メルセデス・ベンツ Mクラスに試乗|Mercedes-Benz
Mecedes-Benz M Class|メルセデス・ベンツ Mクラス
進化した3代目
新型Mクラスに試乗
オンロードとオフロード、両方の走行性能に優れるラグジュアリーSUV。これまでもそういった評価だったMクラスがフルモデルチェンジ、3代めに進化した。そんな文武両道の優等生を大谷達也氏が論じる。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by MORIYAMA Toshikazu
批判は過去のものに
メルセデス・ベンツの「Mクラス」がフルモデルチェンジを受けて3代目に生まれ変わった。
「Mクラス」といえば「BMW X5」、「アウディQ7」がライバルのプレミアムSUV。本気で荒れ地を走るために開発されたクロスカントリービークルの「Gクラス」とは、そもそもの成り立ちがことなっていることもあり、オンロードではセダンなみの洗練された身のこなしをしめしてくれるが、オフロードでの能力も決して侮ることはできない。
私は数年前の冬、北海道のテストコースで先代「Mクラス」を試乗したことがあるが、一般のユーザーであれば絶対に足を踏み入れないであろう大きな段差や、きつい横勾配の雪道を、それこそなんの苦労をすることもなく平然と走り抜けた。いくらシティユースに軸足をおいたSUVとはいえ、オフロードでも優れた走破性を備えているのがメルセデス・ベンツ「Mクラス」なのである。
では、3代目になってどこがどうかわったかといえば、正直、エクステリアをぱっと見せられただけで「あ、新型だ!」とおもうのは旧型のオーナーか、すでに新型の購入を決意している方かのどちらかだろう。
それでも子細に見てみれば、ボディのエッジはよりシャープになり、そこはかとなくあたらしさが漂っている。そうした印象は、リアビューに目をむけると一層、明確になる。
ボディサイドのキャラクターライン、そしてよりエッジがはっきりと際立たされたCピラーからつづくリアセクションには、くっきりとしたプレスラインが浮かびあがって、じつにダイナミックかつ軽快な印象を与えるのだ。いずれにしても、ボディパネル全体から醸し出される面精度の高さは隠しようがない。おそらく、プレス成形の面でなんらかのブレイクスルーがあったのだろう。
キャビン内のクォリティ感も明らかに向上している。インテリアデザインがよりモダンになっただけでなく、ひとつひとつのパーツがきっちりと、そして丁寧につくり込まれている。
初代「Mクラス」がデビューした当時は、「いくらメルセデスでも所詮はアメリカ製」と揶揄されたものだが、そうした批評は完全に過去のものとなった。
いまや「Mクラス」も、ほかの国でつくられるメルセデスも、クォリティのレベルに明確な差はないと太鼓判を押すことができる。
Mecedes-Benz M Class|メルセデス・ベンツ Mクラス
進化した3代目
新型Mクラスに試乗 (2)
ガソリンエンジンは完全新設計 ディーゼルモデルには右ハンドルを追加
日本仕様の「Mクラス」はV6 3.5リッター自然吸気ガソリンエンジンを搭載した「ML350 4MATIC BlueEFFICIENCY」、V6 3.0リッター ターボディーゼルエンジン搭載の「ML350 BlueTEC 4MATIC」、V8 5.5リッター ツインターボガソリンエンジンを搭載した「ML63 AMG」の3モデル。
このうち、V6 3.5リッター 自然吸気ガソリンエンジンは、ボア×ストローク、排気量ともに先代と変わらないものの、Vバンク角が90度から60度にあらためられたことからもわかるとおり、完全な新設計となっている。
この結果、最高出力は272psから306ps、最大トルクは350Nmから370Nmへとパフォーマンスを向上させながら、JC08モード燃費は従来モデルを42パーセントも上まわる10.4km/ℓを達成している。
いっぽうのV6 3.0リッター ターボディーゼルエンジンは、圧縮比を落とす最新の技術トレンドを採用して熱効率を大幅に向上。最高出力は47ps増しの258ps、最大トルクにいたっては80Nm増しの620Nmを獲得している。新型からディーゼルに右ハンドルが用意されるようになったこともニュースのひとつだ。
Mecedes-Benz M Class|メルセデス・ベンツ Mクラス
進化した3代目
新型Mクラスに試乗 (3)
