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2021年3月25日
ドイツ勢とはひと味違う日本的ともいえるEV──レクサスUX300eに試乗|LEXUS
LEXUS UX300e|レクサスUX300e
ドイツ勢とはひと味違う日本的ともいえるEV──レクサスUX300eに試乗
パーソナル感の強いコンパクトSUVとして人気を博しているレクサス「UX」のEVとして2020年10月に登場した「UX300e」。レクサス初の市販EVでもある同モデルにモータージャーナリストの小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA Fumio
ドイツ勢のEVとは対照的な走り
レクサス初の市販EVは、UXというコンパクトSUV「レクサスUX300e」として登場。全長4.5メートルに全高1.5メートルという市街地でも扱いやすいサイズに加え、スムーズな走りと、期待以上にスポーティな感覚の操縦性が、“トレンドしてのEV”を超えている。スタイリッシュであり、かつドライブが楽しくなるモデルとして注目だ。
発売は2020年だったUX300e。初年度生産は部品供給のことなどなら135台に限定されており、21年は2月以降の販売分の生産は4月から、普及には少し時間がかかりそうだ。まあ、ピュアEVは買ったあと充電インフラなど、課題もあるので、売ればいいというものでもない。ゆっくり増えていけばいいのだろう。
ご存じのように、昨今はピュアEVが増えている。ネットや新聞やテレビでも、これからはピュアEVの時代、なんていう報道を目にすることも少なくない。ただ、だからといってEVという、単純な選択はありえないだろう。買う価値がなければ意味がない。そこにあって、UX300eは、かなりよく出来ているのだ。
スタイリングは、従来のUXシリーズとほとんど同じ。つまり、やや背が高い一方、リアゲートを寝かせぎみにして、前席を重視したクーペ的な印象を醸し出している。EVでもそこは同じ。いや、運転する楽しさは向上していて、UXシリーズがパーソナル感の強いSUVを狙っているなら、所期のコンセプトにより合致した仕上がりといえる。
なにしろ、大型バッテリーと電気モーターというパワートレインは、従来のガソリンエンジン車と内容がまったく異なる。レクサスのエンジニアは、電気自動車のよさを活かそうと、車体の剛性を上げるとともに、前後の重量配分や、車体の前後両端を軽くするなどして、よりドライバーと車両の一体感を上げるのに尽力したという。
実際に、その成果は出ていると思う。実にスムーズに走るからだ。ピュアEVを体験したことがある人がどれだけいるか分からないものの、アウディ「e-tron」やポルシェ「タイカン」やメルセデス・ベンツ「EQC」がパワー感を強く感じさせるのに対して、UX300eの特徴はナチュラルさと対照的に感じるのだ。
駆動用バッテリーの容量は54.4kWhで決して小さくない。上記のドイツ車ほどではないにしても、日産リーフ(40kWh〜62kWh)と同じぐらい。マツダMX-30 EVモデル(35.5kWh)よりははるかに大きい。この大きさを選択したことについて「そもそもUXは市街地で乗っていただくことがコンセプトで、EVでも街乗りが中心ならという想定をしたため、価格や性能のバランスを考えて決めました」とレクサス広報ではしている。
LEXUS UX300e|レクサスUX300e
EVならではのナチュラルな操縦感覚が魅力
EVに何を期待するかは人それぞれだ。こちらからUX300e推しの理由としてあげられるのは、ガソリン車やハイブリッド車よりも、さらにナチュラルな操縦感覚が得られるところだ。すっと発進して、ぐんぐんと加速する。同時に、カーブを曲がるのも得意で、ドライバーの行きたい方向へ自然にクルマが動いていく。
モーターで前輪を駆動するUX300eでは、エンジンより駆動力を緻密に制御できる。さらに、ステアリングやブレーキの制御をうまく組み合わせて、無理なく走れる気持ちよさが作りこまれている。これをレクサスでは「すっきりしたハンドリング性能」と呼ぶ。別の言葉を使うと、新しい時代の楽チンさといえばいいだろうか。
車内の快適性を上げるのも重要なテーマだったとレクサスの開発者は言う。たしかに高速巡航時の乗り心地も、専門的にはフラットライド。つまり乗員の頭や体がむやみに揺さぶられることはない。かつウィンドシールドを含めてボディ各部の遮音対策は徹底的に行われたとされている。
UX300eではトランクの床面がフラットになったのも、細かいけれど、実際の使い勝手の点では特筆点だと思う。そもそもボディ外寸が抑えめで、トランク容量は大きくとれなかったところにもってきて、燃料タンクやバッテリーなどのためにでこぼこした床面形状だった、UXシリーズ。UX300eはそこもすっきりした。実際の容量は、従来の220リッター程度から、310リッターへと上がっている。
航続距離は、リアルライフと同等の数字が出るWLTCモードで367km。エアコンを使ったり、急加速をしたりすると、伸びが鈍化する。それでも、300kmになんなんとするようで、走行距離が短い人は、週に1回ぐらいの充電でも事足りるのではないかと思う。その場合、ディーラーで、という手もありそうだ。もちろん、バッテリーの寿命を考えれば、時間をかけての普通充電が望ましい。
UX300eは「version C」(580万円)と、「version L」(635万円)で構成されている。ピュアEVには環境省や経産省、それに、自治体から補助金が出る。充電環境が周囲にある人なら、いちど試してみてもいいと思う。ドイツ車のようにことさら“新しいこと”を追究していない、日本的ともいえるEVの現在形がよく分かるクルマだ。
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