ゴルフ祭り

フォルクスワーゲンのブースをひと言で表現するなら、ジュネーブショー開幕直前にカーオブ・ザ・イヤー獲得を決めたゴルフ7“祭り”。これに、超低燃費のためにゼロから開発されたスペシャルモデル「XL1」と、「up!」ファミリーのメンバーとしてあらたにくわわった「クロスup!」が会場の雰囲気に華を添えていた。

ゴルフ7祭りの主役をつとめたのは「ゴルフ ヴァリアント」で、今回はそのバリエーションとして省燃費モデルのTDIブルーモーション、4WD版の4モーション、スポーティな装いのRラインもあわせて紹介された。ハッチバック版のゴルフ7同様、新型は軽量化を強力に推し進めており、従来型と比較して最大105kgも身軽になっている。エクステリアデザインでは、ハッチバック版に通ずるシャープな面構成が採用されたほか、ゴルフ7で特徴的なCピラーの直線的なデザインがDピラーに引き継がれている。また、ハッチバックより307mm長いボディは従来型を100リットル上まわる605リットルの荷室容量を実現。後席を倒せば最大1,620リットル（従来型は1,495リットル）まで積載できる。

スポットライトを浴びるヴァリアントの脇を固めたのはパワープラントのバリエーション追加だった。その筆頭は1.6リッター直噴ターボ ディーゼルエンジン搭載のTDIブルーモーションで、ヨーロッパ方式の燃費は実に31km/ℓを上まわる。また、天然ガスとガソリンという2種類の燃料をうけつけるバイフューエルモデルのTGIブルーモーションも29.4km/ℓの低燃費をほこる。

北米で2012年末に発売したゴルフの3ボックス版“ジェッタ”にはハイブリッドモデルが追加され、0-100km/h加速8.6秒のパフォーマンスと24.3km/ℓの低燃費を両立させた。

Volkswagen Golf Variant concept R-Line

Volkswagen XL1

さらにゴルフのハイパフォーマンス バージョンとしてお馴染みのGTIとGTDもデビュー。まず、ガソリン仕様のGTIには標準仕様の220psにくわえて230ps仕様がオプションで用意される。燃費はいずれ仕様でも16.7km/ℓ。いっぽう、ディーゼル仕様のGTDは先代より14psアップした184psを発生しながら燃費は23.8km/ℓをマークする。

XL1といえば、これまでプロトタイプの存在のみ知られていたが、今回発表されたのはその量産型。超軽量で空力特性にも優れたカーボン コンポジット ボディに48psを発生する2気筒TDIエンジン、7段DSG、そしてハイブリッドシステムを組みあわせることで111.1km/ℓ（！）という驚異的な低燃費を実現している。ただし、こちらは量産モデルといっても、ごく限られた台数が生産されるようだ。

クロスup!については多くを語るまでもないだろう。最大出力75psの3気筒1.0リッターエンジンのup!を“クロス ブランド”に仕立てたモデルで、2011年フランクフルトショーで発表されたコンセプトモデルの生産仕様である。発売は2013年夏になる見通しだ。

こうやって見渡してみると、経済危機に苦しむヨーロッパにあって、フォルクスワーゲンが実に堅実な路線を歩もうとしていることがよくわかる。XL1を別にすれば、今回紹介されたモデルはいずれもゴルフもしくはup!がベース。つまり、売れ筋モデルのラインナップを充実させて、大きなリスクを犯すことなく着実に売り上げに結びつけようとする姿勢が明確になっている。しかも、ゴルフに追加されたのはGTIやGTDの定番モデル、もしくは省燃費モデルのどちらかというのも手堅い選択だ。さすがの巨人といえども慎重路線を歩まざるを得ないところに、ヨーロッパ経済危機の根深さが垣間見えるようだ。