もはやディーゼルであると見抜くのは難しい
今回の試乗で特に印象に残ったのが、ディーゼルエンジンを搭載した「ML350 BlueTEC 4MATIC」だった。
車外で聞けばディーゼル特有の金属音が多少意識されるものの、キャビン内のノイズやバイブレーションから、これがディーゼルモデルであることを見極めるのはかなり難しくなってきたようにおもう。
エンジンのフィーリングにしても、軽快かつレスポンスよく回転をあげる様は、ガソリンとくらべても大きな遜色はない。
また、低回転域でドンとトルクが立ちあがるのではなく、どちらかといえばまわしていったほうが力強く感じられることもガソリンエンジンに共通する点。これまでガソリンモデルばかり乗りついできたユーザーにも違和感なく受け入れてもらえそうだ。
いっぽうで、車重が2トンを越すSUVでありながら、12.5km/ℓというJC08モード燃費を達成した点は、ディーゼルモデルならではといえる。しかも燃料タンク容量は93ℓもあるから、その気になれば東京-神戸間を無給油で往復する、なんて芸当だってできてしまう。高速道路を多用するユーザーに、この足の長さはなんといっても魅力的に映ることだろう。
SUVというイメージとはほど遠い洗練された乗り心地も新型「Mクラス」の魅力といえる。コーナリング時のマナーをふくめ、もはや背が高いSUVのデメリットはほとんど気にならない。それでいながらキャビンスペースには余裕があり、荷物もたっぷり積める。
燃費の良さをふくめて、毎日をアクティブに暮らす人々にとってはじつに便利なクルマだ。それでいながら、新型になってガソリン(750万円)もディーゼル(790万円)も価格は引き下げになった(ML63 AMGのみ据え置き)。
しかも、ガソリンモデルは75パーセントのエコカー減税、ディーゼルモデルにいたっては100パーセント免税になるほか、クリーンエネルギー補助金の対象になっている。円高効果も多少はあるのかもしれないものの、スリーポインテッドスターがこれほど身近な存在になるなんて、ひと昔まえだったらにわかには信じられないような“事件”である。
Mercedes-Benz ML350 4MATIC BlueEFFICIENCY |
メルセデス・ベンツ ML350 4マチック ブルーエフィシエンシー
ボディサイズ|全長4,810×全幅1,925×全高1,795 mm (全長4,845mm)
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,655 mm (1,635 / 1,650 mm)
重量|2,120 kg (AMGスポーツパッケージ設定時2,190kg)
エンジン|3,497 cc V型6気筒 直噴DOHC
最高出力| 225 kW(306 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|370 Nm(37.7 kgm)/ 3,500-5,250 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|255/55R18 (255/50R19)
燃費(JC08モード)|10.4 km/ℓ
車両価格|750万円
*カッコ内は+65万円のAMGスポーツパッケージ設定時の数値
Mercedes-Benz ML350 BlueTEC 4MATIC|
メルセデス・ベンツ ML350 ブルーテック 4マチック
ボディサイズ|全長4,810×全幅1,925×全高1,795 mm (全長4,845mm)
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,655 mm (1,635 / 1,650 mm)
重量|2,250 kg(2,320kg)
エンジン|2,986 cc V型6気筒 DOHCターボデイーゼル
最高出力| 190 kW(258 ps)/ 3,600 rpm
最大トルク|620 Nm(63.2 kgm)/ 3,500-5,250 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|255/55R18 / 255/55R18 (255/50R19)
燃費(JC08モード)|10.4 km/ℓ
車両本体価格|790万円
*カッコ内は+65万円のAMGスポーツパッケージ設定時