フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗|Ford
CAR / IMPRESSION
2015年1月15日

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗|Ford

Ford Kuga|フォード クーガ

かならず(良い意味で)裏切られる

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗

フォードのコンパクトSUV「クーガ」が2代目になった。「フォーカス」とおなじく、最新のキネティックデザインに準じたエクステリアをまとい、“One Ford”のもと世界共通モデルとしての登場だ。フォードのグローバルスタンダードSUVとはどのようなものか。フォーカスでの長期リポートも担当する櫻井健一氏が試乗した。

Text by SAKURAI Kenichi
Photographs by ARAKAWA Masayuki

フォード クーガ≠アメリカンSUV

フォードのコンパクトSUV「クーガ」が、2代目に進化した。おなじフォードの最新デザイン言語である「キネティック デザイン」のもと、正常進化と言えそうなスタイリッシュで仕立ての良いフォルムは、多少大きくなったが、同一のベクトル上にあるように見える。しかし、この両車は、その成り立ちが大きくことなっているのだ。


誤解をおそれずにいえば、初代クーガは、「フォーカス ST」のSUV版だった。もちろん、SUVに仕立てるべく車高を上げ、コンパクトながらSUV然としたアピアランスをもっていた。だが、走りに定評あるシャシーを基本的に流用したパフォーマンスは、「これが本当にSUVと名乗っていいのか?」とおもわせるほどに特化していた。

トルクのある2.5リッターターボエンジン、シャープなハンドリングと一体感あふれるドライビングの楽しさ。クーガでワインディングを走ったあとは、クルマから降り、スタイリングを改めて見直し「このクルマはSUVだった」と気づかせるのだ。そう、良い意味でまったくSUVの走りではない。初代クーガは、最高のハンドリングマシンだったのだ。ちょっとばかり車高は高いが。


たまたま自宅近くにフォードの正規ディーラーがあるせいか、初代クーガとの遭遇率は意外と高く、クルマで出かけると頻繁に目にする。

FORD KUGA | フォード クーガ 12

そしてそのたびにおもう。「ああ、あの時思い切って買えば良かった」と。まさに「スポーツカーとしても楽しめるハンドリングをもつSUVをつくろう」という、欧州フォードの確信犯的策略にはめられたのだ。


しかし、2代目クーガは、まっとうな、スポーティSUVになった。SUVの皮を被った「フォーカス ST」ではない。初代とおなじく欧州で製造されるが、フォードが現在打ち出している「One Ford」戦略のもと、全世界で販売されるために、突き抜けたスポーティさがいささか抑えられたのである。

FORD KUGA | フォード クーガ 16

FORD KUGA | フォード クーガ 23

これには、理由がある。新型クーガは、日本をはじめ、欧州や北米でも販売されるモデルだ。日本ではエスケープと初代クーガの後継モデルとして、ラインナップに位置づけられている。北米では、独自の進化を果たしたエスケープの3代目として販売される。そうつまり、グローバルスタンダード的なサイズやスペック、そしてクオリティが要求されたのである。スポーティSUVと表現したのも、そこが理由だ。


それでもフォードは、クーガの素性をすべて隠し、便利で快適なだけのSUVを作ることはできなかった。プラットフォームは、初代同様、フォーカスとの共有。キャビンを広げ、荷室スペースを拡大しても、フォード=アメリカンブランド=いかにもなアメリカンSUVにはなっていない。クラスや価格帯から判断して、ジープ「パトリオット」や「コンパス」のようなSUVを想像すると、かならず(良い意味で)裏切られる。

Ford Kuga|フォード クーガ

かならず(良い意味で)裏切られる

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗 (2)

1.6リッター エコブーストに不足なし

そうおもうポイントはいくつかあるが、エンジンもそのひとつ。新型クーガが搭載するのは、フォードがエコブーストエンジンと呼ぶ1.6リッターの直列4気筒ターボ。いくらコンパクトとはいえ、たかだか1.6リッターのエンジンで、大丈夫か? しかし心配は無用だ。最高出力は134kW(182ps)、最大トルクは240Nm(24.5kgm)を誇り、リッターあたり114psの実力といえば、このエコブーストエンジンの実力が理解できるだろう。


