Volkswagen XL1 concept|フォルクスワーゲン XL1 コンセプト
CAR / FEATURES
2015年3月12日

Volkswagen XL1 concept|フォルクスワーゲン XL1 コンセプト

Volkswagen XL1 Concept|フォルクスワーゲン XL1 コンセプト

カタールショーで超低燃費コンセプトカーを初公開

フォルクスワーゲンはカタールモーターショーで画期的な低燃費を実現したふたり乗りのコンセプトカー「XL1」を世界初公開した。

文=松尾 大

111.1km/ℓ、CO2排出量24g/km

エコロジー技術において世界の自動車業界をリードしているフォルクスワーゲンが、圧倒的な環境性能を誇る新型コンセプトカーを世界ではじめて公開した場所は、石油の国、カタールで開催されているカタールモーターショーだった。

限りある資源のひとつである石油、地球温暖化や酸性雨の原因であるCO2。気候変動をもっとも意識することが可能な場であるこのショーを選択したことは、決してアイロニーではなく、世界に向けたアナウンスの舞台としてもっとも適切な場所だったといえるだろう。

XL1 は、フォルクスワーゲンによると一連の「1リッターカー戦略」の第3ステージに相当するものだとしている。21世紀の初頭、現在フォルクスワーゲンAGの監査役会会長を務めるDr.フェルディナンド・ピエヒは、フォルクスワーゲン グループの会長であった当時、「日常的に使えて、かつ100km走行あたり1リットルの燃料しか消費しないクルマを、生産モデルとして市場投入する」という構想を打ち出した。これがいわゆる「1リッターカー戦略」だ。

今回フォルクスワーゲンが発表したXL1は、24g/kmという非常に少ないCO2排出量を達成しているコンセプトカー。これだけの数値を得るべく、カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製のモノコックやボディパーツを使用することで超軽量化を実現(重量は未公表)。さらに圧倒的に低い空気抵抗(Cd値 0.186)、や35kW(48ps) を発生する2気筒TDI(直噴ターボディーゼル)エンジン、電気モーター、7速DSGおよびリチウムイオンバッテリーからなるプラグイン ハイブリッド システムもこれだけの環境性能を達成することに寄与している。

Volkswagen XL1 concept|フォルクスワーゲン XL1 コンセプト02

Volkswagen XL1 concept|フォルクスワーゲン XL1 コンセプト05

最長35kmのゼロエミッション走行が可能

注目の燃費は、ピエヒ博士が唱えた100km走行あたり1リットルという目標を上まわり、わずか0.9リットルの燃料消費量を達成した。これは日本の表記方法に照らし合わせば111.1km/ℓという驚異的なもの。また、プラグイン ハイブリッド車であることから、最長 35kmの距離を純粋なEV モードで走行できる。バッテリーは、一般的な家庭用電源からも充電可能で、減速時の回生エネルギーシステムも搭載している。

これだけの高効率を追求しながら、コンフォート性能をおろそかにしないのがフォルクスワーゲンらしいところ。毎日の走行にも使いやすいボディレイアウトを設計し、ふたつのシートは2002年に発表された1リッターカーの最初のプロトタイプや、2009年発表のL1のように前後に配置されるものではなく、一般的な左右配置とし、ウイングドアの採用によって、乗り降りも容易になったという。

ボディの軽量化を実現するうえでかかせない、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)については、製造コストの大胆な削減に成功したこともトピックだ。このことにより、XL1量産化への扉が開かれたとしている。この背景には、フォルクスワーゲンがサプライヤーと協力して、aRTM(アドバンスド レジン トランスファー モールディング)プロセスという名で知られる CFRP生産のあらたな方法を開発し、特許を得たという事実があげられる。

21世紀がはじまったころ、ピエヒ博士の言葉ははるか未来のことのように思えたが、じつはそんな未来はすでに手の届くところまで来ているのである。

           
Photo Gallery