセプト クーペ SUV」。これは先行するライバル、BMW「X6」への宣戦布告でもある。あるいは、スポーティなSUVとして北米をはじめ、全世界で成功を収めているポルシェ「カイエン」もライバルとして、その視野に入っているはずである。

SUVというカテゴリーと、立体的なフロントグリルやヘッドライトの造形から「GLAクラス」に似た印象を抱くが、「コンセプト クーペ SUV」の全長は4,935mm、全幅2,044mm、全高が1,739mmと、「Sクラス クーペ」にも迫る長さをもっている。そうしてクーペというキーワードでみると、フロントグリルの造形は、たしかにSクラス クーペ譲りといわれても納得できる意匠である。

22インチのホイールを履く力強く堂々とした佇まいながら、リアにまわると、まさにクーペを想起させる流麗なフォルムが目にとまる。ボディサイドの複雑な面構成は、最近のメルセデス・ベンツのデザイン特徴ともいえる要素で、コンセプトカーらしくクロームメッキがふんだんにあしらわれたフロントグリルやサイドステップなどの派手な装飾も、このモデルのスポーティさを上手く表現している。

Mクラスをベースにクーペに仕上げる

ベースとなっているのは、2,916mm（本国仕様）のホイールベースからも分かるように、メルセデス・ベンツのミドルクラスSUVである「Mクラス」。これにクーペライクなボディをあたえ、スポーティなSUVに仕上げるという手法は、BMWの「X5」と「X6」の関係と同一である。

リアウィンドウが大きく傾斜し、さらに左右のウィンドウレベルに合わせるためにリアゲート後端はボディ面積が多く、そこには固定式のリアスポイラーも装備されている。インテリアが非公開とされたため確認はできないが、現状ではリアの視界が確保されているとは言いがたいため、このあたりはあくまでもショー向けの化粧を施したデザインスタディとかんがえるのが正しいかも知れない。

前述のとおりインテリアはショー会場で非公開扱いだったが、公式資料によれば、キャビンは4シーターでドア用のウィンドウはフレームレス、つまりクーペのようなウィンドウガラスを下ろした際は開放感あふれるドアになっているという。このあたりは、プロダクションモデルを公開するまでの課程で、徐々にあきらかにしていくとい戦法なのだろう。

スタイリッシュで実用性の高いモデルを求める層にむけて

コンセプト クーペ SUVに搭載されるエンジンは、3リッターのV6ツインターボで、245kW（333ps）の最高出力と、480Nm（48.9kgm）の最大トルクを発生する、ダウンサイジングコンセプトに基づいた新型エンジンである。これは「SLクラス」から順次搭載されるといわれている次世代のパワーユニットで、ECOスタート/ストップ機構を搭載した新型の9段ATと組み合わせられる。SLクラスでは後輪駆動となるが、もちろんコンセプト クーペ SUVでは4輪を駆動する。

サスペンションは、ベースとなったMクラス譲りのフロントがダブルウィッシュボーン、リアが4リンク。それらにくわえ、アクティブ カーブシステムやセレクティブ ダンピングシステムを備えた新型エアサスペンションを装備した。ホイールは力強さを強調した5本スポークデザインで、すでに紹介したように22インチサイズとなる。フロントは10J、リアは11Jのリム幅を持ち、それぞれ305/45R22サイズのタイヤを装着している。

未公開のインテリアを見るまでは断言できないが、無骨なSUVでは飽き足らない都会派のユーザーにもアピールしそうなコンセプト クーペ SUV。SUVとクーペスタイルの融合というコンセプトは、BMWに先行されて新鮮とはいえないものの、SUV指向のユーザーだけでなく、スタイリッシュで実用性の高いモデルを求める層にも注目されるはずである。

欧州や北米では、すでにこのモデルが「MLC」というネーミングで販売されると噂されており、今後のメルセデスの動向にも要注目だ。