コンパクトSUVとはいえ、ここだけはまっとうなSUVらしく1,720kg(タイタニアム)の車両重量をもつボディを軽々と加速していく力強さは、言われなければ、とても1.6リッターエンジンのそれとはおもえない。よくできたプログラミングをもつ6段ATとのマッチングも、申し分ない。


クーガのATには、DTCを採用するフォーカス同様、シフトレバーの右横に、マニュアル操作が可能なスイッチが付いている。フォードはこれをセレクトシフトと呼んでいるが、フォーカス同様、ここまで走りを楽しめるのなら、いっそステアリングにギアチェンジ用のパドルスイッチでもつけて欲しいところである。

FORD KUGA | フォード クーガ 27

FORD KUGA | フォード クーガ 40

路面状況が良い場所での通常走行時は、クーガのインテリジェントAWDシステムは100:0のトルク配分。つまりFWDで走行する。アクセル開度が大きくなった加速時や、ワインディングロード上り坂のコーナー立ち上がりでは、明確な後輪トルクを感じる。これはメーターパネルに用意された、インテリジェントAWDのインフォメーションディスプレイからも読み取れる。


インテリジェントAWDには、ほかにロールスタビリティコントロール付きのアドバンストラックや、トルクベクタリング コントロールという、車両を安定方向に導く電子デバイスを導入。アンダーステアやオーバーステアを抑制し、あらゆるシチュエーションでスタビリティを確保させてくれる機構を装備している。


原理はともかく、ユーザーとしては、コーナーでの意図せぬふらつきが減少していることで、装備の有効性をかんじとれる。車高の高いSUVは、一般的な車高の乗用車にくらべ、オーバースピードやステアリングの操作遅れで「おっとと……」となりがちだが、そんなカーブでも、意識することなく安心して走れるので、乗用車からの乗り換えでも、違和感はないはずだ。

Ford Kuga|フォード クーガ

かならず(良い意味で)裏切られる

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗 (3)

ワインディングが楽しいSUV

登りのワインディングロードでも、ガンガン行けるのは、初代モデルと変わらない美点だ。ただし、路面からのインフォメーションの正確さやアジリティでは、初代モデルに勝ちを譲る。新型では、全体が初代モデルよりもコンフォート寄りにチューニングされているので、段差の乗り越えや、不整路面でのいなしが上手い分、正直「まるでフォーカスSTか?」という初代モデルとおなじ感想をもつことはない。


だが、SUVであるはずのクーガで、ワインディングを走り抜けると、ペースもいつの間にかそこそこ上がってしまい、「楽しい」という言葉が自然と浮かんでくる。エスケープのポジションを担う存在とはいえ、やはり走りにかんするポテンシャルは、認めないわけにはいかない。欧州フォードが開発したフォーカス譲りという、氏素性があきらかなのだから仕方がない。

フォーカス譲りと言えるのは、インテリアもおなじだ。シンプルだった初代モデルのインテリアにたいして、2代目はフォーカス同様、モダンで包まれ感のある一見タイトにおもえるデザインに変貌を遂げた。


とくに質感の向上は顕著。インパネはほぼ全面がソフトパッドで覆われていて、「いいものに触れているかんじ」がする。それに、キャビン全体が静かなのもいい。高速でもロードノイズや風切り音は低く、乗用車並みにキャビンは快適性を保っている。

FORD KUGA | フォード クーガ 29

そのなかでも特筆すべきできだと感じたのが、シートだ。本革を使用しながら、ハードなドライビングでも体がずれない表皮素材やデザインを採用。その工夫がじつに見事だった。体のホールドも良く、「予算を使って開発しました」感が如実に表れていた。通常こうしたシートやステアリングホイールといったパーツは、“どこかの何か”と共通ということが当たり前で、とくに良いも悪もあったものではないのだが、クーガそれは、少しばかり設計がハイクオリティだ。

Ford Kuga|フォード クーガ

かならず(良い意味で)裏切られる

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗 (4)

進化したユーティリティ

エクステリアデザインは、初代につづきひと目でクーガとわかる特徴的なスタイリングを採用。フォードのキネティックデザインがさらに進化した、という印象だ。ボンネットに配された2本の力強い膨らみは初代からのモチーフで、クーガの特徴的にもなっている。フロントフェイスに使用されている台形モチーフも同様である。デザインの好き嫌いには個人差があるのでおおくを言わないが、進化は理解するものの、どちらかといえば、初代の塊感の強いマッシブなかんじが好みだった──のは、ここだけの話である。


ボディ全長が95mm伸びたおかげで、そのぶんリアシートの居住性と、ラゲッジスペースが拡大された。ラゲッジルームは、従来よりも10パーセント以上容量アップを果たした406リットルを確保している。初代モデルは360リットルの容量しか確保できていなかったため、フォードの隠れたベストセラーモデル、「エスケープ」からの乗り換えが、おもったほどうまくいかなったという話も聞こえていた。2代目ではそうしたネガを確実に潰している。

FORD KUGA | フォード クーガ 49

FORD KUGA | フォード クーガ 47

さらに、上級グレードのタイタニアムには、フォーカス同様30km/h未満で衝突回避をおこなう「アクティブ シティ ストップ」と呼ぶ自動ブレーキを搭載。自車の横や斜め後ろに他車がいることを知らせるBLIS(ブラインドスポット インフォメーション システム)も装備した。


また、実用的な装備として、このクラスで初めて「ハンズフリー パワーリフトゲート」を上級グレードのタイタニアムに採用したのもニュースであろう。これは、スマートキーを携帯していれば、リアバンパー中央下部に足を入れる動作(つまりキック)によってリアゲートの開け閉めが可能になるというもの。最新のTVゲームでも使用されているモーションテクノロジーを応用したこの技術は、両手に荷物を持っている──というよくありがちなシチュエーションで大活躍しそうだ。


アクティブ シティ ストップとハンズフリー パワーリフトゲートは、走りやでデザインといったクーガの根幹をなす魅力にくわえ、コンパクトSUVを考えているユーザの心を購入に踏み出させる、飛び道具的な存在になるかもしれない。

Ford Kuga|フォード クーガ

かならず(良い意味で)裏切られる

フォードのあたらしいコンパクトSUV、クーガに試乗 (5)

走りの楽しさも世界レベル

ただし、実用性とコストパフォーマンス、そしてデザインや走りといった魅力を競い合う、いまもっとも熱いマーケットといってもいいコンパクトSUVというカテゴリーは、世界的な激戦区。国産車はもちろんのこと、BMWの「X1」やフォルクスワーゲンの「ティグアン」、そしてアウディQ3」にくわえ、メルセデスの「GLA クラス」やポルシェの「マカン」など、ドイツのラグジュアリーブランドにもライバルはおおい。あのレクサスさえも「RX」の弟分となる「NX」で、このカテゴリーへの参入が時間の問題といわれている。もちろん、アメリカには、ジープがいる。

フォードは、「Quality(クオリティ)」「Green(グリーン)」「Smart(スマート)」「Safety(セーフティ)」という4本柱を世界レベルに引き上げる取り組みもまた「One Ford」戦略のひとつだとしているが、それらにくわえ、そろそろ「Performance(性能)」、とくに走りの楽しさも世界レベルだということに(もっと、またはさらに)自信をもってはどうか。


アメリカのブランドが、走りの楽しさをいう? もしもそう疑うのなら、一度最新のマスタング(クーペの方)に乗って欲しい。

FORD KUGA | フォード クーガ 34

きっと「これがいまどきのアメリカのスポーツカーか」と舌を巻くはずだから。ただし、マスタングは左ハンドルのみ。エクスプローラーもおなじく左ハンドルのみだ。どちらもクルマは申しぶんないが、市場に合わせたベストな仕様ではない。「One Ford」戦略は、まだまだ遠いゴールを目指しているのかも知れない。

Spec|スペック

Ford Kuga Titanium|フォード クーガ タイタニアム

ボディサイズ|全長4,540×全幅1,840×全高1,705 mm

ホイールベース|2,690 mm

重量|(タイタニウム)1,720 kg

エンジン|1.6リッター 直列4気筒 DOHCターボ

最高出力| 134kW(182ps)/ 5,700 rpm

最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,600-5,000 rpm

トランスミッション|6段オートマチック

駆動方式|4WD

サスペンション 前|インディペンデント マクファーソンストラット

サスペンション 後|コントロールブレードマルチリンク式

タイヤ 前/後|225/45R18 / 225/40R18

ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク

燃費(JC08モード)|9.5 km/ℓ

トランク容量(VDA値)|406-1,603 リットル

価格|385万円

フォードお客様相談室

 0120-125-175(夏季、年末年始、祝祭日をのぞく月-金 9:00-17:00)

           
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